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第1部 本
科学
虫歯から地球温暖化、新型コロナ感染拡大まで それ全部「pH」のせい(齋藤勝裕)
『虫歯から地球温暖化、新型コロナ感染拡大まで それ全部「pH」のせい (青春新書インテリジェンス PI 678)』2023/9/4
齋藤勝裕 (著)
(感想)
牛乳は「pH」が、ある値よりも小さくなると、牛乳に含まれるタンパク質の主成分が固まってヨーグルトになります。弱酸性に保たれているヒトの腸内の「pH」が変化すると、風邪をひきやすくなったり、新型コロナウイルスにも感染しやすくなったりします……私たちの生活や健康のことなど、身近なモノやコトを中心にpHとの関係をわかりやすく解説してくれる本です。
「pH」というと、ついリトマス試験紙を思い浮かべてしまいますが、実は私たちの健康にも環境問題にも、「pH」が深く関わっていることを、本書でじっくり学ぶことができました。
とても驚いてしまったのが、「第2章 味の違いが生まれるのも「pH」のせい」に、あの酸っぱいレモンが、実はアルカリ性食品だと書いてあったこと!
「梅干しやレモンはあれだけ酸っぱいのだから、当然酸性食品だろうと思うと、なんとアルカリ性食品だといいます。それでは酸性食品とは、梅干しやレモンより酸っぱい食品なのでしょうか。実際には、少しも酸っぱくないご飯や肉、魚がなんと酸性食品だといいます。(中略)
私たちが食事をすると、食べたものは胃や腸で消化され、吸収されて細胞で代謝されます。代謝とは、栄養素が酵素の働きを受けて酸化、分解され、二酸化炭素や水のような最終酸化物とエネルギーになる反応のこと。(中略)
この酸化作用の結果、生じた二酸化炭素や水以外の最終酸化物は体内に残り、体内の機能を活発化したり阻害したりして調節することになります。
酸性食品とは、この最終酸化物として酸性の物質(酸性酸化物)を生じるものなのです。
反対に、アルカリ性食品とはアルカリ性の最終酸化物(アルカリ性酸化物)を生じるものということになります。
したがって、その食品が食べる前に酸性だったか、アルカリ性だったかは関係がありません。」
なるほど……体内で最終的に酸性になるかアルカリ性になるかで決まっているんですね。でも、なぜレモンがアルカリ性に?とまだ疑問が残っていたら、「実は金属元素の酸化物はアルカリ性酸化物であり、非金属元素の酸化物は酸性酸化物なのです。」というのがその理由のようです。
「緑黄色野菜などミネラルたっぷりの野菜はアルカリ性食品、ミネラルを含まない穀物や肉、魚は酸性食品ということになるのです。さらにいえば、植物性食品はアルカリ性食品であり、それ以外は酸性食品になります。(中略)
ちなみに、酸性食品を食べると体が酸性になり、アルカリ性食品を食べると体がアルカリ性になるのではないかと思う人もいるかもしれませんが、私たちの体を流れる血液や体液は「緩衝液」とも呼ばれ、特別な組成でできています。(中略)私たちの血液のpHは、特定の食品をちょっとやそっと食べたくらいでは変化することはなく、中性の領域を厳密に保つようになっています。」
……そうか食品内の「ミネラル(金属)」が関係していたんですね。野菜を食べると健康に良いと言われているのは、食物繊維だけでなく、ミネラルも豊富だからなんだ……。
この本では他にも、髪のキューティクルはアルカリ性になると開き酸性になると閉じるので、髪の中心まで染める染毛剤は一時的に髪をアルカリ性にしているとか、食事をすると口内が酸性になるとか、植物が土を酸性化させるとか、身近なものの「pH」について様々なことを知ることができました。
ウイルスに対して私たちの免疫が機能し、健康を保つためには、腸内環境が健康な状態(弱酸性)に保たれていることが重要だそうです。そして腸内環境を弱酸性に保つには、常在の善玉菌(乳酸菌、酪酸菌、酢酸菌など)に有機酸を作ってもらうことが大切なのだとか……バランスの良い食事や発酵食品をとることで、体内の「pH」を健康に保ちたいものです。
そして「pH」は地球環境にも関わっています。
「(前略)地球環境と人獣共通感染症の脅威拡大との関連が指摘されています。温暖化による気候変動や酸性雨の影響により、ウイルスの宿主の生息環境が攪乱したり生息数が拡大したりして、人間と接触や感染経路が増えているからです。」
『虫歯から地球温暖化、新型コロナ感染拡大まで それ全部「pH」のせい』……「pH」が私たちの身近なモノ・コトをはじめ、ありとあらゆるものに関係していることを教えてくれる本でした。とても参考になるので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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