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第1部 本

生物・進化

ナマコは平気!目・耳・脳がなくてもね!(一橋和義)

『ナマコは平気!目・耳・脳がなくてもね! ―5億年の生命力』2023/8/4
一橋和義 (著)


(感想)
 海の底でひっそりと生きている謎多きナマコを「ユーモラスな物語+解説」のかたちで徹底解剖してくれる本です。冒頭にはナマコを写真で見ることもできるカラー口絵8ページもあります。
 ナマコは、ウニ、ヒトデ、ウミユリなどの仲間の「棘皮動物(きょくひどうぶつ)」で、だいたい5億年前からいるそうです。
食べたことがあるような、ないような……という、あまり馴染みのない生き物でしたが、『ナマコは平気!目・耳・脳がなくてもね!』という本書のタイトルに、まずびっくりさせられました。そして実際に読んでみたら、ナマコって……常識外れに、とんでもない生き物でした(笑)。なにしろ……
・「ナマコには目も耳も心臓も脳もありませんが、海の底でひっそりと、りっぱに生きています。」
・「ナマコには雄と雌がいて(性転換する種もある)、精子と卵子の受精から始まる「有性生殖」と、自分で体を切り離して行う「無性生殖」により増えます。」
・「ナマコは物理的な刺激を与えたり、水質など環境が悪くなったりしてストレスがかかると内臓をお尻から放出することがしばしば見られます。これを吐臓と言います。食道のところから自分で内臓を切り離します。」
 ……なんていう生き物なんですよ! 内臓を吐き出しちゃうなんて……それで生きていけるなんて信じられない! でも、なくなった内臓は1、2カ月で再生するのだとか(その間は、体を少しずつ溶かして栄養にするそうです)。
 本書の「おわりに」に、このとんでもない生き物の総括のようなものが書いてあったので、以下に紹介します。ナマコは「自動お掃除ロボット(ルンバ)」に似ているそうです。
「ナマコは脳がなく、頭とお尻のふたつに切って内臓がなくなっても、しばらくすると傷口を閉じて頭とお尻は別々に歩きはじめるので、中枢制御で動いていないようです。おそらく体の末梢にある個々の感覚が反射的に運動に結びつく単純なシステムが集合し、それをローカルで協調させるシステムと組み合させることで、全体としての歩行機能を可能にしていと推察されます。お掃除ロボットとナマコは、じつはとても似ているシステムで動いているのかもしれません。
 ナマコは海底をゆっくり這いまわりながら、泥や砂をひたすら触手で口の中に入れて海底の(ゴミのような)有機物を消化し、きれいなフンをして海底を掃除しています。ナマコはルンバと同じ仕事をしているのです。」
 ……ストレスで内臓を吐き出すのも驚きですが、ふたつに切っても再生できるなんて……とにかく常識外れの生き物のようです。
食生活的には、なんとなく陸のミミズに似ているような気がします。ミミズは「土」を作っている、とてもありがたい生き物だそうですが、ナマコも海底の泥を作っているのでしょうか? そのあたりのことは、残念ながら、よく分かりませんでした。
 こんなふうに海底で、のんびり生きているナマコなのに、魚には、あまり食べられないようです。実はナマコには、魚にとって猛毒のサポニンがあるのだとか。
でも人間はこれを薬(全身強壮剤、水虫の薬など)として使っているそうです。しかも人間にはサポニンはあまり強くないそうで、人間はナマコを生でも干物でも食べています。日本にはかつて、たくさんのナマコがいたようですが、2010年頃にはかなり減り始めていることを、一橋さんは心配していました。
『ナマコは平気!目・耳・脳がなくてもね!』。海の中の不思議な生物、ナマコの生態について、ユーモアたっぷりに教えてくれる本でした。ところどころに、不思議なナマコの歌(?)も散りばめられていて、漫才やコントを見ているような面白さ☆ 気楽な気分で読み進めていくうちに、ナマコの不思議さの虜になってしまう……ステキな本です(笑)。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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