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第1部 本

教育(学習)読書

正解のない教室(矢萩邦彦)

『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』2023/3/20
矢萩 邦彦 (著)


(感想)
 混迷の時代に道を切り開くための「リベラルアーツ」の入門書で、内容は次の通りです。
Introduction 毎日を自由に、楽しんで生きている人の共通点は?
序章 ぼくたちは何を学べば良いのか?
(どうやって成長すればいいのか? 何のために学ぶのか? リベラルアーツとは何か? 他)
【第一章】ぼくらを探しに~自分をめぐる冒険
(存在しないものを想像できるか? 存在しない音を聴くことはできるか? ぼくたちはなぜ存在しているのか? 他)
【第二章】ちゃんと考えるために~論理をめぐる冒険
(まったく同じものは存在するか? 本質が宿るのは物質か精神か? その「対義語」は本当か? 他)
【第三章】 世界を知るために~認知をめぐる冒険
(どうすればAIと共存できるか? いかにして「無意識のクセ」に気づくか? 分かっていればちゃんと見えるのか? 他)
【第四章】 ぼくらの世界と物語~言語をめぐる冒険
(AIは何からつくられたのか? なぜ言語はたくさんあるのか? 日本語にはどんな特徴があるか? 他)
【終章】 ぼくたちの物語を描く
(あなたはどんな物語を生きたいのか? みなが乗りたい物語とは? 星座に仕込まれた暗号とは? 他)
openending ぼくたちの物語はどうなっていくのか?
   *
「introduction」には、リベラルアーツについて次のように書いてありました。
「リベラルアーツとは、「自由に生きるための技術」というような意味があります。「自由に生きる」とは、やることを「自分で自由に選択できる」ことです。」
 そして本書の目的は、「古典的なリベラルアーツの知識と技術(世界の基本構造)に自分自身の経験と価値観(自分軸)、所属する社会の現状(最新の世界観)をプラスした3つの視点をメタ認知し、自己決定する力を身につけることを目指します。」で、「この本では、上の3つをメタ認知するために、自分を知る(第一章)、論理的に考える(第二章)、世界を認知する(第三章)、言語を理解する(第四章)の順番で、体系的に学んでいきます。」だそうです。
「第一章 ぼくらを探しに」以降は、「存在しないものを想像できるか?」などの疑問が設定されて、読者はそれについて学んだり考えたりしていくのですが、著者の矢萩さんが、この疑問をテーマにいろいろ語ってくれるので、それを参考にしつつ、考えていきます(と言っても強制的に考えさせられるわけではなく、何も考えずに、ただ読むだけということも出来ますが……)。
 例えば、「あなたは何者なのか?」という疑問の場合は、次のように書いてありました。
「自分が何者かを考える一つの指針に「真善美」があります。<真>は、自分は何を信じるのか、<善>は、何がよいことだと思うのか、<美>は、何を美しいと感じるのか、ということです。あなたの「真善美」は何でしょうか? それぞれ三つずつ挙げてみてください。」
 これを考えることで、自分の価値観を整理し、再確認していけるのです。
「第二章 ちゃんと考えるために」以降も、同じように多くの疑問と、それを考えるためのヒントが書いてありました。ここでは、次の文章が心に残りました。
「(前略)論理的に考えることで、晴れていくモヤモヤがあります。それは、自分の行動を選択することにも、議論をしてお互いにアップデートするためにも有効な方法です。なんでもすぐに信じてしまうのではなく、正しく疑うことで、とらわれに気づき、自由な選択肢を増やすことができます。そして、本当に信じるべきことが分かってきます。」
 そして「第三章 世界を知るために」では、次の文章が……
「天文学的な規模で増殖する情報のなかで、ぼくらの人生の時間は相変わらずの有限です。そんな状況だからこそ、ぼくたちは自分にとって必要な情報を選択するために自分軸を把握し、情報を分類し、活用する技術が必要で、それこそが、リベラルアーツなのです。」
 さらに「第四章 ぼくらの世界と物語」では、次の文章が……
「言葉というのは、広い意味でたとえです。オノマトペも状態をまねしてたとえたものでした。文字も、月を指さす指も、たとえです。それ自体ではない。
 だから、ぼくたちは、言葉を使って五感でとらえられない実体のないものや、現実ではありえないことすら話すことができます。そして、その実体のないものや、ありえないものをぼくたちは想像したり、共有したりすることができるのです。」
「(前略)自分の知っていることで、関係性を理解する。そして、その軸を使って、別のことを理解したり説明しようと試みる。他者と共有できる軸かどうかを確かめる。その経験の積み重ねが、あなたの自分軸となり、この世界のあらゆる情報がネットワークとして立ち上がってくるのです。」
「(前略)学習も教育も経験も、ぼくたちひとりひとりを確実にアップデートしていきます。」
 そして最後の「openending ぼくたちの物語はどうなっていくのか?」では……
「ぼくたちの時間は有限です。だから、選択をします。何かを選ぶということは、別の何かを選ばないということでもあります。何かをやらないことだって、やることと同じくらい重大な選択です。さまざまな選択の繰り返しが、ぼくらの未来をすこしずつ変えていきます。その舵取りをする技術こそがリベラルアーツです。」
 小学生から大学生、社会人……あらゆる世代が「考える楽しさ」を体験したリベラルアーツの授業実践をもとに、世界の構造と自分軸を捉えるリベラルアーツの世界を体感できる本でした。
 学生時代は「正解のない問題」は苦手でしたが、社会人になると「正解のない問題」に何とか対応していかなければならない場面に何度も直面し、「正解のない問題」を「自分で考える力を鍛える」ことの大切さを痛感させられました。
 自分で考える力を鍛えるための「リベラルアーツ」入門。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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