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第1部 本

科学

よくわかる粉体・粒体ができるまで(吉原伊知郎)

『よくわかる粉体・粒体ができるまで 機能を持った粒をつくる造粒技術』2022/1/29
吉原伊知郎 (著)


(感想)
 粉体や粒体を取り扱う技術、とりわけ「造粒」の技術について、分かりやすく解説してくれる本です。粒を造る装置の過程や仕組み、トラブル対策についても説明があります。
 粉や粒というと身近なところでは、小麦粉とかゴマ塩などが思い浮かびますが、もちろんこれら食材の作り方の説明もあります。ゴマ塩は、ゴマ粒に塩の造粒品を混合して食卓で分離しないようにしているそうです……確かに。普通はゴマが上に、細かい塩が下に分離するはずなのに、塩がゴマと同じ大きさの粒に「造粒」されているから、うまく混じり合っているんですね。
 こういう造粒技術について、その原理から具体的に解説してくれます。作り方としては、次のような方法があるようです(もちろん本書内には詳しい説明があります)。
「第3章 粉をつくる手法」
1 ブレークダウン法
1)衝撃力:「固体をぶつけて壊す」原理
2)剪断力:「はさみで切り裂く」原理
3)圧縮力:「餅つきで突きつぶす」原理
4)摩砕力:「乳鉢+乳棒」や「すり鉢+すりこぎ」ですり潰す」原理
2 粉砕機の後段としての篩(ふるい)分け
3 ビルトアップ法(物理蒸着法、化学蒸着法、その他)
「第4章 粉をつくる手法」
1 転動造粒:「重力を利用して転がす」原理
2 撹拌造粒:「撹拌羽根で粉体を混合して、結合剤を噴霧し、遠心力を利用して転がす」原理
3 圧縮造粒:「粉体層を押しつぶして固める」原理
4 破砕造粒:「材料を軽く解砕し、望みの粒子径に粒揃えする」
5 流動層造粒:「乾燥工程でよく使われる流動層状態で、結合液を噴霧する」原理
6 押し出し造粒:「ダイス(孔)から混錬した粉体材料を押し出して円柱状の粒にする」原理
7 噴霧乾燥造粒:「懸濁液を気体中に噴霧して乾燥させ、液滴中の粒子を固める」原理
8 溶融造粒:「溶かした材料をその表面張力で丸くして固める」原理
9 反応によるカプセル造粒:「2相の界面で化学反応を起こさせ、球形膜で造粒する」原理
10 表面改質による複合粒子:「ここでは機械的に粒子の表面を別の物性に変える」原理
11 蒸発や凝縮・析出を利用した造粒:「高温・高エネルギーや物理化学的手法で造粒する」原理
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 いろんな造粒方法があるんですね! 工場での「造粒」というと、完全にクリーンな環境で機械でガチャンガチャンと効率よく作られていく薬の錠剤のイメージがありましたが、意外に原始的な方法もたくさんありました。
 そして残念なことに、「粉」を作るためには、意外なほどエネルギーが必要なようです。
「(前略)粉砕処理には膨大なエネルギーが必要で、一般に粉砕エネルギーの99%は熱や変形に使われてしまい、真に物質を壊して微小粒子にするために使われているエネルギーは、1%に満たないと計算されています。」
 ……熱や振動、変形……これらはトラブルの原因にもなってしまうものなので、ITやAIなど先進技術を駆使することで、より効率化されていくといいですね……。
「第6章 粉体流体プロセスのトラブル対策」には、粉であることによって発生する、トラブル10種として、「詰まる、くっつく、摩耗する、漏れる、流れる、飛んでいく、蓄熱、発火、粉塵爆発、偏析(静電気現象を含むトラブル)」があげられていました。多くのトラブルは、「粉体物性と機器との特性の関係を、確実に把握していなかったことが原因」のようです。
 そしてこのようにして造粒された粉や粒がどう使われているかについては、「第2章 粉や粒が活躍する分野」で、「目的部位まで到達して分散」し、「時間に従ってきちんと溶ける」よう巧みに作り込まれた医薬品や、なんと「自重の500~1000倍の吸水力を持ち、圧力をかけても離水しない」という機能をもった紙おむつに使われている「超高分子吸水材」などの他分野の実用例の紹介もありました。コピーのトナーにも、造粒技術が駆使されています。
「(コピーのトナーで、)文字や線のエッジがきれいに出ること、他の紙面に汚れがなく、定着後の色落ちがないことが実践できていることは、実は先端技術の結晶なのです。基盤樹脂、着色剤、帯電制御剤、離型剤、流動化剤、導電材、研磨剤などを混錬し、粉砕・分級して製品とされています。」
 ……普段はあまり気がつきませんが、私たちの生活は「造粒技術」のおかげで快適になっているんですね……ありがたいことです。
 ところで「第1章 粉と粒」によると、「粒はその莫大な表面積のために、付着力という力が発生します。」ということで、付着力としては、「ファンデルワールス力、液架橋力(表面張力)、静電気力」が、そして「分離力」は地球の「重力」が要因だそうです。……ということは、無重力状態だと、粉は「散らばる」というよりも、むしろ「付着していく」ことになるってことなのでしょうか? 超新星爆発などで散らばった宇宙の粉塵が、しだいに再び星になっていくのは、この力によるものなのかも……なんか不思議で、ロマンを感じますね☆
『よくわかる粉体・粒体ができるまで 機能を持った粒をつくる造粒技術』……小さな粉や粒を作る技術を総合的に解説してくれる本でした。モノづくりが好きな方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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