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第1部 本
生物・進化
Newton大図鑑シリーズ 生物大図鑑(田沼靖一)
『Newton大図鑑シリーズ 生物大図鑑』2021/3/31
田沼 靖一 (監修)
(感想)
どのようにしてさまざまな種類の細胞ができるのか? 地球上の多様な生物の進化はどのようにおきるのか? 生物学の世界をフルカラーのイラストで詳しく説明してくれる『生物大図鑑』で、内容は次の通りです。
0 生物界の入り口
(生物学とは、ティンバーゲンの四つのなぜ、系統樹、分類と学名のルール、3ドメイン、ウイルス、COLUMN 分子生物学)
1 細胞の世界
(細胞とは、細胞膜、真核細胞、細菌と古細菌、呼吸、ATP、発酵、化学合成、シグナル伝達、細胞分裂、細胞死)
2 個体のしくみ
(卵と精子、受精、分化、発生、ホメオティック遺伝子、循環、血液、免疫、恒常性、神経細胞、ホルモン、栄養と消化、植物の体、COLUMN 生得的行動と学習)
3 遺伝と遺伝子
(遺伝とは何か、メンデルの法則、染色体、体細胞分裂と減数分裂、DNA、構造と塩基対、セントラルドグマ、転写とmRNA、スプライシング、コドンと遺伝暗号表、遺伝子の発現調節、タンパク質と酵素、ゲノム、COLUMN PCR法)
4 生殖と性
(生殖とは、無性生殖、有性生殖、性決定、SRY 遺伝子、性転換、なぜ性が進化したのか、COLUMN 遺伝子組換え蚊)
5 進化の原理
(進化とは、ハーディ・ワインベルグ平衡、突然変異、自然選択、性選択、遺伝的浮動、遺伝子の流動、ダーウィンの『種の起源』、適応放散、遺伝子ファミリー)
6 生物の社会
(群れ、認知と問題解決、配偶システム、なわばり、包括適応度と血縁選択、栽培・牧畜、送粉と種子散布、相利共生・片利共生、寄生、植物の環境応答、生態系、生物多様性、温暖化、絶滅のうず、COLUMN 地下生物圏)
7 生命の歴史
(化学進化、細胞の起源、RNA ワールド仮説、シアノバクテリア、細胞内共生説、カンブリア爆発、大絶滅と繁栄、人類)
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生物学の概要を総合的に学ぶことが出来る大図鑑で、巻末には「基本用語解説」、「索引」もついています。
たとえば「分化:受精卵がすべての細胞の「もと」」では、分化の方向づけが、主に「ヒストンの修飾」と「DNAのメチル化」という二つのメカニズムによるものであることが書かれていました。この二つの用語、生物学の本にはよく出てくるのですが、実は私、正確な意味を知らないまま読んでいたのです。
「ヒストン修飾:「ヒストン」とは、核の中にあるDNAを巻きつけておくタンパク質のこと。ヒストンがある種の化学的変化を受けることを「ヒストン修飾」とよぶ。ヒストンが修飾を受ける結果、DNAがきつく巻きつけられたままになり、そこにある遺伝子が読みだせなくなるのだ。」
「DNAのメチル化:DNAの4種類の塩基ATGCの一つであるC(シトシン)に、メチル基が付加される現象。メチル化されたDNAは、遺伝子としての機能を失う。たとえば皮膚細胞に分化すると、皮膚細胞に必要のない遺伝領域のDNAがメチル化されていく。」
……そういうことだったんですか。
また「転写とmRNA」では、「RNAポリメラーゼ」というタンパク質が、DNAの紐をほどきながらDNA情報を読み込んでmRNAを作っていく様子が、まるで機械のVTRみたいで、細胞内でこんな機械みたいに精密な動きをしているなんて凄い……という驚きのイラストを見ることができましたし、その次の「スプライシング」では、mRNAから不必要な情報を取り除いて必要な部分だけ「編集」される様子が、やっぱりVTRの編集みたいで、すごく興味深く感じました。こうやってDNAが読み取られて、私たち生物は生きているんですね……なんか不思議です……。
この他にも、「DNAを倍増させるPCR法は温度を上げ下げして行われている」とか、「万里の長城は「遺伝子の流動」をさまたげている」とか、「害虫に食べられたキャベツは、ある匂いを出してその害虫の天敵を呼び寄せる」とか、「細胞膜はシャボン玉と同じしくみ」などの興味深い情報をたくさん知ることが出来ました。
すごく皮肉なことだなと考えさせられたのは、「生態系:「キーストーン種」がいなくなると、生態系が崩れる」。魚を増やすために、カリフォルニア沖で魚を食い荒らしているラッコ(この領域のキーストーン種)を駆除して数を激減させたら、その餌だったウニが増えて、魚の住処のジャイアントケルプを食べ尽くし、結果として魚がいなくなってしまったそうです……まさか逆効果になるとは……生態系って、微妙なバランスで保たれているんですね……。
そして「大絶滅と繁栄」には、地球史では、これまでに少なくとも5回の大絶滅が起きていたことが書いてありました。でも生物たちは意外にしぶといようです。
「興味深いことには、少なくとも5回の大絶滅を経ても、カンブリア爆発で誕生した生物門のほとんどが現在もみられるということだ。たとえば、ペルム紀末におきた大絶滅では、当時の全種数の約95%が絶滅したと推測されているが、大絶滅後に種数が回復すると、大絶滅前にみられた各生物門の生物がみられるようになる。このことから、大絶滅が起きても、高次の分類群は失われにくいと考えられるのである。」
生物学の概要を、フルカラーのイラストで学ぶことが出来る『Newton大図鑑シリーズ 生物大図鑑』。とにかくイラストが大きくて、文字部分は簡潔で、読み進めやすいところも素敵です。興味のある方は、ぜひ眺めてみてください。
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