ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
生物・進化
地球生命 無脊椎の興亡史(土屋健)
『地球生命 無脊椎の興亡史 (生物ミステリープロ)』2023/7/24
土屋 健 (著), 田中 源吾 (監修), 栗原 憲一 (監修), 椎野 勇太 (監修), & 3 その他
(感想)
無脊椎動物が繰り広げる生命史を、豊富な化石のカラー写真やイラストで紹介してくれる本で、『水際の興亡史』に続く「興亡史」シリーズの第二弾です。
地球生命史を紐解くと、そのスタートは「無脊椎動物」。サカナという脊椎動物が台頭するまでは、無脊椎動物が地球生命の主役だったそうです。この本は、そんな無脊椎動物たちの興亡にスポットを当てていて、次のような生物の化石が多数紹介されています。
・謎多きエディアカラ生物群
・アノマロカリスに代表されるラディオドンタ類
・ラディオドンタ類から覇者を引き継いだウミサソリ類
・隆盛を誇った三葉虫類、そしてアンモナイト類
・現在まで脈々と命をつなぎ続ける腕足類、二枚貝類
・古生代から着実な歩みを続ける昆虫類
*
さて、「第1章 楽園の住人」によると……
「46億年におよぶ地球の歴史において、生命がはじめて登場した正確な時期は、不明である。
約39億5000万年前につくられた岩石からは、生命活動の結果とされる炭素が発見されている。
それは、あくまでも「炭素」だ。生命が存在した直接の証拠である「化石」ではない。しかし間接的に生命が存在していたことを示す状況証拠といえる。(中略)
生命史を振り返れば、生命は誕生当初からずっと小さくてシンプルだった。
しかし、エディアカラ紀に入って、世界は一変する。全長数十cm級の“大型生物”が出現したのだ。その化石を見ると、肉眼でも細部の構造を確認することができる。彼らはまとめて「エディアカラ生物群」と呼ばれている。」
……このエディアカラ生物群は、ほとんどの種が武器も防具も装備していない(ように見える)そうです。トゲや硬い組織がないどころか、目や鼻、肛門のような構造もないようなのだとか……どうやらエディアカラは平和な時代だったようです。
エディアカラ生物群には不思議な形のものが多いようですが、なかでも目を引いたのが、「トリブラキディウム」。直径最大5cm、饅頭のような形で、表面に「体の中心から外周に向かって3本の枝が弧を描きながら伸びている」のです。この3本枝の「卍」のような形……見た感じでは、渦を巻きながら流れる水の力でゴミを集める「アイデア排水口キャップ」みたいなのです。そして実際に、研究者たちによると、この3本枝は「どの方向から水が流れてきた場合でも、その水の速度を減速させつつ、「枝の付け根」にあたる表面中央に水流を集める役割があった」そうです。そしてその「枝の付け根」には小さな穴が開いていて……動かずに餌にありつけるという凄い構造をしていたのだとか! ……うーん、エディアカラ生物群……ただ者じゃないな……(笑)。
でもこんな平和な時代は長く続かず、約5億3900万年前には、新たな段階「弱肉強食の時代」が始まるのでした(カンブリア紀)。この時代の覇者はラディオドンタ類、現在では絶滅しているようですが、近年の研究によると、彼らは節足動物(カブトムシなどの昆虫類、カニやエビなどの甲殻類)へと繋がる途中の生物だったようです。確かに……化石や想像図のイラストを見ると、カブトムシやエビにちょっと似ているような……。
こんな感じで、もの凄く古い時代の貴重な化石の写真を、解説とともに、じっくり、たくさん見ることが出来ます。
レイピア付きのうちわが尾の先についているウミサソリとか、大量絶滅事件を三回も乗り越えたオウムガイ類(現生のものも、います)とか、普通の巻き方のアンモナイトや妙な巻き方のアンモナイトとか、いろんな種類の三葉虫や「一列縦隊で発見された三葉虫」とか、昆虫(糞石や琥珀の中から見つかったもの)とか……貴重な化石や想像図がいっぱい☆
また「複眼におけるレンズの個数は、デジタルカメラの解像度に相当する。数が多ければ多いほど“高性能”であり、高速移動する物体を捉えやすい」とか、「デボン紀に顎を持った魚が大いに増えて、海底付近を縄張りにしていたことから、水中を上下方向に動き回るものが捕食者・非捕食者ともに増加した(デボン紀ネクトン革命)」とか、「すべての三葉虫は、脱皮によって成長したと考えられている」とか、「二枚貝の殻には年輪が残されているものがあり、その年輪に取り込まれた“海洋の成分”から、そのときの環境情報が分かることがある」とか、興味深い情報もたくさん知ることが出来ました。
『無脊椎の興亡史』、あまりにも遠い過去の生物たちなので、解説は「推定」が多いようでしたが……とにかく化石の写真や想像図を豊富に使って、最新の研究で分かったことなどを紹介してくれるので、とても読み(眺め)応えがありました。化石や古代の生物が好きな方にとっては、お宝になるような本だと思います。ぜひ読んで(眺めて)みてください。
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