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第1部 本

科学

日本一わかりやすい2050の未来技術(中村尚樹)

『最先端の研究者に聞く 日本一わかりやすい2050の未来技術』2023/3/16
中村 尚樹 (著)


(感想)
 アンドロイド、身体共有、埋込サイボーグ、人工冬眠、老化細胞除去、以心伝心技術、感性メーター、こころ翻訳機、台風制御、生物農薬……2050年の未来をつくる科学技術の最前線を紹介してくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 起死回生の策 ムーンショット
第2章 病気にかかる前に「予防」する
第3章 人が身体、脳、空間、時間の制約から解放される
第4章 自ら学習・行動し人と共生するロボットの実現
第5章 気候制御と地球資源・環境の維持
第6章 ムリ・ムダのない食料供給産業の創出
第7章 精神的豊かさ・躍動的社会を実現
   *
「ムーンショット」とは、1962年に行われた「10年以内に月に行く」というケネディ演説にちなんだもの。「一見すると実現不可能なように思えるが、しかしきわめて独創的な計画で、専門家の英知を結集すれば成功する可能性があり、しかも実現すれば社会に与えるインパクトがきわめて大きなプロジェクト」を言うそうです。
 そして2018年に日本の政府の打ち出した科学技術政策が「ムーンショット」。次の9つの目標があり、全体で1950億円の基金を造成して事業の推進を図るそうです。
・(目標7を除き2050年までに、)
目標1:人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
目標2:超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
目標3:AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し共生するロボットを実現
目標4:地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
目標5:未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
目標6:経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
目標7:2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサスティナブルな医療・介護システムを実現
目標8:激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現
目標9:こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現
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 本書では、最先端の科学者約30人に綿密な取材を重ねたジャーナリストの中村さんが、2050年の実現をめざす未来科学技術の最前線を解説してくれます。
 どれもとても興味津々な内容でしたが、例えば「第2章 病気にかかる前に「予防」する」では、「100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサスティナブルな医療・介護システムを実現」する政府目標プロジェクトに関わるものとして、次のような研究が紹介されていました。
・老化細胞の生存に必要な遺伝子GLSIを発見。GLSI阻害剤をマウスに投与したら、正常な細胞に影響を与えることなく老化細胞だけを死滅させることに成功。
→すべての老年病に共通する病因である慢性炎症を標的として、これを除去することで、あらゆる老化や老年病を一網打尽にできる医療の確立をめざす
・特定のタンパク質のリン酸化が、眠気の正体の一部である可能性が高いことが明らかに。
・大量の睡眠計画データをAI分析することで、睡眠トレンド別に病気リスクを予測、その人に一番ふさわしい予防医療を実現
・本来は冬眠しない動物のマウスを冬眠状態に誘導できる神経回路(Q神経)の特定
→人工冬眠:冬眠中は酸素消費とエネルギー代謝が活動期に比較して激減するので、炎症や免疫反応、ショックや組織障害、細胞障害も抑制される。→緊急救命医療に活用
・ウイルスの機能や形質によるタイプを問うことはせず、ウイルスが体に入ってきたとき、生体がどう反応するか、その反応のパターンでウイルスを分類するという新しい方法
→それぞれに対する治療法を準備する(未知の新しい感染症にも対応可能になる)
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 この他にも、「生身の人間の代わりとなるCA(サイバネティック・アバター)を脳で動かすインターフェース」とか、「埋め込みサイボーグ」などSFのようなプロジェクトも!
「第4章 自ら学習・行動し人と共生するロボットの実現」では、「究極の、何でもできるロボットを目指す」プロジェクトについて、次のようなことが書いてありました。
「「(前略)アイレックに搭載するAIには、ロボットの身体機能を含めたリアルタイム予測と感覚、運動制御を深層予測学習し、身体知に基づくロボット独自の世界モデルを獲得させる。」(中略)
「究極の、何でもできるロボットを目指すのであれば、ヒトに近い柔らかさを持っている方がいい。ドライではなくウェットになっています。」
 ロボットの構成要素を流体ベースに転換し、人工筋肉の動作は粘性流体アクチュエーター(駆動装置)、エネルギーは燃料電池、表面はゴム弾性を有するエラストマーでカバーして無数のセンサーを配置し、内側には流動性のあるゲルを充填する。構造的には生体のような「自己修復」も重要になってくる。しかしすべてをウェットなシステムにするのは技術的に難しく、骨格部分には金属素材を取り入れたドライメカニズムとのハイブリッド型を目指すことにしている。」
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 ……本当にこんな「人間のようなロボット」が実現するのでしょうか?
 さらに「第5章 気候制御と地球資源・環境の維持」では、「台風制御」とか「台風発電」など、そんなことが出来たら本当に嬉しいような技術が紹介されていました。
 また、地球温暖化を防ぐとともに環境にも優しい農業の研究も進んでいるようです。
 さらに「7章 精神的豊かさ・躍動的社会を実現」では、相手の真意をつかめる「自動ホンヤク機」や、「ポジティブな感情」を促進する方法など、そんなことまで? と驚くような研究もありました。
『2050年の未来をつくる科学技術の最前線』を分かりやすく紹介してくれる本でした。夢がある面白い研究が多いので、今後に期待したいと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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