ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
天文・宇宙・時空
太陽系の謎を解く(NHK「コズミックフロント」制作班)
『太陽系の謎を解く :惑星たちの新しい履歴書 (新潮選書)』2022/6/23
NHK「コズミックフロント」制作班 (著), 緑 慎也 (著)
(感想)
木星に弾き飛ばされた幻の惑星、土星の衛星から噴き出す液体の謎、冥王星で発見された窒素氷河……2011年から2018年に放送されたNHKの人気番組「コズミックフロント」「コズミックフロント☆NEXT」をもとに、当時の取材データ、最新の研究、知見を加えて、あらたに書き下ろした本です。
現在(2022年)も放送が続いている人気番組「コズミックフロント」、私も大好きでよく視聴しています。この本はその一部をまとめたもので、番組同様、わくわくしながら読み進められました。写真などの画像は意外に少なかったのですが、内容がとにかく面白いのです☆
例えば「第1章 最大惑星との遭遇」では、太陽系の大きな3つの謎(「火星が小さすぎる(本来は地球より大きいはず)」、「小惑星が混ざり合っている」、「天王星、海王星が外側にある(もっと内側で誕生した可能性があるのに)」)のすべてに木星が関わっていると考えられていることが書いてありました。
木星がどんな風に関わっていると考えられているのかのごく一部を以下に紹介すると……
「木星は太陽系の中で最初に生まれた惑星だ。46億年前、太陽系の誕生直後には、その中心に生まれたばかりの太陽が輝き、まわりには水素とヘリウムのガスが、円盤のように広がっていた。このガスの中に岩や氷の塵が舞い、それが次第にくっつき合って惑星が作られた。
円盤状のガスが冷えたのは太陽系誕生から1000万年ほど後と言われている。木星はそれまでに現在の大きさに成長したと考えられている。円盤のガスをひとりで半分以上吸い上げ、太陽系の王者となったのである。
誕生した木星は強い重力で、水星や小惑星の軌道を変えながら公転していただろう。しかし、それだけでは、太陽系全体にまで影響を及ぼしたとは考えにくい。」
これに対して「グランド・タック・モデル」という説があるそうです。それによると、木星は今よりも太陽の近くで生まれ、ガスと塵を取り込みながら太陽に近づいていったのですが、火星あたりまで来て、今度はなぜか太陽から遠ざかっていきました(そのため火星は木星に材料を奪い取られて、大きくなれなかったと考えられます)。実は木星がこんな動きをしたのは、土星との重力の及ぼし合いのためだそうです。木星と土星は太陽を公転しながら互いに接近することがあり、あるとき共鳴状態になり、木星は太陽から遠ざかる方向へ動くことになったのだとか(なお、土星はその後、さらに別の力で今の位置へと移動することになった)。
このモデルでは、小惑星帯で岩石惑星と氷惑星がまじりあっているのは、木星が移動して横切ったために、かきまぜられてしまったという説明も出来るそうです。
……なるほど!
また「ニース・モデル」によると、天王星と海王星は今の公転軌道より内側の、木星や土星からあまり離れていないところで形成されたのですが、これらが周囲の小天体に影響を及ぼし小天体を蹴散らした作用・反作用で、木星はより内側へ、土星・天王星・海王星はより外側へ移動したと想定しています。このモデルでは、「後期重爆撃期(今から39億年前、水星、金星、地球、火星など太陽系内側の岩石惑星が短期間で大量の小天体に衝突された時期)」もそのまま説明できてしまうのです。
……太陽系がそんな成り立ちをしていたなんて……一見、荒唐無稽のようにも思える、これらのモデルがとても面白くて、わくわくさせられました(かなりの説得力を感じます)。
「第2章 土星に突入せよ!」では、土星の探査や、土星の衛星に生命の可能性があることが、「第3章 地球の隣人たち」では、水星、金星、火星の探査状況などを知ることが出来ました。
とりわけ火星に関しては、アメリカの宇宙産業を担う大手企業ロッキード・マーティンのオリオン宇宙船を核とした巨大宇宙ステーション建設計画や、さらに火星のテラフォーミング計画などに興味津々。……こんな凄い計画があるんですね……。
そして「エピローグ」では、太陽系から飛び出していったボイジャー1号、2号について、次のように書いてありました。
「太陽系は、銀河系の中を、秒速およそ240キロメートルという高速で回っている。太陽系の端の領域では、太陽から放出されている物質と太陽系の外にある物質とがぶつかって厚い壁のようになっている。この壁は「ヘリオポーズ」と呼ばれている。」
「ボイジャー1号から遅れること6年、2号は2018年11月、ヘリオポーズを突破した。ヘリオポーズでは、星間物質が太陽圏に入り込む一方、太陽圏からも物質が漏れ出ていること、両者がぶつかる領域では温度が3万℃にも達していることなど、2号も貴重な情報をもたらしてくれた。」
……『太陽系の謎を解く :惑星たちの新しい履歴書』、NHKの人気番組「コズミックフロント」をぎゅっと濃縮して紹介してくれたような素晴らしい本でした。私たちの太陽系のこと、宇宙のことを楽しく学ぶことが出来ます。宇宙や科学が好きな方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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