ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
教育(学習)読書
教育AIが変える21世紀の学び(ホルムス)
『教育AIが変える21世紀の学び : 指導と学習の新たなかたち』2020/11/16
ウェイン・ホルムス (著), マヤ・ビアリック (著), & 20 その他
(感想)
人工知能の発展は教育にどのような影響をもたらすのかを総合的に考察している本。第1部では生徒が「何を」学ぶべきかという視点から「コア概念」の重要性を提案、第2部では「どのように」教えるのかという視点で教育AIの多様な活用例を紹介し、教育AIの今後の可能性や倫理的問題も詳しく論じています。
「コア概念」とは、基礎となる知識の一つで、「つながりや意味を生み出し、転移を可能とするために生徒が理解しなければならない最も重要な概念」だそうです。
この本では「専門的アマチュアリズム」の重要性も次のように語っています。
「専門知識がその専門に関する深さを特色するのに対し、専門的アマチュアリズムは「基礎となるものを強固かつ柔軟に理解すること」を目的とする。それぞれの分野におけるもっとも重要な概念や複数の分野にまたがる重要な概念(コア概念)を自分のものとすることで、生徒たちは多面的な問題に対処する力を高め、また、世界を解釈するための道具をより多様にもつことができるのである。」
この本でも明言されているように、教育の目的は、「教育は社会のニーズを満たすために生徒を形づくる方法であると同時に、生徒が自らのニーズを実現するための力を得る手段でもある。」です。機械がどんどん賢くなっている現在、人間は人間の得意分野(考えること、感じること)の能力を伸ばすことで、環境や社会をより良いものにする存在になっていくべきではないでしょうか。
第2部では、さまざまな教育AIの活用例が紹介されています。なかでも探索型学習環境の一つ「Betty’s Brain」の事例には、「教育AIにはそんなことも出来るのか!」と驚かされました。少し長くなりますが、以下に紹介させていただきます。
「Betty’s BrainはキャラクターによるELE(探索型学習環境)で、教えることが可能なAIエージェントを用いている。これは、河川生態系を事例に、科学的概念の理解を促進するために開発されたものである。Betty’s Brainの特徴は、システムを使う間、生徒が仲間の学習者である「ベティ」と呼ばれる仮想エージェントに教えるよう促されることである。このアプローチが採用されたのは、誰かに教えることによる学びが効果的であること、すなわちどのような学習内容であっても、それを体系化し、省察し、より深く理解できるようになることが明らかとなっているためである。
ある物語(ベティが科学クラブの活動に参加するのを助ける)を背景に、生徒たちはベティに教えることを支援される。そしてベティに質問してその理解度を確認し、最後にベティにシステムが自動的に生成した質問(多くは生徒たちが考えていなかったような質問)を出して、どれだけよく理解したかを確認する。(後略))」
「教育AI」は、「生徒を教える側」になるだけかと思っていましたが、逆の「教えられる側」になることで、「生徒に自ら考える力」をつけさせたり、「理解を深め」させたり、さらには「教える力」までつけさせることが出来るとは(しかもそれを評価もできる)……「教育AI」は想像以上に「使える」ものだと痛感させられました。
「教育AI」は、今後教育現場になくてはならないものになっていくと思います。それを効果的に開発していく(育てる)ためには、今まさに教育現場に立っている教員のみなさんが主体になるのが一番良いのではないでしょうか。
でも……教育現場は人手不足、長時間残業などの問題を抱えています。どうしたら? と思っていたら、この本の巻末の「付論:人工知能と教育人材の養成」に、次の記述を見つけました。
「(前略)アイデアのひとつは、AIによって変化する新しい公教育とそのおもな担い手である「教員」の養成・研修体制の検討・整備を新たに進めつつも、あわせて求められる「ミドル人材」としての学校外スタッフを、AIによって変革するこれからと今の教育の橋渡し的役割と、公教育に先端技術を導入するイノベーターとしての二重の役割を担う「教育AI支援者」として専門的に育成し、「学校」にできるかぎり迅速に配置することである。」
私自身、NintendoDSで英語や漢字などを学習した経験を振り返ってみると、少なくとも「知識」系の教育には、機械による教育が十分役に立つと思います。しかも自分専用の機械で自習すると自分のペースで学習を進められるので、教室で全員同じペースで学習させられるよりも、むしろ効率的に楽しく学習できるようにすら感じます。
だから既存の教育の一部、「知識の習得」部分は積極的に教育AIに任せて生徒に自習させ、それで浮いた時間を活用して、人間の教員は「考える力」をつける教育をいかに進めるかを検討・実験・開発していくべきではないかと思います。
この「機械学習活用の自習」及び「新しい教育(教育AIを含む)の開発」は、上記の「教育AI支援者」と「教員」が役割を分担・協力することで、進めていけるのではないでしょうか。
どんな方法をとるにせよ、教育AIを活用することで、現状の教員の負担を軽減しつつ、未来への教育をより良いものにしていけたら素晴らしいですね。
未来の教育を考える上で、とても参考になる本でした。ぜひ読んでいてください☆
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