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第1部 本
数学・統計・物理
世の中ががらりと変わって見える物理の本(ロヴェッリ)
『世の中ががらりと変わって見える物理の本』2015/11/6
カルロ ロヴェッリ (著), Carlo Rovelli (原著), 竹内 薫 (翻訳), & 1 その他
(感想)
とても分かりやすい物理学への入門書です☆ と言うと、この先を読まなくなる人が続出するのではないかと思いますが(汗……私もです)、本当にすごく分かりやすいのです(力説)☆
全体で7つの講義があり、「第1回講義 世界でいちばん美しい理論(相対性理論)」、「第2回講義 量子という信じられない世界(量子力学)」、「第3回講義 塗りかえられる宇宙の構造(宇宙)」、「第4回講義 不安定で落ち着きがない粒子(素粒子)」、「第5回講義 粒でできている宇宙(量子重力理論)」、「第6回講義 時間の流れを生む熱(確率と熱力学)」の6つと、最終講義の「最終講義 自由と好奇心をもつ人間」で構成されています。
……えーと、このラインナップを眺めてもらうと、ますます読む気がなくなってしまうような気もしますが(汗)、ちょっと待って、もう一度よく見て! これみんな、SFを読む時に、「たぶんその知識があれば、もっと面白いんだろうなあ(ため息)」って感じる内容だと思いませんか?
そしてなんとこの本には、難しい数式がほとんど出てきません! ほぼ数式は無しなんです(大事なことなので二度言いました)。しかも各講義とも、すぐに読み切れるほどの分量しかありません。
なのに、読んでいるうちに、これらの理論の本質的な部分が理解できていくような気がしてくるという奇跡の本なのです(笑)。もっとも、これらについて詳しく分かるというよりは、「物理とは何か」の「はじめの一歩」に導いてくれるだけとも言えますが……。それでも、この本を読むと、物理が苦手な人でも、あれ? 物理学って、なんだか面白いかも……と思えるかもしれません。
個人的にすごく面白いと感じたのは、「第6回講義 時間の流れを生む熱(確率と熱力学)」。
熱が冷めていくということは、時間の性質に大きく関わることなのだそうです。熱の移動がない場合、物理学では、未来も過去もまったく同じように考えるとか。ところが、ある現象に熱がかかわったとたん、未来は過去と異なるものになるのだそうです。例えば、摩擦がない限り振り子は永遠に動き続けますが、摩擦熱でエネルギーが奪われると、だんだんゆっくりになっていって、未来と過去が区別できるようになる……すなわち時間の流れが生まれる、と言うのです。
そして熱が冷めていくという現象は、絶対的な法則に従っているのではなく、統計的な確率で発生するのだとか。熱い物質の原子の方が運動するスピードが速いため、冷たい原子にぶつかって、自分のエネルギーを少し与える可能性の方が、その逆よりも統計的に高いからなのだそうです。
……どうです? 面白いと思いませんか?
「時間」というのは、物理学的に考察すると、すごく難しいものなのですね。物理学では、「いま」という概念に対応するものは何もないそうです。……この辺の文章を読んだ時には、なんだかゼノンの「アキレスと亀のパラドックス」を思い出してしまいました。「アキレスは永遠に亀に追いつけないって? ふーん、だったら亀をここに連れてこい。アキレスじゃないけど、私が亀を追い越して実証して見せてやるわ!」と乱暴なことを言って、小理屈ゼノンを言い負かしてやりたいと感じた時のことを……(汗)。「物理学」はすごく科学的だと思っていたけど、実は哲学の一種なのかも、と感じてしまいました。
この本を読むと、本当に「世の中ががらりと変わって見える」かもしれません。少なくとも私にとっては、すごーく遠く感じていた「物理学」の世界に、親しみを感じさせてくれた奇跡の本になりました。SFは好きだけど物理は苦手……という方には、特にお勧めします☆
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