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第1部 本
天文・宇宙・時空
月の地形観察ガイド(白尾元理)
『月の地形観察ガイド: クレーター、海、山脈 月の地形を裏側まで解説』2018/8/6
白尾 元理 (著)
(感想)
美しい写真満載の月の地形観察ガイドブック。天文的視点と地学的視点の2つの視点から、月を見て楽しめるように書かれている「月を観察するための事典」です。
前半は「月齢順 観察ガイド」。地球照、上弦から満月、そして下弦、皆既月食までの月齢順の月の写真と見どころの紹介。月の写真には、そこでみられる代表的な海やクレーターの文字表示もあります。
そして後半は「エリア別 観察ガイド」。コペルニクス、南部の高地など月のエリア別の観察ガイドです。ここでは「地形の新旧を調べる」など、月を地学的視点からも解説してくれています。地球からは遠くて、めったに行けない月についても、地形の年代などが、かなり詳しく推定されているのですね!
地形の新旧を調べるためには、「地層の重なり方が決め手」だそうです。またクレーターの周囲の光条でも年代が推定できるそうで、「隕石などの衝突によってクレーターが出来た直後は明るい光条があり、時代がたつと共に淡くなり、ついには消えてしまうのです。」
その他にも、月の地学的視点からの考察には、溶岩の流れ方などを「地球の同様の事象から類推」したり、大きなクレーターの中にある複数の小さいクレーターは、「偶然の衝突で出来た」とは考えにくいので爆発的な火山噴火の産物と推定したりしているようです。
そして、もちろんアメリカのロケット・アポロによる観察やサンプル採取もとても重要で、「クレーター・デカルトの丘陵は、シリカに富んだ火山活動による火砕流堆積や粘り気のある溶岩でできたものだという仮説を確かめるために、1972年4月、アポロ16号はデカルト北側高地へ向かった。」そうです。結果的には、着陸地点付近には角礫岩ばかりで溶岩や火砕流堆積物は見られず、持ち帰ったサンプルでも、火山活動の証拠は見つからなかったようですが……こういう仮説&検証はとても大事ですよね。
巻末には、「月面図」の表と裏(!)そして、月面の標高図の表と裏(!)もありました。ふだん地球からは見ることのできない月の裏側についても、月探査衛星によって撮影された画像をもとに解説してくれています。
さらに随所にある「コラム」もすごく参考になることが多くて、例えば月面の観察には、「双眼鏡」が使えるそうです。現在の双眼鏡は性能がすごく上がっていて、ガリレオの時代の望遠鏡よりも格段によく見えるのだとか。
この本は、とにかく美しい月面写真がいっぱいで、眺めているだけで、気持ちがどんどん浮き立ってきます。実は、「最近10年は、1枚の画像を得るために、動画で撮影した1000枚ほどの画像をパソコンで画像処理することによって、大気の揺れが多少あっても鮮明な画像を得られるイメージスタッキング方が一般化してきた。」そうで、この本にもその技術で鮮明化した画像が使われているのです。(ちなみにこの本は、『月の地形ウオッチングガイド』をもとに、月の裏側についての項目追加、新たな写真掲載およびページのオールカラー化、最新情報を加えた改訂新版だそうです。)
とても素晴らしい『月の地形観察ガイド』でした。お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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