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第1部 本
社会
SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける(堀内進之介)
『SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける』2022/9/15
堀内 進之介 (著), 吉岡 直樹 (著)
(感想)
現在のユーザーの姿や、感覚を刺激するとはどういうことか、人間が感覚を刺激されることにいかに弱いのか、さらには具体的にビジネスの現場でどう使われているのかまでを紹介してくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 ユーザーにはもう、主体的な行動は期待できない
第2章 ユーザーはネットが刺激する「感覚」に誘惑される
第3章 「感覚」は想像以上に私たちを動かしている
第4章 実践編 それではどう設計するか
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「第1章 ユーザーにはもう、主体的な行動は期待できない」では、消費者が抱える3つのできない(意欲できない、選択できない、理解できない)について書いてありました。このうち理解できないとは、「商品がすでにオーバースペックで品質を理解できない」ことだそうです。……確かに。自分のことを考えてみても、日常的に必要なものはすでにほぼ持っているので、そもそも欲しいものがないし、いざ買おうとすると選択肢が多すぎて選ぶのに迷うし、必要ない機能までついている商品を買わされている(必要な機能のある商品に不要な機能までついている)ような気がしています。「シンプルで使いやすい」ものが欲しいのに……。こんなふうに「人びとはみんな自分に合った、自分ならではのモノを欲しがるようになった。」そうです。次のようにも書いてありました。
「企業はこうして、「わがまま化」に対応して商品の規格や生産体制を整えてきましたが、それでも消費者を意欲できないのが今の現状です。」
……なるほど。そして、これに対する企業向けの処方箋としては、「「選考を満たす」ではなく「一目惚れ」を狙うこと。「能動的」ではなく「受動的」にする」と良いそうです。
賢い企業はすでに「意欲できない人には「選択」を免除するという戦略」をとっているそうで、その実例が、サブスクリプションや少額料金制なのだとか。中でも音楽配信はかなり成功していて、その秘訣は「プレイリストとシャッフル機能」。これだと、自分で選ばなくても受動的な音楽体験がいつでも可能になるからです。
とても面白かったのが、「第3章 「感覚」は想像以上に私たちを動かしている」。ここでは特に「聴覚」をうまく使うことの大切さが強調されていました。
「成功しているコンテンツは人間の知覚や感覚を活かしている」そうで、これまでは視覚偏重でしたが、5G などIT技術の向上で、聴覚を活かしたものが効果を上げているようです。実は、視覚は選択には向いていますが、意欲を喚起させることには向いていないのに対して、聴覚は選択には向いていませんが、無意識の喚起が可能なのです。
「話し声などの音声情報は半ば自動的に意識を向けてしまうような習性があります。」と書いてありましたが、確かに、近くで「人間の声」がしていたら、聞きたくなくても耳に入ってきてしまう気がします(それだけに、とてもうるさく感じてもしまいますが……)。
音や音楽は、次のように使うと効果的なようです。
「(前略)ラグジュアリー・ブランドは低い周波数のBGMを意識的に用いれば「あこがれ」のイメージを効果的に伝えやすくなります。一方、いわゆる日用消費財のブランドであれば、高い周波数の音楽を使用することで、自社ブランドに親近感をもってもらいやすくなります。」
また牛丼チェーンやコンビニエンスストアでは、朝は軽快でさわやかな音楽、日中は明るいポップス、夜は落ち着いた洋楽に変えているだけでなく、牛丼チェーンの方は客の回転率を上げるためにテンポが速い音楽を、コンビニエンスストアは購入額が上がるよう客に長く滞在してもらいたいので遅めのテンポにしているそうです。
この他にも「スローテンポのBGMには怒りを抑える傾向あり」、「アップテンポのBGMは、喜びや楽しみと関係なく、覚醒を高める」、「クラッシック音楽をかけると、より高価なワインが売れる」などなど、さまざまな効果が紹介されていました。
そして最終章の「第4章 実践編 それではどう設計するか」では、人間が感覚に左右されやすいことを利用して、うまく誘導する設計の仕方まで教えてくれます。
「3ない」の消費者をどう引きつけるかの大前提は……
「(前略)現在では当時とは比べ物にならないほど情報量が増えているので、相対的にひとつのコンテンツへの注意力は減少しています。(中略)
広告の役割とは、新製品の販売などの必要な機会ごとに、いかに消費者の関心を獲得するか、必要な情報を届けるか、動機を誘発するかに移ったといえるでしょう。」
例えばネットの動画広告の場合は、スキップされるまでの5秒が勝負だそうです。……確かに(苦笑)。YouTubeを見るときに出てくる動画広告は、スキップボタンに矢印を置きながら見ています……。そして「5秒の間だと、目的はブランド認知を徹底させることが現実的です。」なのだとか。
この他にも、「ドラマでもスタートと同時に本題に入ることが求められている」とか、「(音声ドラマの)登場人物は5人まで」とか、「コンテンツは20分が限界(音声コンテンツはスキマ時間にあてられることが多く、長尺は敬遠されがち)」とか、いろいろ大事なことを教えてもらえました。
なかでも重要だと感じたのは、「音声では、わかりやすさこそがすべて」ということ。例えば、視覚を利用する観光パンフレットは、さまざまな情報が盛り込まれているますが、これは、「視覚コンテンツの設計では、伝えることよりも、選ばせることが必ず優先する」からで、音声コンテンツの設計でこれをやると、人間の「ワーキングメモリ」を超えてしまうので良くないそうです。聴覚を利用する音声コンテンツでは、ユーザーが選ぶ情報を揃えるのではなく、「わかりやすさ」を優先させなければいけない……とても納得できる教えだと思いました。
この章では具体的な教え(方法・事例)が多かったので、音声コンテンツを設計している方にとっては、仕事をする上でとても実践的に役に立つと思います。
『SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける』は、「ラクな方に流れる人間」を行動に向かわせるために、どのように「感覚」に働きかけたらよいのかを教えてくれる本でした。参考になる情報満載でしたので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。ビジネスマンの方には、特にお勧めします。
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