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第1部 本

ビジネス・経営

BUILD(ファデル)

『BUILD: 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック』2023/5/23
トニー・ファデル (著), Tony Fadell (著), 土方 奈美 (翻訳)


(感想)
「何を」「誰と」つくるか、それがすべてだ。
 iPod、iPhoneの開発チームを率いた伝説のエンジニアのファデルさんが教えてくれる「世界を変える」プロダクトの極意です。
「はじめに」には次のように書いてありました。
「世界には凡庸でつまらないモノをつくる凡庸な会社があふれている。だが僕は人生を通じて、エクセレンス(究極)を追求するプロダクト、エクセレンスを追求する人たちを求めてきた。最高のロールモデル、勇気と情熱をもって世界に凹みをつくった人たちから学ぶことができて本当に幸運だった。
あらゆる人にそんな機会があればと思う。
だから僕はこの本を書いた。」
 iPod、iPhoneの開発チームを率いた伝説のエンジニアの方の本なので、成功体験だらけなのかと思っていましたが、意外なほど失敗もしているようで、むしろ失敗から学んだことを、本書で惜しげもなく披露してくれています。それだけに、すごく実感がある「役立つ内容」だったように感じました。
「第一章 社会に出る」には、次のように書いています。
「(前略)学校の勉強で、その後一生うまくやっていく備えができるわけではない。社会に出るとは、いつの日か多少うまくやれるようになるまで、ひたすら失敗を重ねていくチャンスを手にすることだ。」
「僕は人生初の成功より、人生初の大失敗から多くを学んだ。」
 ……こんなふうに言われると、とても励まされます。
 二十代のファデルさんは、すごくいいアイデアを思いついてその製品化を進めますが、その時点ではまだ革新的すぎて、ユーザーに受け入れてはもらえませんでした(後に、ヒットする商品のさきがけとなるような商品ではあったのですが…‥)。
 いくつもの失敗を重ねたファデルさんは、重要な原理原則を獲得します――「確かに素晴らしいテクノロジーを盛り込んではいた。しかし、現実を生きる人々の問題を解決しなかった。」
「最高のアイデアはビタミン剤ではなく鎮痛剤でなくてはならない。ビタミン剤は不可欠ではない。ひっきりなしに続く日常的な不快な体験を除去する――ここにプロダクトの価値がある。」
「「見えないもの」を「見えるもの」にする。ここにプロダクトの正体がある。プロダクトはつくって売っておしまいではない。ユーザーがそれを手に入れる前に始まり、手に入れた後もずっと続くカスタマージャーニーのすべてをプロダクトに落とし込む。」
 ……「変化は少しずつ、ゆっくり起こすべき」なのでしょう。
 そして本書では、このように「何をどう作るべきか」だけでなく、マネジメントや会社経営のコツや苦労についても、とても具体的に伝授してくれます。最新技術を作り出すシリコンバレーで活躍していた方なので、マネジメントも「新しい技術」に満ちているのかと思いきや……意外なほど古典的なものばかりで、逆に説得力を感じました(笑)。
 例えば「第五章 マネージャーになる」で語られる「マネージャー(管理職)になろうと思っている人が知っておくべきこと」の概要は……
1)成功するのに必ずしもマネージャーになる必要はない
2)マネージャーになったら、あなたの仕事はこれまであなたが成果をあげてきたものではなくなる
3)マネージャーになるのは「修行」
4)部下に厳しく、最高の成果を求めることはマイクロマネジメントにはならない
5)個性より大切なのは誠実さ
6)部下が活躍すると自分がかすんでしまうのではないかと心配するのはやめよう
   *
 そして「第一六章 準備はいいか」で語られる「スタートアップを成功させるための準備」の概要は……
1)スタートアップで働く
2)大企業で働く
3)さまざまな困難を切り抜けるのを助けてくれるメンターを見つける
4)あなたの足りない部分を補い、重荷を共有してくれる共同創業者を見つける
5)優秀な人材を見つけ、仲間に加わるよう説得する
   *
 ……シリコンバレーの会社でも、「組織やマネジメント」に必要なことは、あまり変わらないようです。(もちろん本書内では、これらについて、とても具体的に解説されています。)
 この本に書いてあることは、どれもファデルさん自身が、悩み苦しみながら培った経験がもとになっているので、とても説得力があり、いろいろなヒントをもらえたような気がします。その一部を紹介すると、次のような感じ。
・「人とつながる。どんな分野であろうと、それが仕事を見つける最善の策だ。(中略)
重要なのは粘り強いこと。そして相手の役に立つことだ。頼みごとをするだけでなく、自分からも何かを申し出る。好奇心と情熱がある人なら、いつだって他人にオファーできるものがあるはずだ。」
・「重要なのは正しいバランスを見つけることだ。実行できないほど破壊的ではいけないが、誰も興味を持たないほど簡単に実行できてしまうものもいけない。どこで勝負するか、選ばなければならない。そもそも勝負をしなければ話にならない。」
・「あなたの会社が破壊的存在なら、強烈な反応や感情が返ってくることを覚悟しておく必要がある。あなたのプロダクトを熱烈に支持する人もいる。その一方、猛烈に、徹底的に憎むものもいる。それが破壊に伴うリスクだ。あらゆる人に歓迎されるわけではない。破壊は敵をつくる。」
・「最初に成功をつかむきっかけとなったプロダクトを破壊することを恐れてはならない。たとえそのおかげで大成功をつかんだとしてもだ。(中略)
あなたが今、かつてないほど大きな市場シェアを維持しているのなら、それはもうすぐ硬直して停滞するサインだ。自らの置かれた状況をしっかり調べ、自分の尻を蹴飛ばすべきタイミングだ。」
    *
『BUILD: 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック』、まさにタイトル通りの本でした。iPod、iPhoneの開発チームを率いた伝説のエンジニアが、自らの失敗経験をとして培った「真に価値あるものをつくる仕事のやり方」……とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
   *   *   *
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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