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第1部 本
天文・宇宙・時空
火星の科学(藤井旭、他)
『火星の科学 ‐Guide to Mars-: 水、生命、そして人類移住計画 赤い惑星を最新研究で読み解く』2018/7/13
藤井 旭 (著), 荒舩 良孝 (著)
(感想)
火星について、神話、観測の歴史、火星探査機で調査されたこと、火星の観測の仕方などを総合的に教えてくれる本です。写真やイラストも豊富で、これ一冊読むだけで、火星についてかなり詳しい知識を得られると思います。内容は次の通りです。
第1章 火星という惑星
第2章 火星の物語
第3章 火星を見つめた人々
第4章 火星探査
第5章 火星の接近を見よう
第6章 火星面を見よう
「火星はなにもかも地球によく似た惑星で、24時間少々で自転する様子さえそっくりです。このため、時間とともに移り変わる火星面の姿を楽しむことができます。」
この本では、火星と地球をいろんな面で比較してくれるので、遠いはずの星の火星がなんだか身近に感じられました。火星の自転周期は24時間37分で、自転軸の傾きが25.2°だそうですが、地球の自転周期24時間、自転軸の傾き23.5°とあまりにも似ているのでビックリ☆ 平均気温はマイナス63°で、大気の組成は95%が二酸化炭素のようです。
「第2章 火星の物語」では、火星にまつわる神話、「第3章 火星を見つめた人々」では、ティコ・ブラーエ、ケプラー、ガリレオ、ホイヘンスなど、火星観測の歴史が紹介されます。
個人的に最も興味深かったのは、「第4章 火星探査」。主にアメリカの火星探査機での観測結果や写真が多数掲載されていて、火星の現実の姿を知ることが出来ました。以下に、その一部を紹介します。
「火星に巨大な火山がたくさんつくられたのは地殻構造に原因があると考えられています。地球では、表面を覆っているプレートがマントル対流などの影響を受けて動くプレートテクトニクスが発生しています。そのため、プレートの表面に火山がつくられても、プレートが移動することで、それまでつくられていた火山の場所がずれます。そして、もともと火山があった場所には新しい火山がつくられることになるのです。それに対して火星の場合は、プレートテクトニクスが起きていないので、同じ場所で噴火が続いた結果、巨大な火山が形成されたと考えられています。」
「火星には地球の1%ほどと、少ないながらも大気が存在します。少量でも大気が存在することによって、火星にも気象が生まれます。」
「火星の表面には、とても小さなチリや砂がたくさんあります。そのような微粒子が風に飛ばされることで、砂丘地帯をつくったり、岩などを侵食したりして、火星独特の地形をつくっています。また火星では頻繁にチリや砂が撒き上げられるダストストーム(砂嵐)が発生します。」
「火星では、たびたびメタンが観測されています。(中略)火星にはかつてメタン菌のようなものが存在してもおかしくありません。火星の泥火山でメタンが発生していたら、現在もメタン菌が存在する可能性は充分にあるといえるでしょう。」
現在は、火星探査はアメリカが大きくリードしているようですが、日本も2024年の実施に向けて探査計画(MMX)を準備中なのだとか。ただし目標は火星そのものではなく、火星の衛星フォボスとダイモスだそうです。この二つの衛星を調べることで、その起源を明らかにするだけでなく、初期の太陽系でどのように物質が移動したのかの謎を解き明かすヒントを得たいと考えているようです。なんだか、わくわくしてきます。成功するといいですね☆
ところで、火星探査機には、打ち上げのタイミングがあるようです。
「火星は2年2か月ごとに地球と接近します。そのタイミングに合わせて打ち上げないと、火星に行くためのエネルギーと火星軌道に入るためのエネルギーが大きく跳ね上がってしまいます。そのため、探査機を効率よく火星に送ることのできる期間は2年2か月のうち1か月程度しかありません。」……へえー、そうなんですか。
火星について、神話や観測の歴史、観測によって分かってきた実際の姿、今後の探査計画などを総合的に知ることが出来る本でした。写真やイラストも豊富なので、宇宙に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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