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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

教養としての「日本列島の地形と地質」(橋本純)

『教養としての「日本列島の地形と地質」』2021/12/17
橋本 純 (著)


(感想)
 地形・地質の知識をもとに、日本列島の悠久の時の流れと大地の歴史を楽しみながら、いつの間にか自然災害にも詳しくなれる本です。
 地質学は、大陸移動・生命の進化・日本列島の誕生など、スケールの大きなストーリーを解明する学問で、資源開発に大きく貢献するだけでなく、「防災」という点でも非常に重要な役割を果たしています。地層や岩石には、これまで地球上で起こったあらゆる現象が記録されているので、「地球の歴史」つまり「過去の災害の歴史」を知ることができ、地震や火山噴火、地すべりや土石流などの土砂災害の発生原因を究明し、防災対策に大きく寄与できるのです。
 この本は、大学で地質学を学んだ後、建設コンサルタント会社で土砂災害からの復旧のための調査・設計業務(公共事業)に携わってきた橋本さんが、自らの経験をもとに、自然災害について具体的に教えてくれる本です。
 本書の第1部では、日本列島の成り立ちから、なぜ地震や地すべりなどの自然災害が多いのかを解説。第2部では4、7都道府県の一部の地域について、特徴的な地形・地質や大地の成り立ちの歴史に迫るとともに、観光地の地形・地質にまつわる豆知識などを紹介してくれます。
 なぜ日本列島は災害に見舞われるのかというと、その主な理由は「プレート」と「気象条件」なのだとか。
「気象条件は、雨や雪が多いということです。雨や雪解け水で河川水が多くなれば、山が削られ、脆くなり、崩れやすくなりますし、洪水も起きます。」
「地球表面は硬くて薄い岩盤の殻で覆われています。その殻をプレートと呼ぶのですが、このプレートは細切れで互いにひしめき合っています。このプレートのせいで、日本では地震も火山も多く、地層が細切れで安定しません。断層も多いし、地震や火山のせいで地質は風化(脆くなる)しやすくなります。」
 ……日本は、地質的にツギハギだらけです。日本とイギリスの地質比較イラストが掲載されていましたが、イギリスは時代が進むごとに規則正しく大地がつくられてきたのに、日本はツギハギだらけのモザイク状……イギリスと日本はともに大陸の近くの島国なので、成り立ちも似ているのだとばかり思っていましたが、全然違っていたんですね。イギリスは日本のような「付加体出身」じゃなかったのか(日本は大陸の端が引き裂かれて細切れになったものが移動してくっついた=付加体からできています)……。
 そして日本の主要都市は、ほとんどが沖積層という軟弱地盤で洪水にもなりやすい場所にあるのです。
 ……こんな成り立ちの日本に、自然災害が起きないはずがありませんね……(涙)。
「第1部 なぜ日本には自然災害が多いのか?」では、このような日本列島の成り立ちの概要の他、地質学の基礎知識も学べます。これも解説がとても分かりやすくて、勉強になりました。
 そして「第2部 地形・地質でふるさとを知る」では、全国47都道府県の地形、地質が地形図やイラストで具体的に解説されていきます。とはいっても、各県の全体の地形、地質の解説というよりは、「気になる部分」だけがピックアップされて紹介されている感じです。
 例えば最初の北海道の場合は、「紋別市の谷地形」が取り上げられていました。地質の違いで浸食のされかたが違うために、このような地形になったようです。
 そして岩手県では「岩泉町付近」の地形図から、土石流の直撃の危険性が高い地帯を読み解いています。
 また宮城県、山形県では、地すべり地形を探っています。
 こんな感じで各県の地形の一部をとりあげて、その成り立ちや自然災害の可能性について考察しているので、身近な場所の地形や災害可能性を具体的に知ることができて、とても参考になると思います。
 また各地方ごとに「ポイント解説」もあり、「北海道・東北地方」の場合は、「河川の蛇行」、「ハザードマップの盲点」について述べられていました。
 実は「ハザードマップは必ずしも完全ではない」そうで、「一級河川、二級河川はハザードマップの整備が進んでいますが、準用河川のハザードマップはほとんどつくられていないようです。」……地形図や地質から読み取れる情報をもとに、災害を予測することも大切なんですね。
 もちろん、その他の県でも興味深い記事をたくさん読むことが出来ました。そのうちのごく一部を紹介すると、次のような感じ。
・群馬県の妙義山が奇妙な形になった2つの理由
 1)溶岩や粒子の大きい火山砕屑岩は硬くて浸食に強いため、切り立った崖など変わった地形をつくりやすい。
 2)特に古い火山は浸食が進み、また地層が変形して傾いたりしているため、さらに変わった地形をつくりやすい。
・滋賀県の琵琶湖近くの三上山の地質はチャート。チャートは深海4000m以上の深海でできる地層なので、三上山はもとは深海底だった。
・山口県の秋吉台は、大昔はサンゴ礁だった(化石も見つかっている)
・鹿児島県の開聞岳は玄武岩質の溶岩やスコリアの堆積物で、見事な円錐形の山が海に突き出ている。……などなど。
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 日本列島の成り立ちや地質学の基礎知識とともに、47都道府県の地形、地質(の一部)を学ぶことが出来る『教養としての「日本列島の地形と地質」』でした。とても参考になるので、せひ読んでみてください。NHKの楽しい番組『ブラタモリ』が好きな方には、とくにお勧めします☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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