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第1部 本

ビジネス・仕事力向上

地頭が劇的に良くなるスタンフォード式超ノート術(柏野尊徳)

『地頭が劇的に良くなるスタンフォード式超ノート術』2021/3/20
柏野尊徳 (著)


(感想)
 スタンフォード大学で学んだ知識をベースに、「最先端のノートの使い方」、「生産性アップのコツと思考法」、「能力を活性化するフレームワーク」を紹介してくれる本です。
 地頭が良い人には、次の3つの特徴があるそうです。
1)突き抜けたアイデアを大量に出せる発想力(変化に応じて、新しいことをゼロから実践する能力)
2)スマートな説明ができる論理的思考力
3)人を集めて動かせる共感力
 嬉しいことに、この地頭力は、「適切な方法」を知ることで誰もが身につけられるようになるそうで、柏野さんは、それをアメリカのスタンフォード大学で学ぶ機会があったのだとか。
 スタンフォード大学では、インプットではなくアウトプットのためにノートを使うそうです。最先端のテクノロジーを使っていそうなスタンフォード大学の人々が使っていたのは、「紙とペン」。それも大量の紙を使うそうです。
・1、2時間のアイデア出しで、約4束・200舞の付箋を使う
・大量のコピー用紙に書きなぐって、それをひとまとめにしてノート代わりにする
・パワポは使わずホワイトボードを何度も消して何度も書きなおす。
   *
 こんなに大量の「紙とペン」を使うのは、「「まずはとにかく手を動かす。そして手を動かす中で見えてきたことをさらに掘り下げる思考スタイル」を身につけることに、強制的に集中できるから。」だそうです。
 ……なるほど。考えてみれば、私自身も思考を「書いて」展開させて、まとめる方法をとっています。ただし「書く」のはペンではなくWord文書やテキストですが、とりあえず漢字や文体にこだわらず、思いついたことを書きなぐる感じで打ち込んでいます。もちろん紙を使うこともありますが、ある程度考えがまとまっているときは、文書ソフトにメモした方が楽なんです。というのは、書いたメモを分類していくときに、文章の移動がすごく楽なので、分類し直したものを見て、内容をさらに改善するのが簡単ですし、最終的な清書も容易にできるからです。
 もっともスタンフォード大学で使っているのは「付箋」なので、分類のために移動するのは、そんなに面倒ではないようですが。しかも「付箋」ならホワイトボードに貼れるので、複数人でブレインストーミングする時にも、すごく便利に使えますし(この本の後半では、ブレインストーミングのやり方も紹介されています。)
 さて、本書でつけられる3つのスキルは、「ベーシックスキル(仕事のスピードとクオリティが両方高まる基礎的方法)」、「コラボレーション・スキル(チームをリードしながら高いパフォーマンスを出す方法)」、「ブースト・スキル(ハイレベルな仕事を日々こなしている人がやっているシンプルな習慣)」で、これら3つの力を身につけるスタンフォード式超ノート術には、次のようなものがあります(具体的な方法は、本書内で詳しく説明されています)。
1) 発想力を高めるアイデア・ノート
(重要と思われるキーワードを書き、視覚的につなげていく)
2) 論理的思考力を高めるロジカル・ノート
(すでにあるアイデアを70%ぐらいの精度で分類、おおまかな優先順位をつけていく)
3) 共感力を高めるプレゼン・ノート
(アイデアや考えを、他者視点で整理し、相手の記憶に残り共感されるストーリーに)
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 これらのノートを使い分けると、脳の思考モードが切り替わるそうです。
 なかでも重要だと感じたのは、「アイデア・ノート」。発想力を高めるためには、次のような心構えを持つことが有効なようです。
・人の目を気にしないで、まずは書く
・完璧さではなく、すぐに手がうごくかどうかが重要
・正しいも間違いもなく、あるのは「表現」
・書いたことにどんな意味があるかは、次のステップで考える
・失敗を前提にした「プロトタイプをつくる」という意識をもってアイデアを書きだす
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 ……要するに「自由に書くことで日頃の制約を外れた新しい創造的な発想を手に出来る」んですね。
 また「プレゼン・ノート」の「ストーリー・ボード」、「ストーリー構成は、普段の様子・課題や矛盾・新しい提案・日常の変化の4つからできており、それぞれの枠組みにどんな内容を当てはめればいいか考えることで、効果的にプレゼンテーションの「中身」を設定することができる。」という話も参考になりました。
 プレゼンでは、次のような「神話の法則」を意識するといいそうです。
1)旅立ち(冒険への呼びかけ→呼びかけに対する拒否→不思議な力/人による支援→異世界への出発→異世界での危機)
2)通過儀礼(試練の道→母性との遭遇→誘惑者の登場→父性との統合→冒険のクライマックス→恩恵や報酬の獲得)
3)帰還(日常への帰還を拒絶→追跡者からの逃亡→外部からのサポート→異世界と日常の境界線→異世界と日常の統合→新しい日常)
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 ……なるほど、面白く感じるファンタジー小説って、この通りの構成になっていることが多いかも(笑)。
 この他にも、発想力を劇的に高める4つのノート術(「クイック1分ワーク」、Google式・高速ブレインストーミング法「Crazy8s」、「10倍と10分の1思考」、「機会探索文」)とか、論理的思考力を劇的に高める3つのノート術(「2×2マトリクス」、「SDTFマトリクス」、「◯△?! マトリクス」)とか、チーム全体のパフォーマンスを上げる4つのノート術(「ブレインストーミング」、「I like, I wish, What if:良い点・改善点・次への提案」、「〝いいね! それなら??型ブレインストーミング」、「ブレイン・ライティング」)など、さまざまなノート術を教えてもらえます(もっとも最後のチーム用の4つは、「ブレインストーミングの方法)なので、「ノート術」ではないような気もしますが……)。
 さらに集中力を保つための思考法として「20-20-20ルール」、「ポモドーロ・テクニック」の紹介もありました(両方とも、「集中」と「休憩」のとり方に関するテクニックです)。
 ということで、「ノート術」だけでなく、仕事に役に立つ発想法・分類法・プレゼン法・ブレスト法など、さまざまな仕事力向上方法を教えてくれる本で、とても参考になりました。
 ただ……個人的には、「地頭が良い」人というのは、「発想の質が優れている」人のことだと考えていたのに、この本で教えてもらえたのは、「とにかくアイデアを大量に出す」方法だったので、その点がちょっと残念だったような気がします。……もっとも「発想の質を優れさせる」には、大量の良書を読む、さまざまな経験を積む(失敗も含めて)などの鍛錬が必要でしょうから、この本一冊で教えられることではないのかもしれません。そういう意味では、この本に「地頭が劇的に良くなる」ほどの効果は期待できないような気がします……。でも、アイデアの出し方・整理の仕方・効果的なプレゼンの仕方が分かるので、少なくとも仕事力は向上すると思います。仕事力を高めたいと思っている方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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