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第1部 本
防犯防災&アウトドア
防災
マンガでわかる災害の日本史(磯田道史)
『マンガでわかる災害の日本史 (池田書店のマンガでわかるシリーズ)』2021/2/12
磯田道史 (著), 河田惠昭 (監修), 備前やすのり (その他)
(感想)
地震、津波、噴火、台風、土砂崩れ、感染症、歴史的災害にまつわる古文書を歴史家の磯田さんが読み解き、災害のしくみ、避難方法を災害の専門家の河田さんが詳しく解説してくれる本です。
古文書に基づいて、当時の人たちがどのように被災し、どのように復興を果たしたのかを伝えることで、その災害を今に甦らせると同時に、今の私たちにも、そこから学べる役に立つ教訓や防災対策を教えてくれます。
この本の面白いところは、古文書をただ読み解くのではなく、実際にその時代の災害に遭遇するマンガがまずあって、その後に文章での詳しい解説があること。
マンガは、東京の上野公園で西郷隆盛像を見学していた小学6年生のミチくんとマリちゃん、その担任の頼母(たのも)先生の3人が、西郷隆盛像の犬の像とともに、いろんな時代にタイムスリップして災害に遭遇するという設定になっています。犬の像はタイムスリップとともに生き返って(?)、歴史の蘊蓄を日本語で教えてくれる不思議な案内人になります(笑)。
地震、津波、噴火、台風などのテーマごとに、まずマンガでその時代にリアルに起こった災害がどんなものだったか、自分たちが実際にこんな災害に遭遇してしまったら、何をすべきかが描いてあります。このマンガ部分だけでも、日本がどんな災害にみまわれてきたか、そんな時、自分たちは何をすべきかの概要が、ほぼ分かるようになっています。
マンガの後には、同じぐらいのページ数で、文章による説明があり、例えば日本で発生した大地震の一覧表とか、地震で地形が変わってしまったこともあるとか、身の回りのキケンのチェックの仕方、対処の仕方などがイラストとともに詳しく解説される、という構成になっています。
だからこれは普通の防災漫画ではなく、日本で起こった災害をリアルに感じられるとともに、過去の人たちはどう対処してきたかとか、今の私たちはどうするべきかとかを、歴史とともに学べるという、とてもオイシイ防災&歴史のマンガの本なのです☆
例えば「第1章 地震の日本史」では、「地震の時は「3ない」、つまり「落ちてこない/倒れてこない/移動してこない」ところへ逃げるのが鉄則」とか「固定できるものは固定する。固定できないものの下で寝ない」などの教訓の他、「クラッシュ症候群」のような情報も学ぶことが出来ました。クラッシュ症候群とは、「手足や腰などがガレキなどに長時間はさまれ、筋肉が傷つくと、圧迫から解放されたときに、傷ついた筋肉からカリウムなどが全身の血液中に流れ出し、失神や心停止を引き起こす。死に至るケースが多い」というもので、地震で家具などの下敷きになっている人がいても、すぐに引っ張り出そうとはしてはいけないそうです……こんな時には、一刻も早く出してあげたいと思ってしまいそうですが、ガレキを急にどけてもいけないのだとか……。
また「第2章 津波の日本史」には、もちろん2011年の東日本大震災ものっています。あの震災での死者の9割はなんと「水死」だったそうです。実を言うとあの時まで、私自身の「津波」のイメージは「凄い高さで押しよせてくる波」でしたが、津波の恐ろしさはそれどころではなく、波には「まきあげた海底の泥やヘドロ」が含まれていて黒く、さらに第二波からは、第一波で破壊された家屋などのガレキが混じって……津波でどんどんガレキが押し寄せてくる映像は、本当にショッキングでした……津波からは、とにかく一刻も早く逃げるしかありません……。
また津波は、必ずしも大地震をともなうものばかりではないようです。1896年の明治三陸大津波の時は、「震源が三陸沖約200キロメートルと遠く、沿岸部の揺れは震度2~3程度だったと小さかった。そのため、大多数の人は避難できず、大津波に飲まれた。」そうです。……こんな津波もあるんですね……とにかく遭遇したくないです……。
そしてこの本の中で一番驚いたのが、「第4章 台風・水害の日本史」の次の記述。
「(前略)「東京、横浜、名古屋、大阪、博多といった都心駅は水没」と断言するとおどろかれるかもしれない。実は、大きな駅を建設するときは市街地に近く、人が住んでいない場所が選ばれる。そんな便利は場所なのに人が住んでいない理由は、雨が降れば浸水する低地だからだ。事実、1999年の豪雨でJR博多駅周辺が水没し、地下室に閉じ込められた人が亡くなった。」
えええ! そうだったんだ……確かに、「市街地に近くで便利なのに人が住んでいない」場所なんて、危ない場所ぐらいしかないかも……東京駅や大阪駅が危ない場所だなんて、思ったこともありませんでした……。もっとも今は埋め立て地の拡大、防波堤や排水路の整備などで、昔よりは安全性が高まっているのだとは思いますが……。
そして「第7章 防災・減災や復興を読み解く」では、過去に巨大な高潮におそわれたことがある静岡県袋井市に作られた「命山」の写真を見ることが出来ました。これは江戸時代に防災のために築かれた命山にならって、現代の技術で作られた「人びとが高潮から避難するための人工の丘」なのですが……なんかこれ、古墳にそっくりなんです! もしかしたら古墳は、これとまったく同じ機能も果たしていたのかも、と妄想が膨らみました。古墳は水田地帯などの近くにあることが多いし、水田地帯はたいてい水害に襲われやすい場所にありますよね……もしかしたら古代人が川の氾濫から身を守るための避難場所だったのかも……。(これは、ただの妄想なので、もちろんこの本にはこんなことは書いてありません。)
日本の災害の歴史と防災を、マンガで学べる本でした。とても勉強になるので、ぜひご家族みんなで読んでみてください。お勧めです☆
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