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第1部 本
歴史
ヴィジュアル版 世界特殊部隊大全(ネヴィル)
『ヴィジュアル版 世界特殊部隊大全:部隊・装備・戦術』2020/10/16
リー・ネヴィル (著), 村上 和久 (翻訳)
(感想)
世界各国の特殊部隊の歴史から設備・装備や展開、戦術・戦闘にいたるまで、その最新情報とフルカラー写真情報を掲載している特殊部隊の総合百科です。
「はじめに」には、次のように書いてありました。
「特殊作戦部隊(SOF)は、運命の9.11同時多発テロ事件以来、全世界で作戦の最前線に立ってきた。その起源は第二次世界大戦中のコマンドー部隊やレインジャー部隊にさかのぼるが、現代の特殊作戦部隊員は、通常戦のような明白な目的(と勝利)とはほぼ無縁の、「戦争以外の作戦」という不明瞭なグレーゾーンに存在している。
現代の特殊作戦部隊は、ヴェトナム戦争中の有名な「グリーンベレー」、つまりアメリカ陸軍特殊部隊によって大衆の記憶に焼きつけられた。(中略)
1980年代を通じて、西側の特殊作戦部隊は、アフリカのチャドから南米コロンビアにいたる、ありとあらゆる場所の驚くほど数多くの紛争地域に投入され、対テロ活動や麻薬取締活動、外国国内防衛活動、特殊偵察活動を実施した。1991年の湾岸戦争では、「グリーンベレーは伝統的な任務に立ち返って、敵を監視したり、<砂漠の嵐>作戦の脆弱な同盟に参加したアラブ諸国軍の連絡役をつとめたりした。(中略)
現代の特殊作戦部隊員は、敵戦線の後方を叩く典型的な特殊部隊の任務である直接行動(DA)とならんで、しだいに兵士兼スパイ兼外交官役をつとめたり、世界の紛争地域で現地の部隊を訓練したり支援したりするために、招集されるようになっている。(中略)
特殊作戦部隊は多くの国で好んで使われる部隊でありつづけている。それは犠牲者の数を少なくするその高度な技量と、伝統的に特殊部隊にはもっとも困難な任務しかあたえられないので、そうした犠牲者がでてもむりはないという大衆の期待のおかげだ。」
……確かに。「特殊部隊」というと、軍隊の中でも最高の技量の持ち主ばかりで構成されている最強スーパーエリート集団というイメージがあります。
この本はそんな世界各国の特殊部隊について、その組織(特殊作戦部隊)、使用兵器、装備、輸送手段、戦術、実例でみる特殊作戦、略語など、総合的な情報が掲載されています。
ただ……ヴィジュアル版というわりには、意外と写真が少ないイメージで、描画の参考資料にするには物足りないかもしれません。
それでも内容が総合的網羅的なので、戦争をテーマとした小説や漫画・アニメが好きな方にとっては、これが一冊あると、すごく参考になると思います。
中でも「実例でみる特殊作戦」は、まるで戦争ドラマの概要を見ているみたいで、現実に起こった事だとは思えないような感じのものばかり。次の実例が掲載されています。エールフランス8969便(フランス)、〈砂漠の嵐〉作戦、〈イーグル・クロー〉作戦、〈不朽の自由〉作戦〈自由の番人〉作戦、〈ゴシック・サーペント〉作戦、〈インヘレント・リザルヴ〉作戦、〈イラクの自由〉作戦、〈ネプチューン・スピア〉作戦、〈ニムロッド〉作戦、〈オクターヴ・シールド〉作戦、〈ロウ〉〈パラドキシカル〉〈クライトン〉作戦、〈ユーコン・ボールダー〉〈ヴァイキング〉作戦。
これらの実例を見ると、危険な現場での特殊部隊員たちの勇気ある行動に頭がさがりますが、最高に技量が高い貴重なスーパーエリートのはずの彼らも、もしかしたら戦争地域では消耗品に過ぎないのかもしれないと感じて、なんだか悲しくなってしまいました……。
紛争や戦争はこの世界からなくなって欲しいと願っていますが、「暴力」による問題解決・支配を行おうとする権力者がいる限り、残念ながら、この世界から戦争がなくなることはないのでしょう。平和な日本に生きていることに感謝しつつも、世界の実情がどんなものかを忘れないために、みなさんも読んでみてください。
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