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第1部 本
歴史
会計の日本史(大村大次郎)
『会計の日本史 その時“お金"が歴史を動かした!』2020/12/20
大村大次郎 (著)
(感想)
大化の改新、鎌倉幕府の誕生、応仁の乱、戦国時代の終焉、明治維新、太平洋戦争、高度成長時代、失われた30年……帳簿から見えてきた、「あの大事件」の真相。元国税調査官が読み解く『会計の日本史』です。
タイトルが『会計の日本史』だったので、きっと面白くないんだろうなーと全く期待していなかったのですが……予想以外の面白さがいっぱい詰まった本でした☆
「はじめに 歴史大事件を「見える化」する会計的視点には」には、次のような記述がありました。
「室町時代の足利将軍というのは、金閣寺や銀閣寺を建立するなど、非常に裕福だったイメージがあります。しかし、実際の室町幕府の財政状況を見てみると、日本の歴代政権の中ではもっとも貧弱なのです。
直轄領は非常に狭く、これといった大きな財源もない。部下であるはずの守護たちの方がよほど広い領地を持ち、財力を蓄えていました。そのため室町幕府は財源不足により軍事力を確保できず、戦乱が起きても収拾することができませんでした。それが応仁の乱を引き起こさせ、戦国時代につながっていくのです。」
……そうだったんだ! 会計の視点から、長く続く平和や戦乱を読み解けることに驚きましたが……考えてみれば、戦争には大金がかかるものだし、社会(歴史)は常に「お金」で動いているものですよね。
個人的に一番興味津々だったのは、「第1章 大和朝廷は会計力で国を統一した」。古代の日本は想像以上に「しっかりした進歩的会計体制」をもっていたようです。「大化の改新」は、今の日本の社会システムの原型をつくったのだとか。
「日本で全国的な国土調査が行われたのは、有史以来3回しかないとされています。
豊臣秀吉の「太閤検地」、明治維新期の「地租改正」、そして「大化の改新」です。」
……そうか、あの「班田収授の法」や「租庸調」は、しっかりした国土調査に基づいて行われていたんですね。
驚いたのは、古代日本で各地の行政を行っていた中央役人の「国司」が、「大計帳(戸籍関係)」「調帳(特産品物品リスト)」「正税帳(租税収支報告書)」「朝集帳(行政全般報告書)」という四つの会計報告を毎年、中央政府に行っていたということ! 凄い……もっとも、これらのシステムは、国司たちの怠慢や不正会計でしだいに形骸化していくとともに一部の貴族だけが栄えるようになり、やがて朝廷の権威が低下するとともに中央貴族の権力も低下していき、武家勢力が台頭することになっていったとか。
そして続く「第2章 坊主と武士は勘定に強かった」もとても興味深かったです。
宗教家と武士というのは、お金に淡泊なイメージがありましたが、全然そんなことはなかったようです。やっぱりお金があるものが強いんですね……。
そして「第3章 戦国時代の会計革命」では、「戦国時代に、貨幣制度、度量衡などの会計の基本がいくつも成立した」ことが語られ、会計制度の先鞭をつけた織田信長の先見性を、豊臣秀吉が継承・発展させ、徳川家康が洗練・完成させたことを知ることが出来ました。彼らは「会計」の視点からも有能だったんですね……。
「第4章 江戸時代の優れた会計官たち」では、「天下普請(国家のための土木、建設事業などを諸大名に命じるもの)は、天下人が諸大名から間接的に税をとる方法でもあった。」とか、「貨幣改鋳益が江戸幕府の主財源になっていった」などを知ることが出来ました。
さらに「第5章 明治維新の収支決算」では、「大政奉還の時には、朝廷の金庫は空っぽだった」とか、「旧幕府軍も新政府軍も金欠病で、鳥羽・伏見の戦いは、新政府軍の勝利に終わった後、しばらく沈黙することになった」とか、「江戸の無血開城は、実は官軍の戦費不足が要因のひとつ」とか、興味深い歴史が紹介されていきます。なるほど、そうだったんだ……「会計の視点」から見ると、どうしてこのような歴史になったのかに、納得がいきますね☆
この後も「第6章 会計から読み解く戦前社会」では、渋沢栄一、財閥、満州事変などが取り上げられ、さらに「第7章 高度成長とバブルの会計事情」、「第8章 平成“失われた30年間"の会計内容」まで、古代から現代までの日本の歴史を、税制、支配者階級の財政事情、経済・財政政策などの会計的な視点で、読み解かれていきます。こういう視点で歴史を読み解くことが出来るんだ、とすごく勉強になりました(もちろん、ここで紹介したのは、内容のごく一部に過ぎません)。
『会計の日本史』というと、すぐに各藩の複式簿記とかが連想されて、読みにくい内容なんじゃないかと敬遠してしまいがちではないかと思いますが、「簿記」的な内容ではなく、すごく分かりやすい表現で、歴史的な事実を会計的視点で読み解いてくれるので、読み物として、とても面白いし勉強になると思います。歴史に興味のある方はもちろん、ビジネスマンの方も、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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