ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

しかけ絵本(海外の作家)
 ※日本語の本(翻訳版)もあります

その他の海外の作家

たいせつなきみ とびだす絵本(ルケード)

『たいせつなきみ とびだす絵本』2016/8/25
マックス・ルケード (著), セルジオ・マルティネス 絵 (その他), & 1 その他


(感想)
 木でできた小人たちの村では、誰もが同じことに夢中になっています。それは、ほめたい人にはお星さまシールを、けなしたい人には、だめじるしシールをはること。だめじるしばかりベタベタはられた小人のパンチネロは、外出するのもいやになってしまう毎日。そんな時、彼は、どちらのシールもはられていない不思議な小人ルシアに出会って……悲しいときに読むと、心が暖かく癒されていくロングセラー絵本の名場面を、立体的に表現してくれる飛び出す絵本です。
 新しい飛び出す絵本への興味で、書店で手に取ってみた本でしたが、内容の素晴らしさにたちまち魅了されました。しかけ技法的には、ごく普通の「飛び出す」仕掛けが多かったのですが、キャラクターや街角の風景がごく自然に表現されていて、とても好感が持てます。また「丘の上でエリの家」のシーンでは、大きく箱形に飛び出してくるエリの家の窓を開けて中をのぞくと、仕事をしているエリとパンチネロが一緒にいる立体的な情景が見えるという、ちょっと珍しい技法の飛び出すしかけもありました。
 それにしても、お星さまシールと、だめじるしシール……なんだかSNSの「いいね!」やフォロワー数のような感じですが、小人たちの社会だけでなく人間の社会にも、こういうシールがいたるところにあって、私たちに喜びだけでなく悲しみも与えてくれます……そして私たちは、やっかいなことに「100個のいいね!」よりも「2、3個のネガティブな意見や評価」の方が気になってしまうものですよね……。
 あんまりいろいろなことができない小人や、絵の具がはげている小人たちに貼られる灰色のだめじるしシール。この本は、だめじるしシールばかり貼られて心が折れてしまった小人パンチネロが、不思議な小人ルシアと、すべての人形の造り主の彫刻家(人間)エリに出会って、立ち直りのきっかけをもらう心温まる物語が描かれています。
 物語もとても素敵で癒されますが、表紙の絵でも分かるように、イラストもとても素晴らしいのです。味のある表情をしているキャラクターたちが、優しくて温かみを感じさせる色彩で丁寧に描かれていて、物語とともに心に温かく沁み込んできます。決して可愛くはないキャラクターばかりなのですが、そこがまた素敵なんです……。
 この本はSNS疲れを起こしている方や、いじめにあった経験がある方などに、ぜひ読んで欲しい内容ではありますが、そういう方に贈り物にして渡したりすると、「いったいどんな気持ちでこれを私にくれるんだろう?」と深読みされたり、「私がパンチネロと似ているって言いたいのかな……」と逆に落ち込ませてしまったりしそうなので、贈り物には向かないかもしれません。むしろ、そういう経験のある方ご自身が、書店や図書館で内容を見て、自分のために買う(借りる)のが最もいいような気がします。
『たいせつなきみ』。
 誰もが「たいせつな存在」であることを気づかせてくれる本です。人間関係で、心が疲れてきていることを感じている方は、ぜひ一度、手にとってみてください。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)

・1~5ページ目:中表紙など
・6~11ページ目:木でできた小人たちの村の日常(ほめたい人にはお星さまシールを、けなしたい人には、だめじるしシールをはることに夢中)イラスト+文章(しかけなし)
・13~13ページ目:他の小人がお星さまシールをもらっているのに、小人のパンチネロはだめじるしシールばかりもらってしまいます。(村人たちの街角の様子が、立体的に表現されています)
・14~17ページ目:気持ちが暗くなっているパンチネロは、ある日シールがくっつかない小人のルシアに出会います(イラスト+文章(しかけなし))
・18~19ページ目:ルシアに、シールがくっつかないカラダになる秘密を教えてもらうパンチネロ(会話する二人が、立体的に表現されています)
・20~21ページ目:家に戻ったパンチネロは、ルシアに教えられた通り、丘の上に住むエリに会いに行くことを決心します。(夜の窓辺で、三日月を見上げて思索にふけるパンチネロが立体的に表現されています)
・22~23ページ目:丘の上でエリと出会うパンチネロ(イラスト+文章(しかけなし))
・24~25ページ目:ページを開くと、丘の上でエリの家(の窓)が大きく箱形に飛び出してきます。窓を開くと、中で仕事をしているエリと、パンチネロが一緒にいるのが見えます。(窓2枚を開けて中を見ると、立体的な情景が見えるという、ちょっと珍しい技法の飛び出すしかけ)
・26~27ページ目:エリに優しく触られて、嬉しそうなパンチネロ(イラスト+文章(しかけなし))
・28~29ページ目:エリに優しく持ち上げてもらっているパンチネロが、立体的に飛び出してきます。
・30~31ページ目:外へ出ようとするときに、だめじるしシールの一つが自然にはがれ落ちるパンチネロが、立体的に表現されています。
・32ページ目:優しく見つめ合うエリとパンチネロの小さいイラスト
   *   *   *
 この本には、飛び出さない普通の絵本の『たいせつなきみ』や、「たいせつなきみ」20周年記念出版・シリーズ全6巻のストーリーを収録した愛蔵版『たいせつなきみストーリーブック 全6話』もあります。

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