ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
ビジネス・経営
NOISE:組織はなぜ判断を誤るのか?(カーネマン)
『NOISE 上: 組織はなぜ判断を誤るのか?』2021/12/2
ダニエル・カーネマン (著), オリヴィエ・シボニー (著),
『NOISE 下: 組織はなぜ判断を誤るのか?』2021/12/2
ダニエル・カーネマン (著), オリヴィエ・シボニー (著), & 3 その他
(感想)
組織やシステム内で発生する判断のばらつき=「ノイズ」。個人の判断の「バイアス(認知の偏り)」と比べて見過ごされがちですが、時に甚大な悪影響を及ぼすことも多いのです。
保険料の見積もりや企業の人事評価、医師の診断や裁判の判決など、均一な判断を下すことが前提とされる組織においてノイズが生じるのはなぜか? そしてノイズを減らすために私たちができることは何か? 行動経済学のカーネマンさんたちが、ノイズの少ない合理的な組織のあり方を教えてくれる本です。
判断に悪影響を与える「ノイズ」と「バイアス」の違いについては、ライフル射撃の例で分かりやすく説明がありました。ライフルで的を数発撃った痕が、標的から一定の規則性で外れている時は、「バイアスがかかっている(おそらく照準がずれている)」状態で、広い範囲で不規則にばらついている時は、「ノイズが多い」状態だそうです。……なるほど。
そして保険会社の審査の「ノイズ」の実例では、「ある保険会社で2人の専門職に個別に見積もりを依頼し、2人の金額の差がどれくらいあるかを調査したところ、55%もの開きがあった。」
裁判の実例では、「前科のない2人が偽造小切手を現金化したため有罪になった。詐取した金額は、一人は58.40ドル、もう1人は35.20ドル。ところが量刑は前者が懲役15年、後者が30日だった。」
そして医療診断の実例では、「2人の精神科医が州立病院の患者を別々に診断したところ、患者の精神疾患の病名の一致度は50%にすぎなかった。」
……などなど。驚くほど「判断のばらつき(ノイズ)」が大きいことが、調査例でどんどん明らかにされていきます。
本書(上下2巻)の概要は、次の通りです。
第1部:ノイズを探せ(ノイズとバイアスのちがいの検討)
第2部:ノイズを測るものさしは?(人間の判断とはどういうものか、その精度や誤差をどのように計測するかの検討)
第3部:予測的判断のノイズ(予測に関してはルールやアルゴリズムが人間の判断にまさる)
第4部:ノイズはなぜ起きるのか(ノイズが生じる根本原因)
第5部:よりよい判断のために(判断を改善しエラーを防ぐ方法)
第6部:ノイズの最適水準(ノイズの適正水準はどの程度か)
まとめと結論:ノイズを真剣に受け止める
終章:ノイズの少ない世界へ
付録A:ノイズ検査の実施方法
付録B:意思決定プロセス・オブザーバーのチェックリスト
付録C:予測の修正
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特に参考になったのが、下巻の「第5部:よりよい判断のために」以降。判断を改善しエラーを防ぐ方法を具体的に教えてもらえます。
判断ノイズを減らすためには、「人間による判断をルールやアルゴリズムに置きかえる」のが効果的ですが、「優秀な人材を選ぶ」方法ももちろんあって、優秀な人材には次のような特徴があるそうです。
「精力的な調査、注意深い思考、自分の当初の予測に対する批判的検証、他の情報や判断の収集と比較考量、絶え間ないアップデートが超予測者の特徴だ」
「「試す、失敗する、分析する、修正する、また試す」という思考サイクル。」
……こういう人材なら、どんな状況でも頼りになりそうです!
また「判断ハイジーン原則」の概要は次の通りです。(なおハイジーンとは「衛生管理」のことで、ここでは「ノイズを減らす措置」のような感じだと思います。)
1)判断の目標は正確性であって、自己表現ではない(アルゴリズムを適切に使う。ガイドラインを導入する)
2)統計的視点を取り入れ、統計的に考えるようにする
3)判断を構造化し、独立したタスクに分解する
4)早い段階で直感を働かせない(直感は最終段階で働かせる)
5)複数の判断者による独立した判断を統合する
6)相対的な判断を行い、相対的な尺度を使う(人間は絶対評価より相対評価の方が得意。実例をアンカーとして目盛りに合わせるとノイズが少なくなる)
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もちろん本書内では、これらに関する詳しい解説があります。
また付録として、「ノイズ検査の実施方法」、「意思決定プロセス・オブザーバーのチェックリスト(バイアス発見のためのチェックリスト)」、「予測の修正」の3種類の文書がついていて、自分の組織の「ノイズ」を減らすために実践的に使えると思います。
困ったことに、「世界は複雑で不確実であり、判断はむずかしい」上に、「判断のあるところノイズあり」なのです。
「ノイズ」と「バイアス」はどう違うのかを知りたい方、自分の組織内のノイズはどれくらいあるのかを調べたい方、判断や予測の精度を上げたいと望んでいる方は、ぜひ読んでみてください。とても参考になると思います☆
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