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第1部 本

天文・宇宙・時空

宇宙が始まる前には何があったのか?(クラウス)

『宇宙が始まる前には何があったのか?』2017/1/6
ローレンス クラウス (著), Lawrence Krauss (原著), 青木 薫 (翻訳)


(感想)
「私たちのいる宇宙はビッグバンで誕生した。では、宇宙は「無」から生まれたのか?」という大いなる謎を、宇宙物理学者のクラウスさんが、最先端の研究成果をもとに考察している本です。
「私たちの宇宙はビッグバンで誕生した」ことは、すでに定説になっていますが、その前には何があったのか? についてはいまだに分かっていません。また「私たちの宇宙は膨張し続けている」ことも同じように定説ですが、その後どうなるのか? も分かっていません。……まあ、そもそも宇宙が本当に「ビッグバンで誕生した」かどうかも分からないんだし、私が生きているうちに、これに決着がつくなんてことはないんだろうと思ってはいるのですが、『宇宙が始まる前には何があったのか?』は、「最先端の研究成果をもとに」考察していて、2012年に見つかった「話題のヒッグス粒子」にも言及しているということなので、興味を抱いて読んでみました。
 ちなみにヒッグス粒子とは、「素粒子物理学の理論的予測と、実験による観測から得られた知識を踏まえて、五十年ほど前に存在が提案された粒子」で、「この発見により、われわれが探ることのできる宇宙は、そのほとんどが水面下に隠れている氷山の一角のようなものであるという説や、一見すると空っぽに見える空間が、われわれが存在するための種を含んでいるという説に、さらなる根拠が与えられたのである。」なのだとか!
 ところで、私たちが見上げる夜空に「星が静かに輝いている」情況は、「重力」から考えると妙なことになるようです。「第一章 いかに始まったのか?」には次のような記述がありました。
「アインシュタインの理論でも、従来のニュートン理論と同様、重力はすべての物体同士のあいだで、つねに引力として作用する。そのため、空間に散らばっている質量は、いつまでもその場に静止していることはできない。質量同士が重力で引っ張り合うために、いずれはすべての質量が一か所に寄り集まってしまうのだ。そんな宇宙は、星たちがじっと静止しているように見える現実の宇宙とは、一見して矛盾していた。」
 え? ……うーん、確かによく考えると、そうかも……いや、だったら大変じゃないか?
 でも、「宇宙が膨張している」なら、この問題は解消されるそうです。現在までに、次のようなことが分かってきているのだとか。
「宇宙は静止しているのではなく、膨張している。その膨張は、およそ137億2千万年前に起こった高温高密度のビッグバンで始まった」
「星たちと地球とは、ほぼ同じ物質でできている。」
「遠くの銀河ほど、大きな速度で遠ざかっている(ハッブルの法則)」などなど。
 そして、私たちの宇宙は、「物質としてのエネルギーが30パーセント、空っぽの空間に含まれるエネルギーが70パーセントの平坦な宇宙」と考えられる、ということが語られていきます。
 また、「第九章 量子のゆらぎ」には、次のような記述がありました。
「空っぽの空間は、物質や放射がまったく存在しなくても、ゼロではないエネルギーを持つことができる。そして一般相対性理論の教えるところによれば、エネルギーをもつ空間は指数関数的に膨張する。結果として、ごく初期にはきわめて小さかった領域も、一瞬のうちに、今日の観測可能な宇宙全体を軽々と含むほどの大きさになったのだ。」
 ふーん、そういうことなんですか。こういう「量子」の話になると、なんだか頭の中が「?」でいっぱいになってきます(汗)。
 でも、「宇宙のエネルギーの少なからぬ部分は、空っぽの空間にふくまれている」とか、「宇宙の99パーセントは目に見えない(エネルギーを含んだ空っぽの空間の中に、暗黒物質の海があり、わずか1パーセントの目に見える物質がその中に浮かんでいる)」とか言う話が、だんだん標準的宇宙像になっているのだとしたら……私たちの「科学」にも、まだまだ途方もなく、たくさんの「未知」の部分があるということなのでしょう。科学技術があまりにも急激に進展しているので、もうすっかりオカルトじみた占いや幽霊なんかは、生き残っていける余地がなくなってきているように思っていたのですが、もしかしたらこの「暗黒物質」のなかに紛れることが出来るかも?(笑)
 冗談はともかく、「高密度のビッグバンの時期には、もともと物質と反物質が同じだけ存在していたのだが、ある量子的なプロセスにより、物質の方が反物質よりもわずかに多くなるという小さな非対称性が生じた。そのおかげで「何もないところから、何かが生じる」ことができたというのである。」
 ……なるほど。このようにして「無」あるいは「ゆらぎ」から、宇宙は始まったということなのでしょうか。
 いろんなことが書いてありましたが、正直に言って、私には理解できないこともありました(汗)。まあ、私に理解出来ようと出来まいと、とにかく「宇宙はそこにある」だけのことなんですけどね(笑)。
 それに「第七章 二兆年後には銀河系以外は見えなくなる」によると、現在、私たちが遠い宇宙を観測して、あれこれ考えを巡らすことが出来るのは、奇跡的なことのようで、「宇宙は加速しているのだから、未来になればなるほど、見えるものは減る」、つまり、「これから二兆年ほどで、局部銀河団に含まれる銀河を別にすれば、すべての天体が、文字通り姿を消すことになる」のだそうです。だから遠い宇宙まで観測できる今のうちに、観測して考察すべきなのかもしれません。もっとも二兆年後よりも前に、太陽系自体が終わりを迎えてしまう(数十億年後と言われています)とは思いますが……。
 ……えーと……思いがけず、かなり悲観的な(?)感想になってしまいましたが、「無」から始まって、「無」に終わるかもしれない(?)「宇宙」であっても、生きている間は、少しでもその謎を追っていきたいので、今後も注目していきたいと思います。「宇宙」に興味のある方は、読んでみてください。
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