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第1部 本

数学・統計・物理

すべては量子でできている(ウィルチェック)

『すべては量子でできている ――宇宙を動かす10の根本原理 (筑摩選書 235)』2022/9/16
フランク・ウィルチェック (著), 吉田 三知世 (翻訳)


(感想)
 宇宙はいかにして誕生し、世界はなぜこのように存在するのか? 長年、現代物理学を牽引してきたノーベル賞物理学者のウィルチェックさんが、10の根本原理からこの永遠の謎に迫っている本で、主な内容は次の通りです。
第I部 今あるもの
第1章 広大な空間
第2章 悠久の時間
第3章 ごく限られた構成要素
第4章 ごく限られた法則
第5章 たくさんの物質とエネルギー
第II部 今あるもの
第6章 宇宙の歴史は開かれた本だ
第7章 複雑さ出現す
第8章 まだまだ見るべきものがある
第9章 謎は残る
第10章 相補性は精神を拡張する
   *
「訳者あとがき」には、次のように書いてありました。
「本書を要約すれば、驚くほど広大で複雑な世界は、驚くほど少数の単純な根本原理によって説明されるが、謎も残っており、私たちが生まれ変わって思考のブレイクスルーを成し遂げることで根本原理は書き換えられ、謎が解明されていくだろう、ということではないだろうか。」
 ……確かに、このような内容でした。量子物理学の専門家の方の本なので、量子に関する内容も多かったのですが、数式はほとんどなく、かなり平易な文章で分かりやすく書いてある感じで、分かったような気になる(部分もあったのですが……やっぱりよく分からない部分もありました)本でした。
 それでも全体を通して感じたのは、「世界をよりよく理解するためには、すでに知っている知識に立脚しながらも、今までと違ったアプローチで眺め直してみることも大切だ」ということ。読み進めていくうちに、量子物理学者の物事の本質への迫り方が分かってきて、こちらの頭もどんどん柔らかくなっていったような……(笑……単純)。
「第3章 ごく限られた構成要素」では、世界の仕組みを支配する四つのシンプルで普遍的原理として、次の四つがあげられていました。
1)基本法則は変化を記述する。世界の記述を、「状態」と「法則」の二つに分けると便利だ。状態は「そこにあるもの」を記述し、法則は「物事はいかに変化するか」を記述する。
2)基本法則は普遍的だ。すなわち、基本法則はいかなる場所でも、また、いつでも成り立つ。
3)基本法則は局所的だ。すなわち、ある物体の直近の未来の振る舞いは、その近傍の現在の条件にのみ依存する。この原理を表す標準的な科学用語は「局所性」である。
4)基本法則は正確だ。これらの法則は正確であり、例外は許されない。したがって、これらの法則は数学的な方程式によって定式化することができる。
   *
 なお、この後には、これら四つは「完全に真ではないかもしれない」が、「これらの原理に導かれて、私たちは物理的世界が実際にどのように機能するかを見事に記述できるようになったのである。」と書いてありました。
 また、物質の根本的な性質は、「質量」、「チャージ(荷重)」、「スピン」の三つだそうです。
 そしてこの章の「ごく限られた構成要素」とは、「すべてのものは素粒子でできている」ということなのでしょう。
 本書で個人的に最も参考になったのは、巻末の「補遺」の「性質としての質量」の部分。ちょっと長いですが、以下にその一部を紹介します。
「質量は、慣性と重力という、粒子の振る舞いの二つの側面に関与している。物体の慣性とは、運動が変化することへの抵抗の大きさの尺度である。つまり、慣性が大きい物体は大きな外力が加わらない限り、現在の速度で運動を続ける傾向が強い。一方、粒子の重力とは、それが他の粒子に及ぼす普遍的な引力である。粒子の質量が大きいほどその重力は大きい。素粒子は種類ごとに明確に決まった質量を持っている。(中略)
 光子、グルーオン、そして重力子などの最も重要な素粒子の一部は、質量がゼロである。だからといって、これらの粒子が慣性をもたないとか重力を及ぼさないというわけではない。じつのところ、これらの粒子は慣性も重力も持っている(中略)
 質量は慣性と重力に寄与するが、その唯一の因子ではない。とりわけ運動している粒子は、静止している粒子よりも慣性が大きく、また及ぼす重力も大きい。実際、相対性理論によれば、慣性と重力を支配しているのは質量ではなくエネルギーなのである。」
「(前略)光子がエネルギーを持っており、したがって質量がゼロであるにもかかわらず、光子には慣性があり、また重力も及ぼすことを示しているのである。」
   *
 ……なるほど! 光子は質量はゼロでもエネルギーを持っているので、慣性も重力もあるという考え方は、目からウロコでした。でも、かなり重要な考え方のような気がします。
 量子物理学の観点から「宇宙を動かす10の根本原理」を語ってくれる科学エッセイ集みたいな感じで、とても勉強になりました。科学(特に物理)が好きな方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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