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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

日本列島の「でこぼこ」風景を読む(鈴木毅彦)

『日本列島の「でこぼこ」風景を読む』2021/4/14
鈴木 毅彦 (著)


(感想)
 日本列島を高い空から眺めることから始まって、その「でこぼこ」な山々、火山、水、海岸線がどのようにしてつくられてきたのか、地学全般の知識を駆使して「風景を読む」ことを教えてくれる本です。
「第1章 高い空から眺める日本列島のかたち」では、日本列島がなぜ弓なりになっているのかという疑問に、すごく明快な回答が与えられていました。それは地球が「球体」だからだそうです。球に圧力をかけて凹ませると、そのふちが弓なりになる……なるほど……ここで「圧力」をかけているのは、日本列島の下の「プレート沈み込み帯」に原因があるそうです。
 そして日本列島の「でこぼこ」をつくる原動力も、この「プレート沈み込み」。次のように書いてありました。
「太平洋プレートとフィリピン海プレートは、北米プレートやユーラシアプレートの下に潜り込むような動きになっているわけです。じつは一部、伊豆半島のつけ根から富士山付近では、フィリピン海プレートが沈み込めず、本州側に衝突しています。そのことがまたいろいろな地学的な大変動を起こします。
 じつはこの沈み込み帯・衝突帯の活動が、日本列島の形成にも、直接大きな影響を及ぼしてきたのです。わかりやすい例でいうと、山の形成や火山の噴火などです。(中略)
 この力が日本列島の「でこぼこ」をつくる原動力となり、地殻変動を引き起こし、山や平野をつくりだしているのです。とくに山と平野の間には活断層が存在することが多いのですが、この活断層の動き方はこの力によって決まるのです。
 また、これとは別のメカニズムによる火山活動も活発です。いろいろな変動が起きますので、このような場所は変動帯ともよばれています。」
 そして「第2章 日本の風景はどのようにしてできたのか」以降は、山や平野の成り立ちや、火山や水、海がどのように風景を変えてきたかなど、実際の日本の地形を例に、具体的に教えてくれます。
 例えば、日本の山の写真でよく見かける「稜線の片側はなだらかなのにその反対側は切り立った断崖という非対称になっている(非対称山稜)」地形、たとえば谷川岳や白馬岳は、日本の降雪が「西高東低の冬型気圧配置」の時期に集中していることにあるそうです。
「この時期、北西からの強い季節風が吹きつけますが、季節風が吹きつける西側風上側斜面には、強風によりあまり雪は積もりません。」
 山の東側斜面には雪が積もって、それが断熱材になるけれど、西側斜面では雪が少なくて氷が岩を削って、岩屑がダラダラ流れて平滑な斜面をつくる……このため東が急斜面、西が緩斜面になるのだとか……なるほど!
 こんな感じに、日本列島の「でこぼこ」風景の成り立ちを知ることで、「風景を読む」……地学好きには本当に興味津々な内容が満載です。
 例えば、秋田県象潟、磐梯山五色沼周辺、島原の九十九島などで見られる「流れ山地形」。火山の山麓に、古墳くらいの大きさの丘が辺り一面に散らばる風景のことを言うそうですが、この美しい風景は、実は惨劇の跡なのでした……これは、近くの火山が大崩壊して、一気に崩れてきた土砂が丘になったという火山大崩壊の痕跡なのだそうです。……現地でのんびり「絶景」を楽しんだことがありましたが、そうだったんだ……(絶句)。
 日本列島は「プレート」が4つも集まったところに位置しているために、小さな国土なのに「でこぼの」の変化に富んだ地形……3000m級の山脈から人の住む里山、火山、谷、川、湖沼がある……これらの美しい風景は、「プレート」にぎゅうぎゅう押されることが主な原因になっているんですね……そしてその「プレート」は、いまも日本列島をぎゅうぎゅう押し続けているのです……(怖)。
 今では、このように「動き続けている日本列島」の動きを精密に計測できるようになっているようです。日本各地には約1300の電子基準点があって、人工衛星からの電波をキャッチし、その正確な位置を計測しています。電子基準点は、その設置された位置が移動した場合、その移動量をセンチメートル単位で知ることができる……この本で、2006年~2016年の動きを表示した地図を見ると、本当に「動いて」いるんだなーと実感させられました。今後は、この計測が地震予測などの災害防止に役立っていくといいなと思います。
 とても興味深くて勉強になる『日本列島の「でこぼこ」風景を読む』本でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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