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第1部 本
数学・統計・物理
14歳からのニュートン超絵解本 虚数
『14歳からのニュートン超絵解本 虚数』2022/12/16
ニュートンプレス (その他)
(感想)
2乗するとマイナスになる不思議な数「虚数」。その発見の歴史やエピソード、数の世界の終着駅「複素数」の詳細、さらには身のまわりや物理学で活躍する虚数など、虚数の基本と応用をやさしく解説してくれる本で、内容は次の通りです。
プロローグ 虚数っていったい何?
1.虚数が生まれる前の「数の歴史」
2.虚数はこうして誕生した
3.新たに生まれた数「複素数」
4.虚数がなくては物理学もなりたたない
5.オイラーの等式と虚数の不思議
*
「1.虚数が生まれる前の「数の歴史」」では、虚数どころか、今では完全に当たり前のものになっている「ゼロ」や「負(マイナス)の数」が使われるようになったのも、それほど昔ではなかったことが、次のように書いてありました。
「位取りのゼロは、紀元前3世紀ごろのメソポタミアや、紀元前1世紀ごろのマヤなどで使われていたことが知られています。しかし、当時のゼロは、それ自体が1、2、3……などと同じような「数」であるとは認められていませんでした。
ゼロが数とみなされるようになったのは、6~7世紀のインドが発端とされています。ゼロを数と認めることにより、「0+4=4」や「10×0=0」のような計算が可能になったのです。」
そして……
「負の数がいち早く登場するのは、紀元前1~2世紀ごろに書かれたとされる『九章算術』という中国の数学書です。」
……へー、負(マイナス)の数の方がゼロより早く認知されていたんだーと思ったところ、なんと世界的に見るとそうではなく、「17世紀ごろのヨーロッパでは、「マイナス(負)の数」は受け入れられていませんでした。」なのでした! えー、そうだったんだ!
そんな状態だったのに、「2.虚数はこうして誕生した」によると、1545年に出版されたカルダノの『アルス・マグナ』で、なんと「虚数」が誕生したのです。カルダノはこの本で、「二つの数がある。これらを足すと10になり、かけると40になる。二つの数はそれぞれいくつか」という問題を出したのですが、これを解くには「虚数」が必要になり、カルダノは「虚数をつかうと、答えのない問題にも答えが出せることを初めて示した」のです。
さらにガウスが、次のように「虚数まで考えれば方程式は必ず解をもつ」ことを示しました。
「1799年、22歳のガウスは、学位論文で、「代数学の基本定理」とよばれる重要な定理を証明しました。(中略)
代数学の基本定理とは、「複素数係数のn次方程式は、必ず複素数の解を持つ」という定理です。(中略)
このガウスの功績により、方程式を解くために必要な数においては、複素数こそが人類による数の拡張の旅の終着点であり、これ以上の解の拡張は必要ないということが示されたのでした。」
そして「3.新たに生まれた数「複素数」」によると……
「自然数、有理数につづいて無理数が、さらにゼロや負の数が加わり、実数ができあがりました。そして(純)虚数が発見されました。実数と虚数を合わせた数である複素数が発見され、数の拡張は完成しました。」
……「数」は「複素数」まで考えれば、それで全部になるんですね! ふう、良かった……。
それにしても……「マイナスの数」が一般的でなかった頃から、数の拡張の終着点の「虚数」までは、意外に短時間だったことに驚かされます。いや……むしろ「マイナスの数」がずーっと一般的でないまま、科学が着実に進んできていたことの方が驚きなのかもしれませんが……。
そもそも「プラスからマイナスの数をいくら調べても、「2乗してマイナスになる数」など、どこにも見当たらない」のに……天才って、驚きの考え方をする人たちなんですね……。
この虚数単位iは、「実数と同じく、四則演算(足し算・引き算・かけ算・割り算)の対象としてあつかうことができます」という嬉しい性質がある一方で、私には理解できない性質がたくさんあるようでした……。
たとえば「虚数の大きさは比較できるのか」によると……
「(前略)実は、すべての複素数の間でなりたつような、一般的な大小関係を定めることは不可能であることが証明されています。つまり、虚数はその大小を比較することができないのです。」
……なぜ「実数と同じく四則演算できる」のに、「大小関係は定まらない」のか、この時点ですでに私には理解不能でした(苦笑)。
そして「5.オイラーの等式と虚数の不思議」になると……かなりお手上げ状態に(涙)。次のようなことが書いてありました。
・「三角関数と指数関数は、一見まったくことなる性質をもっていますが、不思議なことにオイラーの公式では、この二つの関数が等式で結ばれています。この公式をなりたたせている数こそが、虚数だったのです。」
・「(前略)オイラーが自然定数について研究していたとき、自然定数の底がeであることを発見しました。その後、これは「ネイピア数」と呼ばれるようになりました。」
・「円運動をあらわす三角関数こそオイラーの等式の土台となる式です。オイラーの公式は虚数の世界での円運動をあらわす式なのです。(中略)
オイラーの公式が物理学において不可欠な式となっているのは、三角関数が光(電磁波)などの自然現象をあらわすうえで必須の関数だからです。」
……うーん、このあたりのことは……よく分からないけど、「とりあえず、そうなっている」こととして把握しておきます……。
それでも、この不思議な数「虚数」は、すでに実生活に欠かせないものとなっているようです。「4.虚数がなくては物理学もなりたたない」では、「体脂肪の計測でも虚数が使われている」ことが次のように書いてありました。
「交流回路では、回路内のコイルやコンデンサーのはたらきにより電圧と電流の位相(波の周期のタイミング)がずれて電圧と電流の比が変動し、基本的にはオームの法則はなりたちません。ところが複素数を使うと、交流回路における電圧と電流の比(電圧/電流)を、「インピーダンス」という複素数の値をもつ定数であらわすことができるのです。(中略)
現在では電流工学だけでなく、量子力学、コンピュータ科学など私たちの生活に不可欠な科学技術の多くに、虚数が使われています。」
……体脂肪体重計は、微弱な交流電流を体に流してインピーダンスをはかることで、体脂肪率を推定しているそうです。
さらに「虚数を使えば時空の「三平方の定理」が使える」とか、「ガラスごしの光には虚数が関係している」とか、頭がこんがらがってしまいそうな話も……。でも、「波や振動を複素数を使ってあらわし、その計算結果の実部だけを取り出す手法は、物理学でよく使われます。」ということだし、「量子力学の基礎法的式であるシュレディンガー方程式には虚数単位iが先頭に置かれているので、量子力学は、虚数なしにはなりたたない。」ということなので、「虚数」を理解できるかどうかはともかく、使えるようにはなっておくべきなのかもしれません(苦笑……すでに弱気)。
不思議だけど大切な数「虚数」について、イラストを駆使して、(たぶん)かなり分かりやすく教えてくれる本でした。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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