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第1部 本

生物・進化

ニュースなカラス、観察奮闘記(樋口広芳)

『ニュースなカラス、観察奮闘記』2021/11/18
樋口 広芳 (著)


(感想)
 ときおり世間を騒がす「ニュースなカラス」たち。「水道ガラス」、「車利用ガラス」、「置き石ガラス」、「石鹸ガラス」、「ろうそくガラス」……信じがたいほど高い能力を持った天才カラスの実態の現場で、観察によって真相を解明してきた鳥類学者の樋口さんの『観察奮闘記』です。
 最初に登場するのは、横浜市の公園に現れた「水飲み場でみずから水を出して飲む、浴びる」天才的なカラス、グミの物語(2019年)。なんとこのカラスは、蛇口の栓をぐいっと回して水を出すのです。札幌などでもレバー式の水道栓を開くカラスはいるようですが、蛇口を回すカラスは他にいないようです。しかも水飲み用にはちょろちょろと、水浴び用にはたくさんと、回し方まで変えているそうです。このカラスはメスで、つがいのオスはその水を利用するだけで、蛇口を回すことは決してなかったのだとか。天才的な知能と器用さを兼ね備えたカラスだったんでしょうね(残念ながら亡くなったのかもしれませんが)。ちなみに水はもちろん出しっぱなしだったそうです……。
 すごく興味津々だったのが、線路に置き石をしてしまう危険すぎる「置き石ガラス(1995 横浜)」。脱線するかもしれない超危険な行動でハラハラしてしまいますが、なんとこれは、どうやら周辺の住民の方が川のコイにパンを投げ与えていたことで起こったようです。カラスはそのパンを拾って、線路の石の間に押し込んで隠すのですが、その時に石をくわえて持ち上げます。さらに隠したことで石にへばりついたパンを食べる時には、線路に石を置いて、くちばしについたパンをレールにこすりつけて、とって食べるのです。その上、レールをテーブル代わりに使うカラスまでいて……こうして謎の置き石事件が起きていたのでした。うーん、そうだったのか……この事件は周辺の住民がパンを与えるのを自粛するようになったことで、見られなくなったとか。
 さらに「車を利用してクルミを割らせるカラス」、「石鹸を盗んで隠す(食べる)カラス」、「和ろうそくを盗んで隠す(食べる)カラス」など、驚きの生態が次々明らかになっていきます。石鹸や和ろうそくはカラスが好む食料のようです。
 和ろうそく(京都・伏見稲荷大社)に至っては、火がついた部分の溶けたろうそくを舐めてから、持ち去って草に埋めてボヤ騒ぎを起こしているのですが……火が怖くないんかい! とか、熱くないんかい! とツッコミをいれたくなりました。どうやら、ここのカラスは火も熱さも気にしないようです。うーん……危ないから止めてね(この件は、神社でさまざまな対策をしているにもかかわらず、続いているようですが……)。
 この他にも、銀座・赤坂・六本木をハシゴする「グルメガラス」、銭湯に通う「銭湯ガラス(煙突で煙浴)」、「川の浅瀬に石で囲みをつくって自分専用の浴槽を作る水浴びガラス」など驚きの行動をたくさん知ることができて、とても興味津々でした。
 カラスは脳がとにかく大きくて知能が高く、道具を使う天才カラスもいて、人間の暮らしを巧みに利用して生きているようです。
 本文中にはQRコードの掲載もあり、スマートフォンで読み取ることで、樋口さん撮影の「ニュースなカラス」の動画を見ることもできるそうです。
 なお、カラス被害でお困りの方は、次のサイトが参考になるそうです。
・鳥類の生態を被害対策
・カラスとヒトが共存できる社会を
 ……カラスの賢い生態をたくさん知ることが出来る本でした。気楽な読み物になっているので、楽しくどんどん読むことができます。
 カラスはとても身近なのに賢くて興味深い生き方をしているので、観察して楽しむのにぴったりなのだとか。鳥が好きな方は、カラスの観察をしてみてもいいかもしれません。生物が好きな方はぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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