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日本ドローン年鑑 2021(先端ロボティクス財団)
『日本ドローン年鑑』2021/5/28
一般財団法人 先端ロボティクス財団 (著), 野波健蔵 (監修)
(感想)
日本の産業用ドローンの機体、関連企業などを網羅してデータベース的に紹介してくれる『日本ドローン年鑑 2021』で、内容は次のようになっています。
「第1部 産業編」物流、点検、測量、農業、空の道、警備、空飛ぶクルマなど、日本のドローン産業に関する最新の動き
「第2部 機体編」国産の産業用ドローンをプラットフォーム製造企業ごとに紹介
「第3部 企業編」ドローンプラットフォーム製造企業をはじめ、日本のドローン産業および周辺技術を担う企業126社紹介。
カラー写真を活用して最新情報を紹介してくれていて、例えば物流分野では、次のような情報とともに、実際に運航しているドローンや自動運転車の写真を見ることが出来ました。
「2019年夏、横須賀から観光客で賑わう東京湾の離島・猿島へ荷物を運ぶ「楽天ドローン」。片道1.5kmを飛行した。
2020年夏には長野県のリゾート施設「東急リゾートタウン蓼科」でUGV(無人地上車両)による配送サービスを行った。」
ドローンというと、「空を飛ぶ小型航空機」というイメージしかありませんでしたが、現在では、より範囲が広がって「自律性を持つ無人機全般」を呼んでいるそうです。次のように書いてありました。
「人が搭乗して操縦しない無人航空機を略してUAV(Unmanned Aerial vehicle)と呼ぶのに対し、無人地上車両をUGV(Unmanned Ground vehicle)、無人ボートをUSV(Unmanned Surface vehicle)、無人潜水機をUUV(Unmanned Underwater vehicle)と呼ぶ。ドローンとは、狭義にUAVはのことをさすが、広義には、自律性を持つ無人機全般を無線操縦機(ラジコン)と区別してドローンと呼ぶことが一般的になっており、本年鑑でもUAVを中心としながら、UGV、USV、UUVも一部紹介している。」
……そうだったんだ。だからこの本では、VTOL可変翼カイトプレーンや自動運転車など、さまざまなドローンを見ることが出来て興味津々でした。狭隘空間の点検に使われるホバークラフト型のドローン、手のひらサイズのマイクロドローンなどもあります。
またドローンで使われている技術情報の紹介も。その一部を紹介すると、次のような感じ。
「GPSやGalileoなどのGNSS(全地球測位衛星システム)信号を受信できない環境において、どのようにドローンに自己位置を認識させ、正確な自律飛行を実現させるか。この課題にACSL社はレーザーを用いる「LiDAR」とカメラを用いる「Visual SLAM」という2つの技術で対応している。」
「SLAMとは、ドローン等に搭載したカメラやレーザーで周囲の三次元情報を読み取り、3Dマップを作成すると同時に、マップにおける自己位置を推定する技術。特に画像から立体を認識する技術を「Visual SLAM」という。」
「一般的なレーザー計測に用いられる赤外線レーザーは、水を透過することができず、水面下の地形を把握できない。これに対して水を透過するグリーンレーザーを用いる航空レーザーを用いる航空レーザー測深が活用されているが、計測費が高額になりやすい。」ということで、こうした課題を解決するべくドローン搭載型グリーンレーザースキャナーTDOT GREENが開発されたそうです。……ドローンには、さまざまな技術が使われているんですね。
また、この本の著者「一般財団法人 先端ロボティクス財団」の、次のような「東京湾横断飛行」などの活動の紹介も、とても参考になりました。
「東京湾横断飛行の目的は、東京湾岸エリアに位置する政令指定都市、横浜市と千葉市間の約50kmをドローンでつなげて東京湾上の超低空域にドローン物流ハイウェイを構築するための実証実験を行うことである(2021年5~6月の実施を予定)。(中略)
この1年間ほどの実証試験の中で判明したのは、人口過密地域近郊における長距離飛行には、1)型式証明や耐空証明に準ずる墜落しにくい優れた機体性能、2)1つの不具合があってもミッションが継続できる信頼性・耐久性のある冗長な駆動系やフライトコントローラー、3)飛行中に途絶しないロバストな無線通信システムが必須である、ということである。この3つがコア技術であることを検証してきた。」
この他にも、「土木・建設の現場にICT技術を導入することで生産性の向上をはかる国道交通省主導の取り組み「i-Construction」」や、「電力設備等の上空はドローンの航路として期待されている(航路プラットフォームの構築とともに、ドローンの自動飛行による電力設備等の点検も推進中)」など、興味深い記事をたくさん読むことが出来ました。
今後、ドローンをめぐる動きは、さらに変化していくようです。次のように書いてありました。
「2021年に小型無人航空機(ドローン)に関する航空法が大幅に改正されることが決まっています。すでに法整備がなされた機体登録に続いて、機体認証や操縦ライセンス等の法整備が追加されるためです。そして、2022年には目視外・第三者上空飛行が解禁され、必要な基準を満たしていれば、たとえば、物流ドローンが都市部上空を飛行することも可能になります。」
ドローンの実用への動きは着々と進んでいるんですね。
日本のドローンについて総合的に知ることが出来る『日本ドローン年鑑 2021』でした。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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