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第1部 本
自己啓発・精神力
なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?(久世浩司)
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか? 実践版「レジリエンス・トレーニング」』2014/10/31
久世 浩司 (著)
(感想)
長時間労働、嫌な上司、思いやりのない職場、キャリアの節目……ストレスや困難、失敗などの逆境を乗り越える力「レジリエンス」の実践トレーニングを19の事例とともに紹介してくれる本です。
「レジリエンス」のある人には、次の3つの習慣があるそうです。
習慣1:ネガティブ連鎖をその日のうちに断ち切る(底打ち)
習慣2:ストレス体験のたびにレジリエンス・マッスルを鍛える(立ち直り)
習慣3:ときおり立ち止まり、振り返りの時間をもつ(教訓化)
*
この3つの習慣を身につけるようにすることで、自らのレジリエンス力を鍛えられるのです。
「序章」では、「レジリエンス・トレーニング」の基本、レジリエンスを鍛える7つの技術を解説してくれます。
1)ネガティブ感情の悪循環から脱出する
2)役にたたない思い込みを手なずける
3)「やればできる」と信じる「自己効力感」を身につける
4)自分の「強み」を活かす
5)心の支えとなる「サポーター」をつくる
6)「感謝」のポジティブ感情を高める
7)痛い経験から意味を学ぶ
*
ここでは項目のみを紹介していますが、本の中ではもちろんもっと詳しい実践的なトレーニング法があります。
例えば「役にたたない思い込みを手なずける」では、「7種類の思い込み犬」という面白い方法があることを知りました。それは、「ネガティブ感情の原因となる主な思考パターンを7種類の思い込み犬(批判犬、正義犬、負け犬、諦め犬、心配犬、謝り犬、無関心犬)に分類する」ことで、自分の心の中のネガティブ感情について、「思い込み犬がいつの間にか棲みついてワンワン吠えているだけ」と考えるというもの。そうすると気持ちが楽になり、犬への対処法(追放、受容、訓練)も出来るようになるそうです。
そして1章から5章では、この3つの習慣を活かしていく19事例が紹介されます。
例えば「事例2 アンガーマネジメントをする怒りっぽい社長」では、早足散歩という方法が紹介されていました。
「早足散歩は、スピーディーに歩くことのエクササイズ効果に加え、呼吸の乱れを正す作用も兼ねた、運動系と呼吸系を合わせた素晴らしいネガティブ感情の気晴らし法です。(中略)
会議で不満や苛立ちを感じられたときに、「ちょっと休憩にしよう」と言ってしばらく外を散歩する習慣を取り入れただけで、怒りの感情がコントロール可能なレベルにまで落ち着き、会社全体が明るくなったのです。」
……これは、とてもいい方法ですね!
そして、とても印象に残ったのが、「事例11 私が出会ったレジリエンス・リーダー」。ここでは久世さん自身の体験が綴られていました。当時、久世さんが勤務していたP&Gは、事業が苦戦し落ち込んでいたそうですが、Jさんという新しい事業部長が、それをV字回復させたそうです。
Jさんは赴任してすぐ、久世さんとの1対1ミーティングで次のように言いました。
「仕事で何か困ったことがあったら、問題を自分だけで抱え込まずに、躊躇することなく私の助けを求めることです。そのために覚えておいてほしいマジックワードが『I Need Your Help』です。もし助けが必要なときには、必ずこの言葉をメールのタイトルにわかるように書いてほしい。そうすれば、私がどれだけ忙しくても、最優先でそのメールに目を通します。そして、即座にその問題の解決のためのアクションをとるか、適切な人に私の代わりに助けを依頼します。(中略)
事業部長としての私の一番の大切な仕事は、あなたたちが能力や強みをフルに発揮して、仕事に貢献できる環境をつくることです。なぜなら、私が自分の手で直接できることは限られているからです。私の業績のほぼ全ては、あなたたちを通して達成されるものだからです。(中略)
私には予算や人材のリソースや豊富な経験があります。柔軟に解決できる自由度も大きいのです。予想以上に迅速に解決できることが多いのです。(中略)
そしてクゼさんも私と同じように、あなたの部下に同じ態度を示してほしい。何か困ったことがあれば、自分で抱え込まずに、まずは報告してほしいと伝えてください。」
……その後、事業部の文化が一気に変容し、助け合いのある風土が生まれたのだとか。
もちろん久世さんも、同じように部下に『I Need Your Help』して欲しいと伝えたのですが……部下に伝えた翌日から、『I Need Your Help』がどんどん届くようになって、驚くと同時に反省させられたそうです。うーん……なかなか大変ですが、これって、とても大事なことですよね。
「上司との人間関係ストレス」とのつきあい方、「思いやりのない職場」での過ごし方、キャリアの節目での「逆境力」……仕事をしていると陥りがちなストレス状況への対処法と、「レジリエンス」の鍛え方を実践的に教えてくれる本でした。現代社会はストレスに満ちているので、「レジリエンス」は、今後もとても重要なスキルになると思います。ぜひ読んでみてください。何かヒントをつかめるかもしれません。
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