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第1部 本
教育(学習)読書
竹内薫の「科学の名著」案内
『竹内薫の「科学の名著」案内 文系でも面白い! 世の中の見方が変わる90冊! 』2020/2/28
竹内薫 (著))
(感想)
科学ナビゲーターの竹内薫さんが紹介してくれる「科学の名著」案内書です。理系の本の紹介本は少なくて貴重な上に、案内してくれるのが竹内さんなら、絶対間違いなし! わくわくしてしまいました。内容は次の通りです。
1地球環境を考えるヒントに
『ソロモンの指輪』(コンラート・ローレンツ)
『沈黙の春』(レイチェル・カーソン)
『ガイアの復讐』(ジェームズ・ラブロック)
『第6の大絶滅は起こるのか』(ピーター・ブラネン)
2奇妙で風変わりな科学者たちの世界
『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(リチャード・P・ファインマン)
『二つの文化と科学革命』(C・P・スノー)
『世界を変えた50人の女性科学者たち』(レイチェル・イグノトフスキー)
3これは読まなくていい! 誰もが知っている科学の古典
『プリンシピア 自然哲学の数学的原理』(アイザック・ニュートン)
『天体の回転について』(ニコラウス・コペルニクス)』
『種の起源』(チャールズ・ダーウィン)
4宇宙や未来を拓く物理の世界
『ニュートリノ天体物理学入門』(小柴昌俊)
『四次元の冒険』(ルディ・ラッカー)
『踊る物理学者たち』(ゲーリー・ズーカフ)
5学校では教えてもらえない本当の数学の世界
『統計でウソをつく法』(ダレル・ハフ)
『数学は世界を変える』(リリアン・R・リーバーなど)
『素数に惹かれた人たち』(ジョン・ダービーシャー)
6もっともっと科学書を楽しもう
(日本経済新聞「今週の3冊」より74冊)
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驚いたのは、「3これは読まなくていい! 誰もが知っている科学の古典」という章があったこと! しかも、どれも人類史に大きな影響を与えた3冊なのですが、『プリンシピア』は、「あまりにも分厚く、あまりにもいろいろなことが書かれていて、さらに、全部が数学所の形式」だからだそうです。ただし「中学高校までで教わる数学の幾何学が全部できれば、ほぼ読むことが出来ます」という内容ではあるそうですが……これに関してはもっと分かりやすい本がたくさん出ていて、それを読んだ方がいいということで、『プリンキピアを読む』(和田純夫)が紹介されていました。
また『天体の回転について』でも、『誰も読まなかったコペルニクス』(オーウェン・ギンガリッチ)が勧められていて、『種の起源』では、『新版・図説 種の起源』(リチャード・リーキー編)や『ビーグル号航海記』(チャールズ・ダーウィン)が勧められていました。『天体の回転について』や『種の起源』は読んでもなかなか分かりくいようですが……これらは教会との対立が容易に予想できるなかで書かれている本ですから……そもそも分かりやすく書くことが出来なかったのでしょう(命に危険がありましたから)。
他の章では、ジャンルごとにお勧め本の概要と感想が書いてあります。理系の本も好きなので、読んだことのある本も含まれていましたが、もちろん未読の本もたくさんあって俄然読みたくなってしまいました。
例えば『第6の大絶滅は起こるのか(ピーター・ブラネン)』。
地球では、過去5億年くらいの間に多種類の生物が同時に絶滅する大量絶滅が5回起きています。そのうちの5回目の白亜紀(6600万年前)の恐竜絶滅に関しては、隕石が地球にぶつかって気候変動が起きたというのが、ほぼ定説になっているようですが、他の4回は地球温暖化が関係しているようです。
過去最大の大量絶滅はペルム紀末のもので、全生命の90%以上がわずか20万年足らずの間に消えてしまたのだとか。その原因について、『第6の大絶滅は起こるのか』から次のような文章が引用されていました。
「二億五二〇〇万年前にロシアを、そして世界を荒廃させた噴火は、現代ではくらべるものがないほど大規模なものだった。(中略)ペルム紀の早い時期にあった大規模な中国の火山活動と同様、いわゆるシベリアトラップ(注・ロシアの大規模な火山帯のこと)は私たちが知っている噴火とはまったく異なる形式の噴火によって、しかも想像を絶する規模で生まれた。(中略)シベリアトラップの噴火は「大陸洪水玄武岩」として知られるものだ。その言葉通り、溶岩の洪水が大陸全体を覆いつくし、驚くほど(地質学的尺度で)短い時間のうちに数千メートルの厚さに積み重なっていく。」
……うわー。そして竹内さんは次のように書いています。
「(前略)ペルム紀末の地球史最悪の大量絶滅と同じ炭素放出を、今、人類は猛スピードで行っている可能性が高いのです。」
……うっ……。
この本を読んでみようと決意させられました。
また1968年発行の少し古い本ですが、ここでも紹介されている『統計でウソをつく法』は必読です。学校の先生に勧められて私も学生時代に読んだのですが、「統計」では、とても簡単にウソをつけることを知って、すごく衝撃を受けたことを覚えています。なにしろ当時は、「数学には正解が必ず一つある」「数学に曖昧さの入り込む余地はない」と固く信じ込んでいたので、もちろん「統計(=ほぼ数学だと思っていた)」でウソをつくことなど出来ないのだと勝手に思い込んでいたからです。
でも「統計」は、計算処理部分は間違っていなくても、対象とするデータの部分や、どんな統計処理をするか(計算式を使うか)の選択部分で、いくらでもウソをつけるものだったのです。この本でそれを知ることが出来たことは、私にとって人生の財産の一つになりました(笑……ちょっと大げさ)。理系の方にとっては、おそらく常識なのだとは思いますが、統計学を使わない分野の文系の方には、意外かもしれません。ぜひ読んでみてください。
えーと、この他にも、面白そうな本がいっぱい☆
詳しく紹介されている本はもちろん、「6もっともっと科学書を楽しもう」で短く紹介されている本にも、『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』に始まる「鳥取環境大学」の森の人間動物行動学シリーズなど、どうして今まで知らなかったんだろう、と不思議に思えるほど、楽しくて勉強になりそうな本が多数紹介されていました。……というか、あまりにも多すぎて、内心、嬉しい悲鳴でいっぱいです……どれから読み始めたらいいんだ、他にも読みたい本がいっぱいあるのに……(泣)
とても面白くて参考になる『竹内薫の「科学の名著」案内』。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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