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第1部 本

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画像センシングのしくみと開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書(輿水大和)

『図解即戦力 画像センシングのしくみと開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書』2023/6/14
輿水 大和 (監修), 青木 義満 (著), 明石 卓也 (著), 大橋 剛介 (著), & 7 その他


(感想)
 画像センシング技術について、図解で解説してくれる入門書で、主な内容は次の通りです。
第1章 画像センシング現場の技術深訪
(安全運転支援・自動運転、医療支援・健康サポート、生体認証システム、マシンビジョン/検査、バーチャルリアリティ・ミックスドリアリティ、スポーツ、農林水産・畜産・食品、環境・リモートセンシング)
第2章 画像センシングのキホン センサーから画像処理まで
(画像処理と流れ、デジタルカメラと画像ファイル形式、イメージセンサー、光学系、照明、画像データのキホン、画像デジタル表現のキホン、カラー情報の扱い、画像ヒストグラム)
第3章 画像処理技術の詳細 パターン検出と画像識別
(濃淡変換処理、形状処理、空間フィルタリング、特徴抽出の流れ、さまざまな画像特徴量、特徴点検出、図形要素の検出、画像マッチング、形状マッチング、特徴点マッチング)
第4章 最先端画像センシング技術
(画像認識の流れ、画像認識のための特徴抽出、画像識別、機械学習による画像認識、顔画像認識、ニューラルネットワークと深層学習、Convolutional Neural Network(CNN)、Transformer、教師あり学習、自己教師あり学習、数式ドリブン教師あり学習、事前学習、転移学習、データ拡張)
第5章 さまざまなタスク
(行動認識と時空間モデル、3D認識、異常検知、行動予測、物体検出、いろいろなセグメンテーション、画像生成・画像変換)
第6章 画像センシングを支えるツール & Tips ?ハード、ソフトからデータセットまで
(ハードとソフト(1)GPU、(2)SoC、(3)クラウドサービス、(4)新しいカメラ、画像識別データセット、動画認識用データセット、3次元物体認識、物体検出&セマンティックセグメンテーション、最新情報の収集)

「第1章 画像センシング現場の技術深訪」では、画像センシング技術がどのように活用されているのかが具体的に紹介されていました。
 安全運転支援・自動運転、医療支援(画像診断)・健康サポート、生体認証システムなどから、サッカーなどのスポーツの戦術分析や判定支援、さらには生け簀の魚への給餌支援、農作物の収穫予測など、すでにさまざまな分野での活用が進んでいます。
 続く「第2章 画像センシングのキホン」では、「画像処理には、画像補正など画質改善のためのものと、画像認識などの意味抽出のものがある」、「アナログ画像をデジタル化するには、標本化と量子化の2つのステップが必要である」など画像処理の基本に関する概説がありました。
 そして最も興味津々だったのは、「第3章 画像処理技術の詳細」ここでは、「フーリエ変換は、画像の全体的な周波数情報を抽出できる」、「図形要素を画像中から検出するため、エッジ検出、輪郭線検出、形状マッチング処理が行われる」、「事前に登録した画像をテンプレートとして、似た画像領域を探索する処理をテンプレートマッチングと呼ぶ」、「ハフ変換は、画像中のエッジ情報から、円や直線などの図形要素を検出する」など、さまざまな画像処理技術の概要紹介がありました。この本だけで初心者が理解できるほどではありませんでしたが……少なくとも、画像処理とはどういうものかの概要は理解できたように感じます。
「第4章 最先端画像センシング技術」では、AI(深層学習)を活用した画像センシング技術が多数紹介されていて、これもとても参考になりました。
 例えばTransformerという自然言語処理を行う深層学習モデルは、画像認識分野でも高い精度を得られることが明らかになったそうですが、もともとは、「入力されたテキスト中のどの単語に注視して特徴を捉えるかに着目するのみで、高性能な言語モデルを構築できる」という論文をベースにしているそうで……なんか人間の行っている処理にも近いような印象を受けました。
 またとても興味深かったのが、「転移学習」。これは「ある別の類似タスクで獲得した学習済みモデルを、認識対象である本来のタスクへ転移して用いる」もので、「転移学習を利用することで、事前学習で得られた特徴表現を初期値として、限られた学習データでの学習を行うことができる」そうです。……これも人間の行っている処理に近いような感じがします。初めて何かをやる時に、それと同じようなことをすでに経験していると、対応しやすいですよね(ピアノを弾いている人は、ピアニカもすぐに弾けるようになる、など)。
 さて、この本では「画像センシング処理」の方法をたくさん学べましたが、人間にはこの程度の画像処理なら簡単にできることを考えると……人間って凄いなーと改めて痛感させられました(笑)。もっとも機械が学習・進化するスピードはとても速いので、今後は、機械も凄いなーと思うようになるのでしょう(もちろんもともとは人間が機械を進化させているのですが……)。
「画像センシング技術」もどんどん進んでいくと思うので、本書の最後の「57 最新情報の収集」にあった最新情報を収集するのに役立つ場所やサイトを、以下に紹介します。
・画像処理に関する国内最大規模のシンポジウム(SSII)
・ビジョン技術の利用可ワークショップ(ViEW)
・コンピュータービジョン分野の研究コミュニティ:cvpaper.challenge)
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 画像センシング技術の全体像を学べる入門書でした。画像処理に関わる仕事をしている方や、これから学びたいと思っている方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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