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第1部 本
社会
XaaSの衝撃(日経産業新聞)
『XaaS(ザース)の衝撃 すべてがサービス化する新ビジネスモデル』2020/12/2
日経産業新聞 (編集)
(感想)
消費者の関心が「所有から利用」にシフトするいま、あらゆるもの(X)がサービスとしてネット経由で提供される「XaaS(as a Service)」が注目を集めています。この本は、各産業で起こっている最先端の動きを、日経の取材記者が追ったルポです。
例えば「第2章 サービス化の先駆け・MaaS--国境を越える競争」では、トヨタの「ウーブン・シティ」が次のように紹介されていました。
「トヨタは実証実験する地区を「コネクテッド・シティ」と位置付けている。20年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を利用する。地区名は「ウーブン・シティ」とし、当初は高齢者や子育て世代、発明家など360人程度が居住することを見込む。(中略)トヨタが商用向けに開発を進めている自動運転EV「イーパレット」などを走らせる計画だ。燃料電池を使った発電システムなど都市インフラは地下に置く。居住者は車のほか、室内用ロボットなどの新技術を検証する。MaaSや人工知能の開発にも活用していく。」
また「第3章 都市部で、地方で、動き出した「日本版MaaS」」では、日経の記者さんが実際に体験したことを紹介してくれます。
「トヨタ自動車と西日本鉄道が福岡市などで展開するスマートフォンアプリ「マイルート」を記者が実際に体験してみると、アプリが提案する意外なルートが最適解だった。MaaSは交通機関利用者の移動に変化を与え、街づくりをも変える可能性を秘めている。」
「WILLERがいち早く配信を始めた観光MaaSアプリを19年9月初めの北海道で使ってみた。(中略)WILLERアプリによる効率的な移動で、弾丸ツアーでもかなり充実した。ただ誤算も。アプリの検索結果では午後7時台にもあるはずの、女満別空港行連絡バスの運行が実際にはなかった。慌てて網走駅に停車中だった最終便をつかまえどうにか空港に着けたものの、検索の基礎データと実態とにずれがあり得ることを思い知った。」
……どうやら、まだ課題もありそうです。
さらに「第4章 製造業がひらく新ビジネスの地平」には、コマツのサービスの紹介や、ホンダのブロックチェーン利用の試みが。
「コマツはNTTドコモと組み、2020年4月から「スマートコントラクション・レトロフィットキット」と呼ぶサービスを始めた。(中略)コマツの新サービスでは、まずドコモが位置情報の精度を高められる独自の基地局を用意する。コマツは衛星アンテナ、建機の動きを把握するセンサーなどのキットを提供する。このキットがあれば中古建機や他社製品でも、わずか2センチメートルの誤差の範囲内での施工が可能になる。(中略)キットを組み込めば、掘削作業をタブレット端末のガイダンスに従って精緻にこなせるようになる。建設会社の作業員にとって煩雑だった「丁張り」と呼ばれる目印を置く作業もなくなる。工事の進捗をデータとして管理できるようになるため、その日の作業量を確認しながら工事を進められるようになる。」
「ホンダは独BMW、米ゼネラル・モーターズ、米フォード・モーター、仏ルノーと共にブロックチェーンを使った自動決済の基盤づくりを始めた。まず車1台ごとにデジタル上のIDを与え、どの工場で作られたかや購入者、運転の途中で受けたサービス内容などの履歴をブロックチェーンを介して記録する。通信機能を備えた電気自動車を使い、高速料金や駐車場代金、車の修理やドライブ中の軽食といった支払いの履歴を記録して充電する際などにまとめて自動払いできるようにする。」
この他にも、IT各社の量子コンピューターのクラウド化や、AIのサービス化などが紹介されていました。IT各社には次のような狙いがあるようです。
「IT各社がサービスの競争でしのぎを削るのは、先行して利用企業を巻き込むためだ。多くの企業に使ってもらうことで、用途開拓や課題の洗い出しができる。またソフトの開発でも協力が得られる。今から利用し続けてもらえば、多数の顧客を抱えた状態で実用化できる。」
モノからサービスへ、所有から利用へと向かう動きはモビリティにとどまらず、あらゆる製品・産業に及ぶ「XaaS」へと発展していく……それがじわじわ進んでいることを事例で紹介してくれる本でした。巻末には「XaaS関連用語集」もあります。
今後の社会がどう変わっていくかに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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