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第1部 本
科学
ノーベル化学賞に輝いた研究のすごいところをわかりやすく説明してみた(山口悟)
『ノーベル化学賞に輝いた研究のすごいところをわかりやすく説明してみた』2022/10/20
山口 悟 (著)
(感想)
近年の日本人ノーベル化学賞受賞者の研究を中心に取り上げて、受賞した研究の内容や、どんなところが画期的な発見だったのかなどを、分かりやすく解説してくれる本で、内容は次の通りです。
1 化学の基本を思い出そう
2 アンモニアを合成し、食糧危機を救うハーバー・ボッシュ法
3 分子と分子を簡単にくっつける鈴木・宮浦カップリング
4 タンパク質の質量をはかるMALDI
5 サッカーボールみたいな分子の発見 フラーレン
6 電気を通す分子づくりポリアセチレン
7 小さくて軽くて大きなパワーをもつ電池 リチウムイオン電池
8 クラゲから得られた緑色に光るタンパク質GFP
9 鏡の世界の分子をつくる不斉合成法
とてもありがたかったのが、「1 化学の基本を思い出そう」。化学の簡単な歴史など、基本的知識の復習が出来ます。
ちょっと面白かったのが、アリストテレスの四元素説が、錬金術の基礎になっていたということ。アリストテレスの四元素説は、「あらゆる物質は火・水・空気・土の元素からできている」なので、元素の割合を変えてしまえば、鉛や銅から金、さらには賢者の石だって作ることができると錬金術師たちは考えていたようです。……錬金術ってオカルトの一種だと思っていましたが、意外にも科学的だったんだなーと感じました。残念ながら前提が間違っていましたが……。
そして「アンモニアを合成し、食糧危機を救うハーバー・ボッシュ法」以降は、ノーベル化学賞を受賞した有名な研究の紹介になっていきます。
薬品合成などに威力を発揮している「鈴木・宮浦カップリング」などについて、かなり分かりやすい説明を読むことが出来ました。
この研究の凄いところは、「炭素原子をつなげるための「仕掛け」をつくるというアイデアから始まり、化学反応を起こしにくいベンゼン環をつなぐことを「パラジウム」という触媒で実現し、しかも産業的に利用しやすい化学反応にまで発展させた」ことです。
その仕掛けとは、「くっつけたい炭素原子に、あらかじめそれぞれプラスの電気を帯びやすい原子(水素、ナトリウム、リチウム、亜鉛など)と、マイナスの電気を帯びやすい原子(酸素、窒素、塩素、臭素など)を結合させておくと、炭素原子はそれぞれマイナスとプラスの電子を帯びるようになるので、それを利用して炭素原子を結合させる。」というものでした。
また「タンパク質の質量をはかるMALDI」では、従来、質量分析計では計測が困難だった壊れやすいタンパク質を、「混ぜておいた他の物質(マトリックス)にレーザーのエネルギーを吸収させて、タンパク質を破壊することなくイオン化する」というアイデアと、質量分析計の進化(イオンを電圧で加速させるだけでよい「飛行時間型」が開発された)の両方を利用して開発されたことが書いてありました。
こんな感じで、「サッカーボールみたいな分子の発見 フラーレン」、「電気を通す分子づくりポリアセチレン」、「小さくて軽くて大きなパワーをもつ電池 リチウムイオン電池」、「クラゲから得られた緑色に光るタンパク質GFP」、「鏡の世界の分子をつくる不斉合成法」についても、イラストを活用した簡潔な解説があります。
これらの化学研究は、農業や医薬、ITなどで活用され、私たちの生活を便利で快適なものにするのに大いに役立っています。スマホやPCで使われている「リチウムイオン電池」は、こんな風に研究・開発されてきたんだ……本当にありがたいことですね!
ノーベル化学賞の内容を知ることで、ちょっぴり化学の勉強(復習)もすることができる本でした。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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