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第1部 本

科学

古代世界の超技術〈改訂新版〉(志村史夫)

『古代世界の超技術〈改訂新版〉 あっと驚く「巨石文明」の智慧 (ブルーバックス)』2023/12/14
志村 史夫 (著)


(感想)
 平均2.5トンの石を200万個も積み上げたギザの巨大ピラミッドはなぜ、自重で崩壊しないのか? 精密な「宇宙カレンダー」として機能したストーンヘンジに遺された、謎めいた56個の穴の秘密とは? ……エジプト、イギリス、ギリシャ・ローマから中南米、アジアまで、現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者が、世界各地の古代人たちの「驚異の技」の謎を解きあかしている本で、内容は次の通りです。
第1章 ピラミッド──「強度」と「形」の謎を解く
第2章 ストーンヘンジ──古代巨石文明の比類なき最高傑作
第3章 古代ギリシャ・ローマ──現代建築をしのぐ「超」耐久力コンクリートの驚異
第4章 メソアメリカ・アンデス文明──精緻な石組みはどう組まれたか
第5章 古代アジア──現代文明に直結する「金属文明」の誕生
   *
「巨大ピラミッドはなぜ、自重で崩壊しないのか?」というと……ピラミッドに使われている花崗岩は、一平方センチメートルあたり一トンの荷重なら十分に耐えられるから、だそうです。本書ではエジプトや南米のピラミッド石組みについて、日本の石職人に意見を聞いていて、それがとても参考になりました。
 そして「ストーンヘンジの謎めいた56個の穴の秘密」については、天文学者のホーキンズさんが、その謎を解明しています。
「ホーキンズは、ストーンヘンジから見た真冬と真夏の満月の位置を紀元前二〇〇〇年から紀元前一〇〇〇年までの一〇〇〇年間にわたり、得意のコンピュータを使って求めた。
 得られた結論は、ストーンヘンジとヒール・ストーンを結んだ軸上に冬の満月が現れるのは「メトン周期」の一九年ごとという連続した周期にはならず、一九年が二回と一八年が一回を平均した周期になることだった。長期間にわたって正確さを保つ最も短い周期は<一九年+一九年+一八年>、すなわち合計五六年である!(中略)」
「ホーキンズは、ストーンヘンジと中心を同じくする直径約九〇メートルに円周上に等間隔で並ぶ五六個のオーブレー穴が、月食や日食を見事に予知する「コンピュータ」として使われたことを、現代のコンピュータから得た詳細なデータをもって示した。簡単に要点をいえば、円周上のオーブレー穴に置く石の位置を一年に一つずつ移動させると、季節ごとに月の極限の位置のすべて、すなわち冬至、夏至、春分、秋分における日食や月食が予知できるのである。それらは五六年周期で繰り返される!」
 ……まさに「古代ブリトン人にとって、ストーンヘンジは巨大かつ壮大な天文・宇宙カレンダーの役割を果たした」んですね!
 ここではストーンヘンジの巨石の建造の方法が、イラストで分かりやすく紹介されていて、それも興味津々でした☆
また「第4章 メソアメリカ・アンデス文明」では、「ゼロの発見」は古代インドではなく、すでに古代マヤで行われていたことが書いてありました。
「(前略)古代インド人による“ゼロの発見”に遡ること一〇〇〇年も前に、古代マヤ人が「何も数字が入らないことを表すための記号」としてゼロの文字を発明していたのである。これが人類史上最初のゼロの文字である。
 しかし、古代マヤ人は、ブラーマグプタが「いかなる数に零を乗じても結果はつねに零である」、また「いかなる数に零を加減してもその数の値に変化がおこらない」(中略)と定義したような“数字”としては扱っていなかった。そのため、「数学史」においては“ゼロの発見”とは認められていないのである。」
 ……なるほど……。「ゼロの発見」自体はごく普通のことだと思うので、このように「ゼロが数学的に重要な意味を持つようになった」のがずっと後だったというほうが、自然な経緯のように思います。
 この章では、古代マヤ人が「数」に優れた能力を持っていたことが、とても印象的でした。古代の絵文書「ドレスデン・コデックス」の金星の記述から、彼らには素因数分解もできた可能性があるそうです。
 この他にも「現代建築をしのぐローマの「超」耐久力コンクリート」の秘密は、混和剤として使われた火山灰(ヴェスビオ山周辺で産出)のポッツォラーナによるものだった、などの古代の超技術について、たくさん読むことが出来ました。
 現在でも当時の完全な姿のまま残っているローマのパンテオン(無筋コンクリートで建築された世界最大のドーム)などを見ても、古代ローマの凄まじい建築技術に圧倒されますが、それはローマン・セメントの力でもあったんですね。
「ローマン・セメントの特長は現代のポルトランドセメントと異なり、石灰石あるいは大理石を焼成、水和して得た消石灰を主成分に用いたことである。消石灰は生石灰と違って、「水硬性(水によって硬化する性質)をもった物質であるうえに、注水後も十分な流動性を保持するという、建築にきわめて適した性質を有している。さらに、(中略)混和剤とのポゾラン反応によって、コンクリートの耐久性と水密性を高めることになる。」
 ……ところが、こんなにも素晴らしいローマン・コンクリートは、西ローマ帝国滅亡後、忽然と姿を消してしまったそうです。大規模なコンクリート建造には、技術者、職人、労働者などから成る組織が必要ですが、それらの組織や統率力が、ローマ帝国の滅亡とともに消滅してしまったから……。うーん、考えさせられますね……。
 いろいろな『古代世界の超技術』を具体的に詳しく紹介してくれる興味津々な内容満載の本でした。とても面白かったので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 この本には姉妹編の『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』もあります。
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