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第1部 本
教育(学習)読書
科学の最前線を切りひらく!(川端裕人)
『科学の最前線を切りひらく! (ちくまプリマー新書)』2020/3/6
川端 裕人 (著)
(感想)
古生物、恐竜、雲、サメ、マイクロプラスチック、脳など各分野をリードする6名の科学者たちが、その知的探究の全貌を紹介してくれる本で、登場する6名の研究者は以下の通りです。
宮下哲人(脊椎動物の起源)
荒木健太郎(雲研究者)
佐藤圭一(サメ研究者)
四本裕子(認知神経科学、知覚心理学)
高田秀重(マイクロプラスチック)
冨田幸光(古生物学、日本の絶滅哺乳類)
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トップバッターは、恐竜を研究している宮下哲人さん。なんと高校生の時に、自ら強く働きかけることでカナダの高校に編入し、カナダの恐竜学者のカリー博士に弟子入りしてしまうという活力の持ち主! その精力的な研究生活に驚かされます。恐竜だけでなく「脊椎動物の起源」を探っているようですが、最近ではゲノム編集技術CRISPR-Cas9を使った実験も行っているのだとか。宮下さんの研究について、川端さんは次のように期待しています。
「恐竜は絶滅したけれど、(恐竜との近縁種と推定されている)ワニもニワトリも、今生きている。ということは、遺伝子を見ることもできるし、発生を追うこともできる。ゲノム編集技術を駆使して、また、古生物学と発生学で鍛えた目でワニやニワトリを研究すれば、それは間に挟まれた肉食恐竜たち、巨大な獣脚類についての知見にもつながりうる。」
今後の活躍がますます期待できそうです。
そして「雲研究者」荒木健太郎さんのSNSを活用した「#関東雪結晶プロジェクト」とか、サメ研究者の佐藤圭一さんのサメの繁殖研究とか、とても興味深い研究の状況を知ることが出来ます。
サメの繁殖研究は、美ら海水族館に併設された研究所で行われているそうで、こんな風に水族館や動物園に研究所が併設されているのは、「飼育下と野生での研究の両輪化が可能」になるので、本当に素晴らしいと感心しました。全国の水族館・動物園も地元の大学などと積極的に研究を進めるべきではないかと思います。
ちなみにサメの繁殖方法は、とてもバラエティに富んでいるようです。
「サメって、一言でいわば繁殖様式のデパートみたいなもので、卵を産むものもいれば、お腹の中に子宮を作って保育する、つまり、我々、哺乳類と似たようなことをするものもいる。」
……なんと、胎盤を持つものすらいるのだとか!
そして個人的に最も興味深々だったのは、四本裕子さんの認知神経科学、知覚心理学研究。fMRIによる脳の研究を行っているそうで、グニャグニャに見える錯視図については、次のように書いてありました。
「人間の脳には、頭の後ろ側に視覚皮質という部分があって、見たものに反応しています。その視覚皮質にも、すごく大きくいいますと、背中の側の経路、背側経路と、腹側の経路、腹側経路と言われるところがあって、これまで、運動しているものを見た時の近くは背側経路が担うとされてきたんです。でも、この錯視の実験をすると、グニャッと曲がって見える軌道を伴う時には、腹側経路も同時に動いているんですよね。あのグニャグニャ感は、これまで言われていたよりも、もっと脳全体としてのネットワークの働きの結果だろうと、示唆されたということです。」
また「チカチカ点滅する図形を見た時の方が、時間が長く感じられる」とか、「トゥトゥトゥという音のある方が、時間が短く感じられる。」とか、時間知覚の錯誤の話もすごく面白いと感じました。
この他にも、マイクロプラスチックを研究している高田秀重さんとか、日本の絶滅哺乳類を研究している冨田幸光さんなど、話題の研究テーマを詳しく知ることが出来ます。
また、各章の終わりには、研究者の方からの「若者」へのメッセージエッセイが付いていますので、将来、研究者の道へ進みたい若い方にとっては、特に参考になると思います。ぜひ読んでみてください。
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