ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
健康&エクササイズ
寿命ハック(ブレンボー)
『寿命ハック (新潮新書)』2022/12/19
ニクラス・ブレンボー (著), 野中 香方子 (翻訳)
(感想)
自然界には400年近く生きるサメや、根系が1万4000年以上生き続ける樹木、果ては若返るクラゲまでいます。永年の夢だった「不老不死」は今、いったいどこまで実現可能になっているのか……研究の最先端と未来を分かりやすく解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
プロローグ――若返りの泉
Ⅰ 自然の驚異
第1章 長寿の記録
第2章 太陽とヤシの木と長寿
第3章 過大評価される遺伝子
第4章 不老不死の弱点
Ⅱ 科学者の発見
第5章 あなたを殺さないものは……
第6章 サイズは重要か?
第7章 イースター島の秘密
第8章 すべてを結びつけるもの
第9章 高校で教わる生物学の誤り
第10章 不死への冒険
第11章 ゾンビ細胞とその退治法
第12章 生物時計のねじを巻く
第13章 血液の驚異
第14章 微生物との闘い
第15章 見えるところに隠れる
第16章 長生きするためのデンタルフロス
第17章 免疫の若返り
Ⅲ 役立つアドバイス
第18章 楽しく飢える
第19章 歴史ある習慣を見直す
第20章 カーゴカルトの栄養学
第21章 思索の糧 フード・オブ・ソート
第22章 中世の修道士から現代科学へ
第23章 測定できるものは管理できる
第24章 物質より心
*
「第1章 長寿の記録」では、自然界には、次のように寿命を延ばす巧妙なテクニックを進化させた生物がいることに驚かされました。
1)ストレスにさらされると種子のような休眠状態(芽胞)になるバクテリア。
2)成体の前の状態(ポリプ)に戻るクラゲ(何度でも若返る)
3)不老不死のプラナリアとヒドラ
……なんとプラナリアは「食料が足りなくなると自分を食べる」そうです。重要でない部分から食べ始めて最後は神経系だけになり、好転の兆しがあると体を再構築するのだとか……凄い! 半分に切ると2匹の生きたプラナリアになるだけじゃなかったんですね。
これらの話もとても面白かったのですが、とても印象に残ったのが「第5章 あなたを殺さないものは……」の「ホルミシス」効果。これは「逆境が生物を強くする現象」で、少量のヒ素などの毒物や運動は、この「ホルミシス」効果を発揮するのです。
例えば運動をするとフリーラジカルが多く生成されますが、それらの負荷が「あなたはもっと強くなる必要がある」というメッセージとして働き、生物を強くします。
ただしホルミシスは量が肝心で、風が強すぎれば木を倒してしまうように、多すぎる毒物や運動しすぎは体を壊すので、注意が必要だそうです。次のようにも書いてありました。
「長寿の秘訣は、困難を経験せずに生きることではなく、困難に耐えられることにあるようだ。」
……確かにそうですね!
またこのホルミシスには、「オートファジー(細胞のゴミ収集車)」が重要な役割を果たしているようです。「第8章 すべてを結びつけるもの」には、次のように書いてありました。
「(前略)フリーラジカルが次第にわたしたちを強くするのは、わたしたちの細胞が自らの修復し、強くするからなのだ。そのホルミシスの第一段階では、オートファジーが起きて、損傷を受けた分子を収集・廃棄する。つまり、オートファジーはホルミシスの重要な要素なのだ。細胞のゴミ収集システムが適切に機能しなければ、ホルミシスは実験動物の寿命を延伸しなくなる。」
この他にも、「歯周病はアルツハイマー病や老化と関係があるらしい」ので、口内環境を清潔に(良好に)保つことや、カロリー制限が寿命を延ばすのに役立つこと、食物繊維が健康に良いことなど、一般的に「健康に良い」と勧められていることは、やっぱり長寿にも役に立つことが示されていました。
ちなみに運動については、
「(前略)運動は寿命延伸効果のあるさまざまな適応(形態や生理的性質の変化)を促進することが明らかになった。ミトコンドリアの増加と機能の向上、インスリン感受性の改善、オートファジーの増加、免疫系の機能の増進といった適応である。」
「長生きするには有酸素運動が最も重要だが、ウエイトリフティングを加えるとさらに効果的だということだ。」
……ということなので、私も、すでに続けているエクササイズに、ウエイトリフティングを追加しようかなーと考えています。
さらに「第24章 物質より心」には、プラセボ手術で変形性膝関節症での痛みが軽減した例や、プラセボ薬で過敏性腸症候群の患者の症状が改善した例が紹介されていて、「プラセボ効果は心が体をコントロールしていることを示している。」そうです。
そして「長寿に関するフィールド調査で常に明らかになるのは、長寿の人々は意義と目的について意識が高く、いくつになっても熱心に社会参加しているということだ。」とも書いてありました。……長寿には、「心」も大事な役割を果たしているようです。
この他にも「テロメラーゼを作る遺伝子」や、「ゾンビ細胞を標的にする薬(老化細胞除去薬)」、「山中因子と多能性幹細胞で細胞をリプログラミングする」など、さまざまな長寿研究が進んでいることが紹介されていました。
「幹細胞研究は将来、細胞リプログラミング、臓器移植、幹細胞注射など、さまざまな分野で老化に対抗する治療法を数多くもたらしてくれるだろう。」だそうです。期待しています!
また「第13章 血液の驚異」によると、マウスの研究では、若い血を加えることよりも、古い血を抜くことのほうが若返りに効果があったそうで、「継続的に献血する人は、献血しない人々より長生きする」という研究結果もあるようです。献血は社会に貢献できるだけでなく、自分自身の若返りにも効果があるのかもしれません。ちょっと驚きでした。
『寿命ハック』……アンチエイジング研究の最前線の紹介と、それに基づく実践的アドバイスをしてもらえる本で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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