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第1部 本
地質・地理・気象・地球環境
チバニアン誕生(岡田誠)
『チバニアン誕生: 方位磁針のN極が南をさす時代へ』 2021/6/9
岡田 誠 (著)
(感想)
新たな地質年代「チバニアン」が生まれるまでのノンフィクションです。
千葉県市原市にある地層「千葉セクション」に、およそ77万年前に地球の磁場が逆転したことを示す手がかりが残されていた……地層に刻まれた痕跡から太古の地球のすがたを考える地質学の魅力に迫るとともに、「千葉セクション」の日本初GSSP(国際境界模式地)決定に至るまでのドラマを語ってくれる本です。(なおGSSPとは、年代AとBの境目を世界で一番よく観察できる地層の断面(崖の面)のこと、だそうです。)
「はじめに」には、次のように書いてありました。
「今回(国際会議で)決まったチバニアンとは、「千葉時代」を意味する世界共通のことばだ。46億年にわたる地球の歴史のうち、77万4000年前~12万9000年前の時代をさす。千葉セクションGSSP提案チームの代表となった僕のもとに34名の科学者が集まり、地層を丹念に調べて研究を続けてきた。そしてその地層が約77万年前の地球で起こったいろいろなできごとの痕跡を、世界でもっともよく残していることが認められたのだ。なかでも一番重要とされたのが、地球のN極とS極がひっくり返ったことを示す地磁気逆転の痕跡だ。」
初めて「地磁気逆転」のことを知った時には、地球にそんな時代があったなんて! と凄く衝撃を受けましたが、その痕跡が世界一よく分かる場所が日本の千葉にあったなんて……驚きです。地磁気逆転の時には、いったい何が起こるのか? いろんな疑問を抱いていたのですが、この本でその一部の答えを知ることが出来ました。
例えば、地磁気逆転は場所によってバラバラに起こるのか? については……
「地磁気の逆転とは、地球のN極とS極が入れ替わる現象だ。そのとき、方位磁針のN極がさす方向が、南から北へと移り変わった。この変化は地球上のどの場所にいても、同時に起こる。だから、地層に残された地磁気の痕跡から地磁気の逆転を読みだすことができれば、その地層が世界のどの場所にあったとしても、同時にできた地層だということがわかるのだ。」
また何回ぐらい起こったのか、どれくらい続くのか、については……
「地磁気逆転は過去600万年間で少なくとも22回も起こっている。平均すると27万年間に1回のペースだ。しかし逆転が起こる間隔は、氷期-間氷期サイクルに見られたような一定のリズムは見られない。たとえば、松山逆磁極期のなかには短い磁極期がたくさんあるが、77万年間続いているブルン正磁極期のなかでは逆転は一度も起こっていない。一つの磁極期の長さは、数万年間の場合もあれば、数十万年続く場合もある。そして、地磁気の逆転そのものは数千年間で終わり、次の磁極期へ移りかわる。チバニアンで観察された地磁気逆転の痕跡からは、地磁気の向きは2000年ほどで逆転が完了する一方、地磁気の強さは1万年くらい弱かったことがわかっている。地磁気逆転では、地磁気の向きが逆になるだけではなく、地磁気の大きさ(強さ)が大変弱くなるのだ。地磁気逆転が起こったとき、地球上では何が起こったのか。くわしいことはまだわかっていないが、チバニアンの地層をさらに調べることで明らかになる日もくるだろう。」
……そうだったんですか。やっぱり逆転する前には地磁気の大きさは弱くなるんですね。
そして、この本で一番驚かされたのは、次の事実。
「今、地磁気の強さは急速に弱まっている。あと2000年たつと磁場がなくなってしまうくらいの速さだ。」
えええ! マジですか!
地磁気が逆転すると、地磁気バリアが弱まるため、太陽風が直接地球の大気にぶつかって、世界中でオーロラが見られるようになるそうです。それは嬉しい気がしますが、太陽風のせいで、人工衛星が壊れたり停電が起こったり、携帯電話やインターネットが頻繁に使えなくなったり、オゾン層が薄くなって紫外線がたくさん降り注いでくるというのは……すごく困ります……。
「でも幸いなことに、地磁気の逆転で生物の絶滅が起こったという痕跡は、これまで地層からは見つかっていない。」と書いてはありましたが……。うーん、海中都市を建設する方法を真剣に考えるべきなんでしょうか……。
そんな妄想を抱かされるほど、地磁気逆転についても詳しい解説がありました。
この本は、青少年向けに書かれているようで、説明がとても分かりやすいですし、冒頭には千葉県市原市の地層「千葉セクション」などのカラー写真も掲載されていて、とても読み応えがありました。
「チバニアン」が教えてくれることや、イタリアの他の二候補を退けて日本の地層がGSSPに決定され、新たな地質年代「チバニアン」が生まれるまでの経緯の詳しい紹介もあり、理系の研究者の方にとっても参考になるのではないかと思います。
とても興味深い内容が満載で、面白いだけでなく、勉強にもなる素晴らしい本でした。理科系(とりわけ地学)が好きな方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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