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第1部 本

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CAPCOM eSports 「ストリートファイターリーグ」から見るeスポーツの未来

『CAPCOM eSports 「ストリートファイターリーグ」から見るeスポーツの未来』2021/11/15
CAPCOM eSports (著)


(感想)
 対戦格闘ゲーム「ストリートファイター」のeスポーツ展開に取り組んで、業界最前線を走り続けているカプコンが、現場目線からeスポーツへの取り組みについて語ってくれる初めての本です。
 なお、「eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、広義には電子機器を用いておこなう娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲームやビデオゲームを使った大戦を、スポーツ競技として捉える際の名称です。」
 さて、「カプコンを代表する「ストリートファイター」シリーズは、対戦格闘ゲームというジャンルを切り拓き、三十数年を経た今なお世界中のユーザーに戦い競う楽しさを提供し続け、支持されてきている。」そうですが、実は一時、「ストリートファイター」から遠のいていた時期があったのだとか。
「国内外問わず、格闘ゲームコミュニティが大規模な大会を実施する一方で、カプコンは逆に格闘ゲームから遠のいていた。(中略)
 というのも90年代後半から、アーケードゲーム市場は、音楽ゲームやプリントシール機がシェアを伸ばしており、「ストリートファイター」などのビデオゲーム機の人気に陰りが見えていたからだ。そこでカプコンは、商品開発の軸をアーケードゲーム市場から家庭用ゲーム市場へと移し、「モンスターハンター」や「バイオハザード」を誕生させていくことになる。」
 それでも熱心なファンがいることに押されてシリーズを継続し、さらに世界トーナメントという大規模なイベントまで開催することにしたのだとか。
「「ストリートファイター」シリーズが25周年を迎えた2012年、CAPCOM U.S.Aは「ストリートファイター25周年 世界トーナメント」と銘打ち、大規模なイベントを主催した。世界各地で予選大会を行い、サンフランシスコで決勝大会を実施するというものだ。それだけではなく、賞金総額は50万ドル、副賞としてスポーツカーがもらえるということもあり、世界トーナメント決勝には、日本、アジア、アメリカ、ヨーロッパで行われた予選を突破したプレイヤーが集結した。」
 さらに2018年には一般社団法人日本eスポーツが設立され、eスポーツ・プロライセンス制度も設けられたそうです。
 ……家庭用ゲームは好きですが、もともとゲームのセンスがあるわけではなく、アーケードゲームではすぐ惨敗するので、eスポーツにはあまり関心がなかったのですが、カプコンがいろんな戦略・戦術を駆使してeスポーツ大会を盛り上げてきたことには、とても感心させられました。
 例えば、「eスポーツの魅力の1つに「多様性」がある。それは年齢・人種・性別・ハンディキャップにとらわれず、幅広く楽しめることだ。」というeスポーツ自体の特性に反して、現実には、新作ゲームが出ても、すぐに熱狂的ファンが鬼強いプレーヤーになって下手糞な初心者の参入を快く思わなくなる……という問題についても、次のように、さまざまな対応を考えているようです。
「(前略)長年にわたり愛されてきたゲームほど、プレイヤー全体のレベルが高く、熱狂的なファンが多いことが逆に初心者には参入障壁となってしまう傾向にある。その壁を打破するにはどうすればいいのかという課題があった。(中略)
 初心者の興味を惹く新しい大会の企画検討にあたっては、議論の早い段階でCPT(CAPCOM ProTour)のような個人戦ではなくチームリーグ戦にしようという意見が出た。その背景にはカプコンなりの考えがあった。
 CPTでしのぎを削るトップ選手たちは、世界的にも人気がある。一方で、カプコンとして「ストリートファイター」を息の長いコンテンツへと成長させるためには、選手個人の人気に依存しない戦略を考える必要があった。そこで、選手を取り巻く環境を大きくすること、例えばサッカーや野球のように、選手がチームという大きな枠組みに入ることで、そのチーム全体へ注目するファンが新たに生まれるのではないかと考えたのである。」
「リーグを見る視聴者が楽しめるように考えられたのが、熟練度に応じて3つのクラス分けをし、3名1組の6チームによるリーグ戦というルールだった。」
 なるほど……。
 またコロナ禍への対応も書いてありました。コロナ禍は、eスポーツにとっては、むしろ「追い風」になったのではと勝手に想像していましたが、残念ながら、そうではなかったようです。「コロナ禍でいち早くCPTをオンライン開催」はしたようですが、次のようなさまざまな問題がありました。
「しかし、1F(フレーム)を競う「ストリートファイター」において、そもそも世界規模でのオンライン対戦は無理がある。例えば日本とブラジルとでオンライン対戦をした場合、どうしても通信遅延が起きてしまう。これはいかに技術が進歩しようとも、解決することができない光の速度の限界なのだ。」
「(前略)課題も明確になった。各地域のインフラ事情により通信遅延の影響が異なるほか、選手と連絡が取れない事態が起きたとき、その選手がいかなる状況にあるか分からないなど、オンラインでの運営だからこそ対応しきれない事態が露呈した。」
 ……ああー! 確かにそうですね! 5Gになろうが、6Gになろうが、「光の速度の限界」はやっぱり超えられないでしょう。なるほど、eスポーツだからって、「オンライン対戦」に向いているというわけではないんですね……。
 さらに、新型コロナウイルス感染症によって迫られた無観客大会・オンラインへの体制変更なども詳しく紹介してくれています。
 そして、この本では、いかにeスポーツをビジネスにしていくか、についての努力も読むことが出来ました。
「eスポーツがビジネス面において1マーケットとして成り立つには、いかにeスポーツに関わる企業を増やせるかが重要だ。」
 そこでSFL(ストリートファイターリーグ)には、チームオーナー制を導入したそうです。本書の後半を占める「第5章 SFL参加チーム インタビュー」では、SFL:Pro-JP 2021に参画するチームオーナー8社の取り組み(他業種企業のeスポーツビジネス参入におけるポイント、チーム運営方針など)を具体的に知ることが出来ます。
 さらに、「第6章 カプコン社長・辻本春弘インタビュー」では、ゲーム業界とeスポーツのこれまでを振り返りつつ、カプコンがこれから目指す展開など、eスポーツの未来についてが熱く語られていました。
 eスポーツの歴史や現状、そして未来までが網羅され、とても読み応えがある本でした。ビジネスとしてeスポーツへの参入を検討している方はもちろん、eスポーツファンの方もぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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