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第1部 本

歴史

図説 化石の文化史(マクナマラ)

『図説 化石の文化史: 神話、装身具、護符、そして薬まで』2021/1/7
ケン・マクナマラ (著), 黒木 章人 (翻訳)


(感想)
 化石が石器をファッション化し、多くの神話・伝説を生み、装身具、護符、薬として、重要な役割を担ってきたことを、古生物学者のマクナマラさんが解き明かしてくれる『化石の文化史』です。
「化石の歴史」の本なので、古代の生物としての化石史が書かれているのかと思いましたが、そんなことはまったくなく、人間が化石をどう使ってきたかに関する『化石の文化史』についての本でした。
 先史時代から中世まで、科学的な価値を見出す以前から、化石は人間の心を捉えてきたそうです。例えば「化石が石器をファッション化」したとは、化石をデザインとして生かした石器が見つかっていることだそうです。アンモナイトやウニなどの化石は、明らかに普通の石とは違って複雑な形をしていますよね。石器づくりのために石を拾っていた古代人は、おそらく化石にとても魅せられたことでしょう。古代人は化石を石器の模様として活かしている他、装身具や副葬品としても使っていたようです。
 さらに護符、薬としても使われてきたのだとか。もっとも薬の方は、ごく一部をのぞいて、ほとんど薬効はなかったようですが……。
 とても面白いと感じたのは、古代の彫刻などの工芸品やデザインにも影響を与えたのかもしれないということ。例えば、フランス南部の3万4000年前のオーリニャック文化期の遺跡から出土した象牙のビーズは、同じ地層にあった巻貝の化石に似せて彫られていたそうです。古代の遺跡によくみられる渦巻き模様も、もしかしたら巻貝を参考にしているのかも……。化石は、人類の芸術創作意欲の源泉になったのかもしれませんね。
 もう一つ面白いと思ったのは、多くの神話・伝説のもとにもなっていること。
 例えば中国の龍の歯は、伏犠の神話でも重要な役割を果たしています。伏犠と女?の兄妹(人間の始祖)は、龍の歯から一日で実った大きな瓢箪の小舟のおかげで、大洪水から助かったのだとか。
 また北欧神話の雷石は、雷神トールの神話に深く根差しているそうです。雷除けのお守りにも使われている雷石は、ウニの化石であることが多いのだとか。
 世界各地で見つかる化石は、その模様の精緻さや複雑さで、現代の私たちですら魅了しています。現代ほど芸術に恵まれていなかったと思われる古代人にとっては、いっそう魅力的に映ったに違いありません。
 化石が私たちの文化的発展に、いろんな面で影響を与えてきたことを、写真やイラストを利用して教えてくれる本でした。(ただし「図説」というほど図や写真は多くはなかったように感じました。すべて白黒でしたし……)。
 化石好きの方はもちろん、先史時代から中世までの文化に興味のある方も読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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