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第1部 本
健康&エクササイズ
これからのヘルスリテラシー 健康を決める力(中山和弘)
『これからのヘルスリテラシー 健康を決める力 (KS医学・薬学専門書)』2022/12/8
中山 和弘 (著)
(感想)
医学的な基礎知識がなくてもヘルスリテラシーが身につく本で、主な内容は次の通りです。
第1章 ヘルスリテラシーとは意思決定する力
第2章 納得がいく意思決定は情報に基づく意思決定
第3章 信頼できる情報としてのエビデンス
第4章 よりよい意思決定のプロセスと落とし穴
第5章 コミュニケーションとインターネットがもたらす変化
第6章 情報の信頼性の確認方法「か・ち・も・な・い」
第7章 ヘルスリテラシーを支えあう市民・患者と医療者のコミュニケーション
第8章 患者・市民中心の意思決定支援
第9章 意思決定ガイドで「胸に『お・ち・た・か』」を学ぶ
第10章 日本人のヘルスリテラシーの低さと意思決定できる幸せ
第11章 へルスリテラシーに配慮した社会づくり:組織、病院、職場
第12章 子どもと高齢者のヘルスリテラシー
第13章 健康をつくる力からみた健康
第14章 誰もが参加できるソーシャルメディアとヘルスリテラシー
第15章 新型コロナウイルスで問われたヘルスリテラシー
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一般向けの健康啓発的な本かと思ったのですが、どちらかというと医療従事者向けの本でした。患者さんとの対話方法や、意思決定の仕方(させ方?)などについて、きめ細かく解説してくれます(文章がみっちり詰まっている本です)。健康教育や公衆衛生、健康科学の教科書として、とても参考になると思います。
「リテラシー」とはご存じの通り「読み書き能力」のことです。そしてヘルスリテラシーとは、「健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識・意欲・能力であり、それによって、日常生活におけるヘルスケア・疾病予防・ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの」だそうです。
ヘルスリテラシーの向上のさせ方などについて、とても詳しい解説があって勉強になったのですが、ここではその中から、医療従事者ではない一般の人にも参考になりそうな情報を、ほんの少し紹介させていただきます。
例えば「第7章 ヘルスリテラシーを支えあう市民・患者と医療者のコミュニケーション」には、診察を受けるときの心構えとして、「新 医者にかかる10箇条」がありました。
1)伝えたいことはメモして準備
2)対話の始まりはあいさつから
3)よりよい関係づくりはあなたにも責任が
4)自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
5)これからの見通しを聞きましょう
6)その後の変化も伝える努力を
7)大事なことはメモをとって確認
8)納得できないときは何度でも質問を
9)医療にも不確実なことや限界がある
10)治療方法を決めるのはあなたです
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……これらの心構えはどれも重要だと思います。できれば事前に、自分の症状で想定されそうな病気をネット等で検索しておくと、医師の説明がよく分かるようになると思いますし、不明な点を質問しやすくなると思います。
また「第3章 信頼できる情報としてのエビデンス」などでは、次のような、さまざまな医療情報サイトが紹介されていました。
・日本医療機能評価機構のMinds(診療ガイドラインのデータベース):誰でも見ることができる。(治療の他、がんの検診やワクチンについてのガイドラインもある)
・厚生労働省eJIM(「統合医療」情報発信サイト):民間療法をはじめとする補完・代替療法に関するエビデンスに基づいた情報を紹介している。
・国立健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」
・日本医師会「『健康食品』・サプリメントについて」
・国立がん研究センターのがん情報サービス
・日本インターネット医療協議会「インターネット医療情報の利用の手引き」
・闘病ブログを病名で探せるサイト:TOBYO
・健康と病いの語りデータベース:デイペックス・ジャパン など。
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米国では国民のヘルスリテラシーを高めようという活動が進められていて、分かりやすくて信頼性のある医療情報サイト(MedlinePlus)や健康情報データベース(PubMed)が作られている他、次のような基準もあるそうです。
・米国の国民健康教育基準
1)よりよい健康のためのヘルスプロモーションと疾病予防に関する考え方を理解する
2)健康行動に影響を与える家族や仲間、文化、メディア、技術の影響について分析する
3)よりよい健康のための情報や商品、サービスにアクセスする
4)よりよい健康のために健康リスクを避けたり減らしたりする対人コミュニケーションスキルを使う
5)よりよい健康のために意思決定のスキルを使う
6)よりよい健康のために目標設定のスキルを使う
7)よりよい健康のための行動を実践し、健康リスクを避けて減らす
8)自分や家族、コミュニティの健康を主張する
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これに対して日本では、信頼できる医療情報サイトがまだまだ少ないようですし、そもそも日本人は「意思決定」自体も苦手なようです。「第10章 日本人のヘルスリテラシーの低さと意思決定できる幸せ」には、日本とオーストラリアの大学生を比較した研究で、日本の大学生の方が、意思決定における自尊感情が低く、意思決定時のストレスが高く、よく考えて自分で決めるよりも、他の選択肢の可能性を考えずにせっかちに誤って決定してしまったり、意思決定を回避したりする傾向にあるという傾向があったそうです。
……これって、分かるような気がします。
でも、今後は改善されるかもしれません。実は、子どもの頃からの意思決定のスキルを向上させるため、教育が変わり始めているようです。次のように書いてありました。
「2020年以降の新しい学習指導要領になって、保健の分野全体では、小中高を通じ、心身の健康には不可欠な「課題を見付け、その解決に向けて思考し判断する」という問題解決力や、意思決定力といった健康を決める力に関する項目が新設されたところです。これは保健の分野に限らず全分野に共通した話で、新しい学習指導要領でようやく育成すべき資質・能力として「思考力・判断力・表現力」が前面に立って大きな柱として盛り込まれました。」
……これは素晴らしいですね! 日本人もみんな、基本的には「自分の健康は自分で守る(育てる)」ことが出来るようになってほしいと思います。
ヘルスリテラシーについて、リテラシーや意思決定などを含めて、総合的に学ぶことができる本でした。医療従事者の方にとっては、健康教育や公衆衛生、健康科学の教科書としても使えるのではないかと思います。ぜひ一度、読んでみてください。
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