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第1部 本

科学

モノの見方が180度変わる化学(齋藤勝裕)

『モノの見方が180度変わる化学』2017/2/24
齋藤勝裕 (著)


(感想)
 スマホから家電、食品、洋服など、身近なモノの化学的な仕組みを教えてくれる本です☆
「化学」というと、「白衣を着て、ビーカーとかの器具に妙な液体を入れて、色を変えたりするやつ」というイメージで、実験室内で行われている「自分とは無関係な、何か遠いもの」という感じを抱いている方もいるのではないかと思います。でも、「化学はおよそ物質と言えるものならなんでも扱い、研究の対象にします。なかでも生命体は格好の研究対象です。」なのだとか。この本では、身近な最先端科学の「スマホ」をはじめ、食品や洗剤など、家の中にあるモノの化学を分かりやすく総合的に教えてもらえます。……えーと、かなり「分かりやすい」解説だとは思いますが、化学記号なども出て来るので、高校生以上の方にお勧めします。
 さて、この本では、「牛乳や豆乳が白いのはなぜ?」というような身近な疑問に答える、という形で解説が進んでいくので、ちょっと難しい内容でも、興味を引きつけられて読み続けることが出来ます。ちなみに、牛乳や豆乳が白いのは、透明な水に脂肪とタンパク質が微粒子となって浮遊しているコロイド溶液だからです。……と、ここまでは私も知っていましたが、この本では、このコロイド溶液で、なぜ微粒子が浮遊し続けるのか、まで教えてもらえました。
「なぜこのような大きな粒子が下に沈まずに液体中を浮遊しているかというと、コロイド粒子の表面に特定の電荷が付着しているからで、そのために粒子同士が静電反発を起こして接触しません。すなわち粒子が集まらないので、凝縮しないのです。」なのだそうです。しかも粒子だけでなく、気体までコロイドになれるそうで、「食パンやスポンジでは、気体がコロイド粒子になっています。」なのだとか……へえー、そうなんだー。
 そして個人的に一番驚いたのは、「奈良の大仏は金メッキされている」という話。もっとも大昔の技術なので、「電気メッキ」ではもちろんなく「アマルガム法」という方法だそうです。これは、金を水銀などに溶かしてアマルガムにし、それを仏像に塗った後で加熱すると、沸点の低い(357℃)水銀だけが蒸発して除かれ、仏像には金だけが残るという金メッキ法だそうです。
「記録によると、このメッキで使われた金は9トン(2016年現在で410億円相当)、水銀50トンだったと言います。金は無害だからいいとして、(中略)水銀は有害な金属であり、これが気体となって奈良盆地に立ちこめたわけで、雨が降ったら当然、水に溶けて地下水に混じります。このため奈良の都は、かなり深刻な水銀公害に悩まされたことでしょう。事実、中国の長安を模した大都市、平城京が80年ほどしか続かなかった理由の一つに、この水銀公害を挙げる見方もあります。」
 ……そうだったんですか! 奈良の大仏が金色をしているのは、金箔を貼られているのだと勘違いしていました。でも……もしかしたら、「金箔」という技術そのものが、「アマルガム法」による公害を起こさずに、対象物の周囲を金で覆うために考えられたのかもしれない、とも考えさせられました。そして、この水銀公害は、川から海に流れ出して、その後も、農作物や魚による被害をたくさん出してしまったのだろうな……と想像すると、「神ならぬ人の手による巨大な大仏」には、もしかしたら「功」だけでなく「罪」の側面もあったのかもしれません。
 さらによく考えると……、これこそがまさに「化学」の力ではないか、とも思わされました。水銀の毒性が科学的に確かめられたからこそ、「アマルガム法」で金メッキするときには、水銀の処理を正しく行わなければならないことが分かってくるわけで、このように「原因」がきちんと分かることで、「正しい対処の仕方」や「予防方法」にも結びつくのだと思います。「化学」って、とても大事ですね☆
 この他にも、薬師観音が持っている小枝は柳で、その薬効が、後の化学研究によってアセチルサリチル酸(商品名アスピリン)になったとか、興味深い話が満載でした☆
「化学」を「教科書勉強」と思っていた方にとっては、「化学って、こんなに身近にあふれていたんだ!」という驚きがあると思います。お子さんがいる方は、ぜひお子さんと一緒に読んでください。きっとお子さんは、化学(科学)への興味をかきたてられることでしょう。
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 斎藤さんの他の本、『汚れの科学 汚れはどのように発生し、どのように消えるのか』、『SUPERサイエンス 分子集合体の科学』、『図解 身近にあふれる「化学」が3時間でわかる本』、『「環境の科学」が一冊でまるごとわかる』に関する記事もごらんください。
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 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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