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第1部 本
科学
「化学の歴史」が一冊でまるごとわかる(齋藤勝裕)
『「化学の歴史」が一冊でまるごとわかる』2022/3/14
齋藤 勝裕 (著)
(感想)
科学には、化学だけでなく、物理学、生物学、天文学、地質学など、いろいろな分野があります。同じ「科学」の中で、化学と他のサイエンスとの違うところは、「化学は物質を扱う」という点です。化学はすべての物質を「原子、分子」の段階にまで還元して研究する科学なのです……ということで、この本は量子化学、実験化学、ゲノムが開く生命化学の話まで、化学をとても「幅広く」紹介してもらえます。
化学がどのように生まれ発展してきたのか、錬金術と呼ばれるものがどのように化学の発展に寄与してきたのか、化学者たちがどのような法則・定理をつくってきたのかを解説してくれるだけでなく、そんなこと知ってどうなる?(笑)なトリビア話も盛り込まれていて、内容は次の通りです。
プロローグ 化学の歴史は「ひとの歴史」そのもの
第1章 なぜ古代の化学は観念的だったのか?
第2章 魔女が跋扈した裏に隠された中世の化学
第3章 錬金術が化学を成長させた
第4章 大航海・産業革命時代の化学
第5章 光法則・定理が大爆発した〈化学の時代〉
第6章 量子理論を包み込んだ新しい化学
第7章 平和か戦争か、実験化学の時代
第8章 ゲノムが開く生命化学
*
「第4章 大航海・産業革命時代の化学」では、エレキテルは平賀源内さんの発明ではないことが書いてありました。
「エレキテル、すなわち静電気発生器はオランダで発明され、宮廷での見世物や医療機器として用いられていました。日本に持ち込まれたのは江戸時代の1751年の頃のことで、オランダ人が幕府に献上したとの文献があります。
のちに『紅毛談(おらんだばなし)』という本でエレキテルが紹介されたのを長崎滞在中の蘭学者・平賀源内が読み、運よく破損したエレキテルを古道具屋で見つけ、江戸に持って帰って修復に成功しました。」
……そうだったんだ。すっかり平賀源内さんが発明したものと勘違いしていました。
また「第5章 光法則・定理が大爆発した〈化学の時代〉」では、「原子と元素の違い」を知りました。
「「原子」というのは、微粒子を1個、2個と数えられる粒子として見た場合の名前です。ですから原子は粒子を指す物質名なのです。それに対して「元素」というときは同じ性質、同じ反応性を持った原子のことをまとめて呼んだ場合の総称です。ですから、粒子という具体的な物質を指す場合は「原子」と呼び、概念を指す場合は「元素」と呼ぶわけです。」
……なるほど。
そして面白かったのが、「第6章 量子理論を包み込んだ新しい化学」で、「人間の波長」を計算して教えてくれたこと。
「すべての物質は粒子としての側面と、波(波動)としての側面を併せ持つ」と考えたド・ブロイさんの「波長を求める式」に、「体重66kgの人が秒速1mでゆっくりめに歩く」として、その波長を計算すると10のマイナス36乗mになり、あまりに短くて実測不可能なのだとか(笑)。
「人間も含めてすべての物体は波としての性質を持ちますが、それが意味を持つのは「電子、原子、分子」のような「極小物質」の場合だけであり、日常生活には無関係ということなのです。」
また「第7章 平和か戦争か、実験化学の時代」では、「7-5 超分子化学」の「1分子自動車」に驚かされました。合成されている実在の分子の「1分子自動車」があるそうです。
「丸い4個の車輪はいずれもC60フラーレンと呼ばれるものです。この車輪が回転することによって進みます。
実験ではこの1分子自動車を金の結晶の上に置いて、その移動の様子を観察しました。」
……この実験では、本当に車輪を回転させて進んでいたそうです。
そしてさらに「(前略)最近では結合の熱伸縮と熱回転を利用して自走する1分子自動車が開発されています。」なのだとか! 驚きですね!
最終章の「第8章 ゲノムが開く生命化学」では、新型コロナワクチンの話もありました。
「(前略)mRNAワクチンの本体は化学的に合成されたmRNAの分子です。
これが生体の細胞内に入ると、ワクチンのmRNAは細胞に作用することで、本来は抗原の新型コロナウイルスによって産生されるはずのタンパク質を細胞につくらせます。つまり、mRNAは細胞自身に抗原をつくらせるのです。
誰がつくろうと抗原は抗原ですから、生体の免疫系はこの抗原に対抗する抗体をつくり、免疫体制を整えることになります。これがmRNAワクチンの機能なのです。」
……なるほど。分かりやすい……。それにしてもワクチンも「化学」なんですね(笑)。「化学の歴史」を幅広く紹介してくれる本でした。タイトルを見ると難しそうですが、内容はこの表紙イラストの印象と同じく、簡潔で分かりやすい感じでした。文字も大きめですし……。
ちょっと勉強にもなる、軽い科学読み物です。「化学」好きな方はもちろん、「科学」好きの方も、ぜひ読んでみてください。
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