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第1部 本

社会

アフターソーシャルメディア(藤代裕之)

『アフターソーシャルメディア 多すぎる情報といかに付き合うか』2020/6/25
藤代裕之 (著), 久保田 麻美 (著), 白井 瞭 (著), & 7 その他


(感想)
 ソーシャルメディア利用者の実態を、徹底調査した本です。
 ネットにスマホ、SNSが普及したことで、みんなが日常的に接する情報量は膨大になりました。まさに「情報過多社会」です。この本は、NHK放送文化研究所、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所、法政大学大学院メディア環境設計研究所のメンバーが、それぞれの調査データを持ち寄って、ソーシャルメディアが広く普及した後(=アフターソーシャルメディア)の人々の「情報接触スタイル」を分析し、新たなメディアスタイルを見いだそうとしてまとめたもので、内容は次の通りです。
第1章 情報過多社会と新たなメディア接触の謎
第2章 「ズレ」ているから話がかみ合わない
第3章 変容するソーシャルメディア
第4章 たまたまが生む「残念」なニュース体験
第5章 メディア環境を再構築する人たちの登場
第6章 大学生のインサイトから近未来を洞察する
第7章 情報過多と「ズレ」の要因を知る
第8章 情報過多社会を超えていく
   *
「情報過多社会」を生きる私たちは、起きている時間のなんと4割をメディアに接触しているそうです。
「博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所の「メディア定点」調査によると、1日あたりのメディア総接触時間は2006年には335.2分でしたが、2019年に400分を越えました。1日は1,440分です。仮に睡眠を7時間だと考えると(中略)起きている時間の4割をメディアに接触していることになります。」
 ……うーん、長いですね。そして特に若年層や女性は、スマホが「なくてはならない」メディアであると同時に「利用する時間を減らしたい」アンビバレントなメディアにもなっているそうです。これ、私も実感としてすごくよく分かります(汗)。
 そして、40代を境に年齢が上の層と下の層では、メディアに対する態度が微妙に違っている(ズレがある)のだとか。
「40代を境に、上の年層はテレビや新聞などのマスメディア、下の年層はソーシャルメディアや動画などのインターネットを日常的に利用している人が多い。」
「若者は、「自分が知りたいことだけ知っておけばいい」と考えている人が他年代より多い。」
 ……これも分かるような気がします。テレビの方が受動的に情報を得られるので、面倒くさくなくていいような気がしますが、若年層は子どもの頃から携帯電話やスマホなどに慣れているので、アプリを立ち上げたりソーシャルメディアなどを検索したりすることが、まったく面倒ではないのでしょう。
「取材した都内の大学3年生(男性)は、「タイムラインのなかが自分にとっての世間」「タイムラインに載らないものは自分にとっては存在しないのと同じ」だと語っていました。その学生は、ネット上の情報やアプリの通知があまりに多すぎて、自分が信頼できる、または同じような趣味嗜好を持っていると判断した人やブランドのアカウントだけをフォローすることで、あらかじめ情報を選別しているのだそうです。」
 ……これにも共感してしまいます。いつの間にか、気づかないうちに「ネットの検索で出てこない情報は存在しないも同然」になってしまっているんですよね。これって、自分の接する情報をポータルサイトなどに囲い込まれていることも意味しているので、なんかモヤモヤした気分になってしまいますが、かと言って、必要のない情報を大量に見せられても面倒だし……ここでもアンビバレントな状況に悩まされてしまうのです。
 そして、この本で安心したのが、若者はかなり賢く合理的に「多すぎる情報」と付き合っているという印象を受けたこと。
「「ニュースや情報を得るうえで」という条件で、メディア別にどの程度信頼しているかを尋ねたところ、NHKテレビを「信頼している」「どちらかといえば信頼している」と答えた人は80%、「新聞」は77%でした。一方、Yahoo!ニュースなど「インターネットのニュースサイト・アプリ」は44%と半数に満たず、ソーシャルメディアに至っては信頼している人は14%しかいませんでした。ところが実際に利用している割合は、インターネットのニュースサイトが53%、ソーシャルメディアも28%と、「利用している」が「信頼している」を上回っています。」
「若年層を中心にニュースメディアの選択には、普段から身近でアクセスしやすいという「利便性」が重視されているが、それを「信頼」をしているわけではない、という割り切った状況が見えてきます。」
 ……ちゃんと「タダで便利に見ることができる情報は玉石混交」だということを知った上で利用しているんですね!
 個人的には、「とりあえず知っておきたい社会の情報」を知るためにTVニュースを(食事の時間に合わせて)流し見していて、「趣味の情報」は隙間時間のTwitter流し見で、掘り下げて詳しく知りたい情報はインターネット(複数サイト)や書籍で、という使い分け方をしています。
 そして「趣味の情報」以外は、信頼できるマスメディアやサイトを選んで視聴しています。強く興味があるわけではないけれど、知っておきたい大事な情報は、信頼できる情報源から得るように心がけないと、真偽を確かめるのにムダな手間が発生してしまいますから。
 その一方で「趣味の情報」は、自分にとって「大事な情報」ってほどではないので、真偽はともかく「楽しめる情報」であればいいや、って感じでしょうか(笑)。
「みんな」が「多すぎる情報」とどう付き合っているかに関する調査結果を教えてくれる本でした。若者を含めた日本人「みんな」が、かなり合理的に付き合っている状況が分かって安心しました(笑)。ソーシャルメディアの使われ方に興味がある方は、読んでみてください。
 追記:なお、『都市5.0 アーバン・デジタルトランスフォーメーションが日本を再興する』の感想記事内で紹介させていただいたSidewalk Labsの都市計画は、残念ながら「撤退」になってしまったようです。この本には次のように記述されていました。
「2020年5月現在、Sidewalk Labsはトロントのウォーターフロント地区の開発計画から撤退することが明らかにされた。」
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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