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第1部 本
音楽
音律と音階の科学(小方厚)
『音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか (ブルーバックス)』2007/9/21
小方 厚 (著)
(感想)
現在、何気なく使っている「ド」から「ド」までの12個の音が、どのように決められたのかをはじめ、音律と音階、音楽と数学の関係を解説してくれる本です。
楽器を弾くのは好きですが(下手の横好き)、正直に言って音楽にあまり造詣が深いとは言えないので、一度読んだだけでは到底理解できない感じでしたが、ピタゴラス音律から平均律への話などは、分かりやすくて、すごく興味深かったです☆
著者の小方さんは音楽家ではなく、プラズマ波のフーリエ解析で学位を取った物理学者なので、難しい音楽用語があまりなく、また「編集部の注文で数式を削除されてしまった」そうで、私のようなただの一般人にとっては、むしろ分かりやすくなっているような気がしました。
ところで、私自身は子どもの頃から「ドレミ」はピアノの鍵盤で習ってきたので、「平均律は響きがよくない」という話を聞いた時には、あまりピンときませんでしたが、実は「平均律」や「昔の日本の音階」以外にも、「ピタゴラス音律」「純正律」など、さまざまな音律があったのですね。
音律の始まりは「ピタゴラス音律」から始まったそうで、現在の「平均律」とは少し違う音だったようです。ピタゴラス音律や純正律の方が「響きが良い」ようですが、「転調」がうまく出来ないために、消えていったと言います。「平均律」は「転調」がしやすいよう、響きを多少犠牲にして、つくり上げられたのですね。
意外だったのは、「平均律普及以前に平均律ではない音律のために作曲された曲、バッハやモーツアルトやベートーベンの音楽が、現在平均律で演奏されているのは問題かもしれない」という一文。そして、なんと「平均律クラヴィア曲集」では、平均律は使われなかったのだとか! 一説によるとこの曲は、ヴェルクマイスター音律のために作曲されたのだそうです。いったい、どんな音を響かせていたのでしょう。そして、「ミーントーン」とか「ウェル・テンペラメント」とか、いろんな音律が乱立していたら、作曲家は混乱しなかったのでしょうか? うーん……興味深い話でした。
面白かったのは、東南アジアの民族楽器のガムランでは、楽器間の周波数のズレが生み出す「うなり」の陰影を活かす演奏が良い演奏だという話。ガムランの音程は、楽器職人ごとに違うそうで、先祖代々の竹の音叉を受け継いで、それを参考に楽器セットすべての音作りをするそうです(西洋音楽とは異なる音律に従っています)。なるほど、ガムランのあの不思議な「うなり」は、こうして生まれていたのですね。
……音楽って、もともとは、そういうものではないでしょうか。
音楽が、声を上げたり、近くにあった石や木を叩いた音で始まったなら、そもそも「ド」の音で始まる必要はなく、どの音を使っても構わないんだし(笑)、「ド」と「ド」の間に12の音でなく、50ぐらいあっても良くて、さらに言えば、「ド」と「レ」の間と、「レ」と「ミ」の間の差が、かなり違っていてもいいはず。
それに音楽は、もちろん即興で始まったはずで、「一回限り」なのが普通だったのだと思います。
とは言っても今は、「平均律」のような、みんなが共通して使える音律が確立していて本当に良かったと思います。共通する音律があるからこそ、すぐに「合奏」が出来るわけだし、「記録」「再現」も容易に出来るのですから。誰かが弾いてくれた曲を、素敵だなーと思って自分も同じように弾きたいと考えても、「その同じ楽器でなければ弾けない」とか、そもそも「どの音だったか記録できない(音が無数にあったら、どう記述したらいいんでしょう?)」とかいうことがあったら、とても残念だったでしょうから。
音楽について、いろんなことを教えてくれ、考えさせてもくれた、とても興味深い本でした。ぜひ読んでみてください☆
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