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第1部 本
健康&エクササイズ
ゲノム編集食品が変える食の未来(松永和紀)
『ゲノム編集食品が変える食の未来 (日本語) 』2020/11/18
松永和紀 (著)
(感想)
ゲノム編集技術を用いて品種改良された食品の安全性や意義について解説してくれる本です。
前半では、ゲノム編集食品に関する基礎知識の解説(第1章:技術の概要、第2章:現在研究開発中の主な食品の紹介、第3章:ゲノム編集の安全性問題と国による規制の概要説明)を知ることができます。
後半は、ゲノム編集食品に期待を抱かざるを得ない世界の食の危機の紹介(第4章:新型コロナウイルス感染症・人口増加・地球温暖化などの危機が及ぼす食への影響、第5章:なぜ、人々がデマを信じ込み新技術に不安を抱くのかについて具体的な事例を挙げて解説、第6章:食の科学を巡る情報の取扱いのどんな点に注意を向けるべきなのかについての、日本への処方箋)となっています。
「機能性成分を多く含む高GABAトマト」、「茶色になりにくいロメインレタス」、「筋肉もりもりの肉厚マダイ」など、遺伝子技術を応用した食品が増えてきていますが、実際に自分で「食べる」ならば、その安全性はどれほどなのだろう……とちょっと心配になる気持ちもありました。
でも、この本の「第3章 ゲノム編集の安全を守る制度」を読んで、「とにかく特定の食品に偏らないように、バランスよく多種類の食品を食べる」ように心掛けることが大切なんだなと思わされました。「自然だからいい」と考えるのは、大間違いなのだそうです。次のような記述がありました。
「生物はそれぞれ、長い進化の歴史の中で、毒性物質を作るなどして敵を撃退し、サバイバルしてきました。それに対して、人類はさらにうわてを行く生きものとして、なるべく毒の少ない植物を選び育種を重ねて現在の作物や家畜を作り上げてきました。今でも残るトマトの原種に近いものは小さく、人には有害な物質がたっぷり含まれています。」
……確かに。例えば、ジャガイモの芽に有毒物質のソラニンが含まれているのは有名ですよね。
そして次のように書いてありました。
「こうしたことから、ゲノム編集食品の安全性を検討する際にも、リスクゼロを求めるのではなく、ゲノム編集技術を用いない既存の食品との比較で「同等のリスク」と認められれば安全だということにしよう、というふうに考え方が整理されています。」
……なるほど。
この本の「第6章 「置いてきぼりの日本」にならないために」には、次のようにも書いてありました。
「(前略)情報を吟味し、科学的に質の高い研究結果、すなわちエビデンスの強い内容を尊重し判断する能力は「科学リテラシー」と呼ばれています。私たちの社会は、科学リテラシーを市民に育ててゆかなければなりません。
その基盤には、国や研究機関等の情報公開も必要です。科学情報、エビデンスを最大限公開して、市民にわかりやすく説明しコミュニケーションを図る姿勢が求められます。」
ゲノム編集技術などが、世界の食糧事情をよい方向に変えていくことを期待したいと思います。
さて、日本もゲノム編集技術研究に力を入れているようで、本書の中でも次のような研究を知ることが出来ました。
「GABAトマトを手がける筑波大学つくば機能植物イノベーション研究センターは、トマトの基礎研究に欠かせないモデル品種「マイクロトム」に関する世界一のデータベースTOMATOMAを構築し運営しています。(中略)
筑波大学は、このマイクロトムを化学物質にさらしたり放射線を照射したりして、突然変異体を作っています。2019年までに、1万6000系統以上を得ました。たとえば、色が違う変異体ができたとしたら、ゲノム情報を調べ、どこの塩基配列が変わっているかを突き止めます。それにより、色にかかわる遺伝子がどこにあるか、どんな役割を果たしているのか、解明が進みます。このような作業により、トマトの果実の日持ち性や着果性、糖や機能性成分の蓄積など、多くの遺伝子を特定し、その機能を明らかにし、それをデータベースとして公開しているのです。」
「日本では、画期的な技術が生まれつつあります。国立研究開発法人農研機構がiPB法を開発し、2017年、18年に論文として発表しました。植物の生長点に直接、CRISPR/Cas9を打ち込みゲノム編集するシステムです。金の微粒子にくっつけて打ち込むこの方法だと、遺伝子組換えをせずに済み、金の微粒子は害がなく、入れたCRISPR/Cas9も分解されます。その後の工程も省けるため利点が数多く生まれます。(中略)
また、そもそもゲノムのDNAを切断するのではなく、細胞中に「Activation-induced cytidine deaminase」という酵素を入れ、特定の場所の塩基を置換させる、という技術も神戸大学の研究チームが開発しており「Target-AID」と呼ばれています。」
これらの研究が進むことで、より「健康によくて」「美味しくて」「手軽に食べられる」食品がたくさんできると嬉しいですね☆
『ゲノム編集食品が変える食の未来』を知ることが出来る本でした。ゲノム編集など科学技術の勉強にもなるので、ぜひ読んでみてください。
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