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第1部 本
生物・進化
鳥類学が教えてくれる「鳥」の秘密事典(陳湘靜)
『鳥類学が教えてくれる「鳥」の秘密事典』2023/1/6
陳湘靜 (著), 林大利 (著), 牧髙光里 (翻訳), 今泉忠明 (読み手)
(感想)
ユーモラスで可愛いイラストととともに、鳥の体や生活に関する面白い話を気軽に楽しめる「鳥」の秘密事典で、内容は次の通りです。
序章 鳥類って、そもそも何?
(恐竜は絶滅していない? コロコロ変わる鳥の分類、鳥に国境はないけれど、など)
第1章 鳥の体の不思議
(つま先立ちするスリムな足。鳥のすごいステルス術、生き抜くための嗅覚、など)
第2章 驚きの食生活
(スズメたちのクチバシから分かること、メンフクロウの静かなる狩り、など)
第3章 鳥は話し、求愛し、子育てする
(アメリカコガラの警報は3段階、師弟で踊るオナガセアオマイコドリ、など)
第4章 飛んで旅をする鳥たち
(渡る鳥、渡らない鳥、地図もGPSもないのに迷わない、オスは急いで帰郷する、など)
巻末付録
・鳥名小辞典
・用語集
・参考文献
*
今泉忠明さんによる「前書き」には、次のように書いてありました。
「イラストもいい。さらっと描かれているようで、正確です。(中略)全体の特徴をよくつかんで、イラストで表しているから分かりやすい。マンガ風に描かれていることで、鳥の行動もよく分かります。」
……まさしくその通り。表紙のイラストで分かるように、鳥の目や姿がとてもユーモラスで、ひょうひょうとした感じ……眺めていると癒されていく「ほっこり」に満ちているのです。この本の最大の特徴は、このイラストにあると思います。
もちろん、それだけでなく、『「鳥」の秘密事典』のタイトルにふさわしく鳥類学に裏づけられた知識が盛り込まれています。一つ一つの記事は見開きページ+α程度の短さなので、暇なときにパラパラ読んでいるうちに、鳥の知識もついていくという美味しい本です。
なお「前書き」によると……
「(前略)本書は台湾で書かれたものの翻訳ですが、台湾と日本の本土には、多くの共通種がいます。」
とのことでした。
さて最初の「序章 鳥類って、そもそも何?」の「恐竜は絶滅していない?」には、「鳥類は恐竜、中でも獣脚類の生きている子孫です!」と書いてありました。裏付けとなる化石が次々と発見されているそうです。このことやDNAなどを用いた分子系統学研究の進展で、鳥の分類がコロコロ変わっているのだとか。
また「鳥に国境はないけれど」という記事では、鳥は意外にも「ローカル」なことを知りました。次のように書いてありました。
「(前略)ずばぬけた飛行能力があるとはいえ、鳥が生きていけるかどうかは地形や気候、食べ物、繁殖条件などに左右されます。だから、94%の鳥は、地球上でどれか一つの大陸にだけ生息しています。
実は、ウやハヤブサのように、南極を除く五大陸に広く分布している「汎存種」は小数派。」
……そうだったんだ。
この他にも、「鳥」について、さまざまな意外な事実を知ることが出来ました。そのごく一部を紹介すると次のような感じ。
「第1章 鳥の体の不思議」から……
・「木をねぐらにする小鳥が「しゃがむ」と、つま先につながっている腱が引っ張られてツメが内側を向き、自然に枝をガッチリつかむ仕組みになっています。ですから、眠っていてもうっかり落ちる心配はありません。」
・鳥は、半分寝ながら半分は起きていられる。(例えばオオグンカンドリは、片側の脳半球は起きたままで、もう一方の脳半球はうたた寝ができるので、洋上を2か月ぶっとおしで飛んでも落下することはない。)
「第2章 驚きの食生活」から……
・「水中にいる獲物の位置は光の屈折のせいで、実際の場所と目で見ている場所がずれています。ですから鳥は、何度も練習して腕を磨きます。漁の下手くそなカワセミやミサゴがおぼれ死んだという記録もあるのです。」
「第3章 鳥は話し、求愛し、子育てする」から……
・鳥の鳴き声は「さえずり」と「地鳴き」に分けられ、「地鳴き」には、警戒音、コンタクトコール(情報共有)、ペギングコール(ごはんちょーだい)、飛鳴(移動中のコミュニケーション)などがあり、「さえずり」はほとんどオスが行い、オスに「俺の縄張りだ!」を主張したり、メスに求愛したりする。
・卵細胞が卵になって産み落とされるまで約1日(もっと長い鳥もいる)。(受精に20分、卵白ができるのに3~4時間、殻膜ができるのに1時間、卵殻ができるのに20時間→産卵)
「第4章 飛んで旅をする鳥たち」から……
・日照時間の変化が刺激となって、鳥の体内でホルモンが分泌され、長旅の準備が始まる。
・渡りの前には食べまくる(例:ズグロアメリカムシクイの普段の体重は約12gだが、渡りの前には20gを超える)
・鳥のレース、1位に輝くのは?
持久力1位:オオソリハシシギ:8日間(連続飲まず食わず)で1万1000キロ
飛行距離1位:キョクアジサシ:7万900キロ(往復)
飛行高度1位:インドガン:最高記録7000メートル など
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心癒される素敵な鳥イラストとともに、鳥の面白知識を堪能できる本でした。「巻末付録」には、鳥名小辞典、用語集、参考文献もあります。楽しくて勉強にもなるので、みなさんもぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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