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第1部 本

数学・統計・物理

意味がわかる統計学(石井俊全)

『まずはこの一冊から 意味がわかる統計学』2012/1/1
石井 俊全 (著)


(感想)
 統計ソフトが計算してくれる推定・検定の背景の理論を知りたい。推定・検定を仕事で使っているけれど、結論の意味していることが実は理解できていない……そんな人のために、推定・検定の背景にある原理を、難しい数式や確率変数の概念を使わずに図像を使って分かりやすく説明してくれる本です。
 特に「第1章(相対度数分布グラフ、平均、分散・標準偏差、サンプルXの相対度数分布グラフ、正規分布、推定の考え方、検定の考え方)」は、統計学の基礎の復習が出来るだけでなく、推定や検定の考え方を分かりやすく教えてくれていて、とても勉強になりました。
 例えば、「正規分布が持っている素晴らしい特徴」として、「再現性(正規分布は2つを重ね合わせても分布の形が保存される)」ことと、「中心極限定理(もとの資料の分布の形によらず、十分な個数のサンプルの平均の相対度数分布は正規分布に従う)」ことの2つが上げられていましたが、とりわけこの「中心極限定理」の特徴が、統計学において「正規分布」を重要なものにしているんだなーと理解できました。
 また「推定の考え方」の「部分を見て、全体の様子を知る方法」の例、「味噌汁を味見するときのことであれば、味噌汁全体が母集団、口に含んだ知るが標本なのです。」という表現が、すごく分かりやすかったです。確かに……味噌汁の味見をするときは、一口確かめるだけで、ほぼ全体の味が確認できますし、味見のために全部飲んでしまったら、味噌汁を誰にも出せませんよね(笑)。
 そして「検定の考え方」の「部分から全体の特徴を判定しよう」。ここでは、日本の街を歩いていて、むこうから身長2メートルの人が歩いてきたら、たぶん外国人だろうと推定するという例があげられていました。これは、日本人の身長の分布をすでに知っているから出来ることで、2メートル以上の背丈の人は、日本人全体の5%以下(有意水準5%以下)だと直感的に判断(検定)していることになるようです。
 こんな感じで、統計学の基礎やその意味を、分かりやすく解説してくれる本でした。後半には、相関係数や回帰直線の求め方に関する説明もあります。
 最近は、統計的計算をエクセルなどのコンピュータ・ソフトがやってくれるので、原理や意味が分からなくても、なんとなく計算結果(統計的分析結果)は出せますが、原理や意味が分かっていたほうが、より深く正しいデータ分析が出来るような気がします(この本の付録にも、「エクセルで統計量を計算しよう」という解説があります)。
 統計学を学びたい、学び直したいと思っている方は、ぜひ読んでみてください。
 ※なお、この本の2012年初版版は、270ページと271ページの間に抜けがあるようで、残念ながら「F分布」の説明が途中で中断しています。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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