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第1部 本
社会
教養としての生成AI(清水亮)
『教養としての生成AI (幻冬舎新書 697)』2023/7/26
清水 亮 (著)
(感想)
最新のAI研究からその歴史、仕事への活かし方、AI時代に人間が鍛えるべき能力まで、人工知能研究の第一人者の清水さんが解説してくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 「AIの民主化」が始まった ――生成AIブームの正体
第2章 ChatGPTを使いこなす ――言葉を紡ぐAI、大規模言語モデルとは何か
第3章 ディープラーニングの誕生 ――よくわかるAI史
第4章 コンテンツを創造するAI ――Stable Diffusionから映画制作の現場まで
第5章 知っておくべきAIリスク ――著作権、個人情報、フェイクニュース
第6章 AIネイティブ時代を生き抜く ――これからの人間に必要な能力とは
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「はじめに」の冒頭から驚かされてしまいました。
「21世紀、人類はテクノロジーとともに飛躍的な進歩を遂げてきました。そして、その中心に位置するのが、人工知能(AI)です。」から始まる長文は、なんと「完全にAIによる文章」だったのです。
……えええ! 全然、気がつきませんでした……凄いです……。
そして「第1章 「AIの民主化」が始まった」によると、
「(生成系AIの)最大の特徴は、クリエイティブなデータ、つまり創造的なデータの生成に用いることができる点です。想定されるユーザーは作家、芸術家、音楽家、映画監督、デザイナーなどで、クリエイティブな分野において創造性を高めるための強力なツールとして注目されています。」
……ということですが、本書の冒頭の文が示しているように、かなりの実力があると認めざるをえません。
この本は、生成系AIに何ができるか、生成系AIをどのように使いこなすかについて具体的に教えてくれます。次のように書いてありました。
「(前略)本書は生成系AIにまつわるいろいろを扱った本です。「生成系AIって何?」という人に向けて、生成系AIの登場に至るまでの簡単な歴史的背景を一通り紹介したあと、実際の活用法や未来の展望まで、多岐にわたって解説します。」
そして「第2章 ChatGPTを使いこなす」では、その活用法として、1)要約させる、2)企画を100本考えさせる、3)難解な英語論文も翻訳・要約させる、4)外国語の文章に日本語で質問する、5)物語やシナリオを執筆させる、6)ゴーストライターになってもらう、などがあることとともに、その具体的な事例が紹介されていました。
例えば「企画を100本考えさせる」では、実際にChatGPTにプロンプトを与えた例が紹介されています。プロンプトの与え方を工夫すると、答えがどんなふうに変わるか(改善させられるか)がよく分かって、とても参考になりました。
そして、次のような大事な注意も書いてありました。
「大規模言語モデルを使いこなすために一番重要なことは、たとえ会話型インターフェースであっても、決して相手を「知性のある存在」だと考えないことです。」
……この本の事例を見ると、どうしても「知性のある存在」のようにしか思えませんが、実際には「それっぽい受け答えを統計的・確率的に選んでいる」だけなんですよね……だから、どんなに正しそうに見える答えでも、すぐに信頼してはいけないのです。その文章のすべてについて「真実かどうか」を確かめる必要があります。それを忘れると、痛い目にあう可能性が大いにあるのですから。
また、「第5章 知っておくべきAIリスク」にあるように、著作権、個人情報、フェイクニュースなどのリスクがあることも、忘れてはいけないと思います。
さて、最終章の「第6章 AIネイティブ時代を生き抜く」には、政府の次のような取り組みが紹介されていました。
「政府のAI戦略では、2025年までに全ての高校生と全学部全学科の大学生・短大生・専門学校生に対して、AIに関する知識と技能の習得の必修化が謳われています。これは先進国の中でも非常に野心的な取り組みです。社会人も例外ではなく、AIに関する知識を習得することがどのような場面でも求められることになります。」
……これはとても良い取り組みで、大いに期待したいと思います。
AIにはさまざまなリスクもありますが、それ以上に便利なものだと思います。本書でも、「AIが人間よりもいい計画を立てる」ことが次のように紹介されていました。
「「未来のこの場面」と、そこでどう行動したか、その結果環境はどう変化したか、というシミュレーションを繰り返していき、最終的に計画が成功するか失敗するかという未来を見てきたとします。
それを逆算すると、唯一の正しい道、つまり最も確からしい計画が得られるのです。まさに「計画が生成される」わけです。」
「人間が立てると2週間かかる計画をAIはわずか1時間で作成できるため、実際に工事現場などで使われ始めています。」
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またAIは、次のような方法でも、私たちの思考を助けてくれます。
「AIは、問題解決と批判的思考に必要な情報を提供するだけでなく、膨大なデータセットを分析し、それに基づいて最適な解決策を提案します。」
……AIがあまりに有能なので、かなり心配になってしまいます。本書にも次のように書いてありました。
「こうしたAIの一連の性質は便利な一方で、私たちの思考に与える影響についても懸念があります。AIが人間の知的活動を代替することによって、人間の脳の一部の機能が退化するリスクがあるでしょう。また、AIに依存することで、私たちの自己決定能力が低下し、自己責任の意識が失われることも考えなくてはならないかもしれません。」
……まったく、その通りですね! 自動車などの機械の進歩で私たちの身体能力が衰えているように、AIの進歩で私たちの脳力も衰えてしまうかも……。
それでも本書の言うように……
「(前略)社会はこれからAIが急速に生活に溶け込む時代を経験するはずです。」
……であることは確実だと思います。清水さんは、次のようなことを提案していました。
「人間がAIに勝る要素があるとすれば、クリエイティビティとホスピタリティ、この2点に尽きるのだから、教育制度のありかたも積極的に見直していくべきでしょう。」
そして私たち個人には……
「(前略)とにかく、今すぐAIとプログラミングを始めることをお勧めします。」
……というアドバイスがありました。
ChatGPTの活用法からAI研究の未来まで解説してくれる『教養としての生成AI』、とても参考になる情報が満載です☆ みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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