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第1部 本

天文・宇宙・時空

航空宇宙学への招待(東海大学『航空宇宙学への招待』編集委員会)

『航空宇宙学への招待』2018/2/5
東海大学『航空宇宙学への招待』編集委員会 (編集)


(感想)
 航空宇宙学に関して歴史的な背景から最新のトピックスまで幅広く紹介してくれる本で、内容は次の通りです。
第1部 導入編(天文学の発達―自然を理解する力の醸成、他)
第2部 航空編(飛行の基礎理論、他)
第3部 宇宙編(ロケットによる宇宙輸送の実現、他)
第4部 展望編(人類の未来へ)
   *
 本当に幅広い内容で、「第1部 導入編」は、なんと古代文明の宇宙観から始まります(笑)。メソポタミア文明の時代に、すでに、星占いでおなじみの「黄道12星座」が定められていたんですね……こんなに古い歴史があったとは知りませんでした。
 こんな感じで、「人間と宇宙・空との関わり」が総合的・網羅的に紹介されていきます。対象が「航空宇宙学」なので、もちろん「宇宙」だけでなく、「飛行」に関しても、昆虫や巨大恐竜、果ては植物(種子)の飛行の仕方の紹介から始まるのです。……ここまで総合的でなくても良かったのでは? と思わなくもなかったのですが、何かを学ぶときには、まず、その「初期はどうだったのか?」を知ると、理解が進みやすいとも感じました(たいてい「初期」は分かりやすい単純なものや身近なものから始まるので)。また執筆者がその分野の専門家ばかりなので、詳しい情報が多くて、どれもすごく勉強になりました。
 続いて「第2部 航空編」になると、「飛行の基礎理論」として飛行機のことが詳しく解説されていきます。揚力が発生するために空気の渦が必要なことや翼の形とかが、イラストなどで説明されていて、「航空」の基礎知識が学べます。飛行には「揚力」「推力」「飛行制御」の3要素が必要なんですね。ここでも「飛行機の歴史」として、ライト兄弟のライト・フライヤーの開発の仕方を学ぶことができました。飛行機の原理もちょっぴり理解できたような……やっぱり「初期」を学ぶことは初心者の理解を助けてくれます。
 そしていよいよ「第3部 宇宙編」。ここではロケットの打ち上げやエンジンに関する基礎知識、衛星の構造などの解説を読むことができます。人工衛星は「金色」をしているものがありますが、あれは最外層のフィルムにアルミ蒸着のポリイミドフィルム(金色)が用いられているからだそうで、カッコよさのためではないようです(笑)。ポリイミドフィルムを使うのは、耐熱性・耐放射線性・対紫外線等の理由によるのだとか。衛星外部の熱環境は日照時と日陰時とで大きく異なり、周回運動にともなって大きな変動が発生するので、このような熱制御が必要なんですね。
 その他にも、惑星間を航行する軌道には、1)スパイラル軌道、2)ホーマン遷移軌道(楕円軌道)、3)ダイレクト軌道、4)重力アシスト軌道があることなど、いろいろな解説がありました。この「4)重力アシスト軌道」は、途中で金星などの星の重力を利用して宇宙機の速度を加速する方法で、スイングバイ軌道、フライバイ軌道とも呼ばれているとか……「星の重力」を宇宙船の加速に利用するなんて、SFっぽくてワクワクしてしまいます。
 さて、これまでの惑星探査にはローバーなど地表を走る探査車が利用されてきましたが、今後は航空機による探査も研究されているようです。地球と探査対象惑星との電波往復に時間がかかり過ぎるので、このようなロボット航空機は完全な自律無人機である必要があるとか。だったらドローンを使えばいいんじゃない? と単純に考えてしまいましたが、探査対象惑星は地球と「大気組成」が違うので、そう単純にはいかないようです(汗)。まず推進力(エンジン)は、対象惑星に大気が存在しても酸素がなければ使えません。そして翼断面形状も、対象惑星の大気環境に合わせたものにしなければならないのです。……確かに、そうですね。
 最後の「第4部 展望編(人類の未来へ)」では、「宇宙エレベータ」「スペースコロニー」など、まさにSFのような情報もあって興味津々でした。
「宇宙植物工場」というのもありましたが、「人工知能」の開発が急速に進んでいるので、人間より先に、まず人工知能ロボットに宇宙進出してもらった方がいいのでは? とも感じました。ロボットに惑星探査してもらったり宇宙植物工場を作ってもらったりして、その状況をカメラで確認しつつ、実現化に向けて試行錯誤していけばいいのではないかと思います。
 世界初の人工衛星スプートニク1号が1957年にロシアから打ち上げられて以来、2016年8月末までに、地球の周りには総計41585個もの人工物体が打ち上げられたそうです(うち23606個は地球の大気圏に再突入して燃え尽き、地球を周回している宇宙物体は17819個)。こんなにも宇宙開発は進んでいたんですね……。
「航空宇宙学」の入門書として、とても充実した内容の本でした。3800円+税もする高価な本ですが、総合的な参考書として役に立つと思います。宇宙に興味のある方はぜひ読んでみてください。
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 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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