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第1部 本

科学

図解でわかるカーボンニュートラル燃料(CN2燃料の普及を考える会)

『図解でわかるカーボンニュートラル燃料 ~脱炭素を実現する新バイオ燃料技術』2022/5/21
CN2燃料の普及を考える会 (著, 編集)


(感想)
 化石燃料であるガソリンに替わる燃料として注目度が増しているカーボンニュートラル燃料について、産業界の現状とこれからの普及に向けた技術開発の最新情報を、図表を交えながら分かりやすく解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
第1章 CO2削減に対する国内外の動向
第2章 カーボンニュートラル燃料の導入と生産技術
第3章 自動車業界でのCO2削減対策の動向
第4章 バイオ燃料の動向と今後の可能性
第5章 航空業界のバイオ燃料の取り組み
第6章 バイオエタノールの新たな用途への展開
第7章 バイオエタノールの産業化シナリオと政策提言

 カーボンニュートラル燃料とは、CO2を排出しない自然由来のバイオエタノールおよびCO2を利用して生成されたグリーン燃料です。次のように書いてありました。
「温室効果ガスの排出を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいが、排出せざるを得ない分に等しい量を「吸収」または「除去」することで、差し引きゼロにする。これが、「カーボンニュートラル」の意味するところだ。」
 そして各種燃料のCO2排出に関する特徴は、次の通りです。
1)化石燃料
 例:石炭、石油、天然ガス
 特徴:長い年月をかけて生成された地下資源。利用によって大気中のCO2を増加させる
2)カーボンニュートラル燃料(バイオ燃料)
 例:木質ペレット、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェット燃料、バイオガスなど
 特徴:燃料に含まれる炭素はバイオマスが大気中から吸収したものなので、利用によって大気中のCO2を増加させない
3)カーボンニュートラル燃料(合成燃料)
 例:e-fuel、MTG、合成ガスなど
 特徴:合成する炭素源がバイオマス由来か大気中からの直接回収の場合は大気中のCO2を増加させないが、化石燃料由来の場合は大気中のCO2を増加させる
(なおe-fuelとは、CO2と水素を合成して製造された燃料のこと)
4)カーボンフリー燃料
 例:水素、アンモニア
 特徴:燃料が炭素を含まないため、利用によって大気中のCO2を増加させないが、製造方法によっては化石燃料の利用と同程度の大気中CO2増加を引き起こす
   *
 2050年の脱炭素化、カーボンニュートラルに向けて産業界の動きが活発になってきている中、自動車業界ではハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)などの開発が加速しています。化石燃料も使用するHV以外も含めたこれらの自動車は、再生可能エネルギーや水素などのクリーンエネルギーの利用も踏まえ、CO2排出量をおさえたカーボンニュートラル化に大きく貢献することが期待されています。
 EV・PHVの導入では、現在、中国やヨーロッパがリードしていますが、2030年代になるとアメリカ、インド、日本でも相当程度の販売台数が見込まれているそうです。日本の電動車の導入目標と今後の見通しは、「2035年までに新車販売で電動車(EV、FCV、PHEV、HV)100%を実現」だとか。
 そのためのインフラとして、「水素ステーションは、2025年頃に320か所、2030年ごろに900か所程度の普及を目指して」いて、「充電インフラについては、遅くとも2030年までに「ガソリン車並みの利便性」の実現を目指す」そうです。
 実は充電インフラは、なんと2020年3月末で、ガソリンスタンド数の約6割に匹敵しているのだとか! ただし、「普通充電器の場合、充電時間は数時間以上。急速充電器の場合は、大容量タイプは空に近い状態の電池を80%まで充電するのに15~30分、中容量タイプでは30分~1時間程度かかる」ので……ガソリンの充填時間の3~5分と比べると、まだまだ便利とは言い難いようです。
 このガソリンには、3%ほどバイオエタノール、e-fuelなどのカーボンニュートラル液体燃料を導入することが出来るそうで、自動車の電動化だけでなく、カーボンニュートラル液体燃料化を進めていくという方法も有効だそうです。
 また「第4章 バイオ燃料の動向と今後の可能性」では、「セルロース系バイオエタノール」の研究が進んでいることを知りました。バイオ燃料というと、トウモロコシやサトウキビから作るものだと思っていましたが、「セルロース系バイオエタノール」の原料は、わら、農作物の皮、茎、木の葉、落ち葉、林業での間伐材、都市・農村の有機廃棄物などからの繊維でもいいそうです! ただし、これらはセルロース以外にキシロースなど他の糖類やテルペン、リグニンなどを含むので、エタノール発酵される前に多大な前処理が必要になり、どうしてもトウモロコシやサトウキビよりコスト高になるのだとか……うーん……。
 でもこの「セルロース系バイオエタノール」は、石油などの燃料を海外に大きく依存している日本にとって、重要な燃料資源になりそうな気がします。実は日本はバイオエタノールですら、ブラジルとアメリカに依存しているそうです。これは……安全保障的にも問題があるような……。
「セルロース系バイオエタノール」ではなくても、トウモロコシのような「バイオ燃料」に適した新しい作物を開発するのが良いかもしれません。燃料には適しているけれど、食用には適していない雑草のような丈夫な作物です。それがあれば、人里離れた休耕地など野生生物が問題になっている場所に植え替えることで、野生生物問題を解決できるかもしれないし、日本の広大な河川敷に植えることで、従来の除草作業の費用を収穫作業に振り替えることで、割高なコストをまかなえるかも……まあ、これは妄想なんですが……。
 ……ちょっと脇道にそれてしまいました。申し訳ありません。
 えーと、カーボンニュートラル燃料は、自動車産業のみならず、ジェット機などの運輸業界で徐々に注目を集めている燃料だそうで、なんとJAL、ANAでバイオジェット燃料の導入(一部実用)が始まっているそうです。ジェット燃料にまで使えるんですね!
 さらに「第6章 バイオエタノールの新たな用途への展開」には、次のように書いてありました。
「(前略)非可食バイオマスから製造されるバイオエタノールがカーボンニュートラルであり、それに加えてC2化合物であるため、ガソリンブレンド用だけではなく、エチレンやC3、C4化合物などのバイオケミカルやバイオプラスチック原料への利用拡大が進展している。
 また、バイオマスを含む有機系廃棄物のガス化によって得られる合成ガスやCO2を利用して、微生物や触媒によってバイオエタノールを合成する研究開発も実証段階に達しており、廃棄物資源の循環利用にもバイオエタノールの利用が図られている。」
 ……バイオエタノールは、燃料だけでなく、プラスチック原料としても使用できる上に、廃棄物資源の循環利用にも利用できる……今後の「持続可能な社会」実現のために有望なもののようです。
 カーボンニュートラル燃料について、総合的に解説してもらえる本でした。興味のある方はぜひ読んでみてください。
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 このシリーズには、『図解でわかるカーボンニュートラル ~脱炭素を実現するクリーンエネルギーシステム』、『図解でわかるカーボンリサイクル ~CO2を利用する循環エネルギーシステム』という本もあります。
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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