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第1部 本
生物・進化
遺伝子から解き明かす魚の不思議な世界(神田真司)
『遺伝子から解き明かす魚の不思議な世界』2019/8/10
神田真司 (編集)
(感想)
古代魚からサメやエイ、淡水魚と海水魚、電気魚にいたるまで、多様に進化した魚たちの性の仕組みや子育て戦略、水圏への環境適応や陸上進出のシナリオなど「魚の不思議な世界」を「遺伝子から解き明かして」くれる本です。
「魚はどのように進化して今のような形・仕組みになったのか」など、魚の進化についても最新の研究を通じて分かってきたことを教えてくれます。
例えば、硬骨魚綱の特徴は、硬骨、肺、海より低い浸透圧などですが、これは我々硬骨魚綱のルーツが、実は海ではなく淡水にあることを示唆しているそうです。
「真骨魚綱は海水よりも低い浸透圧の体液をもつ。海水環境でエネルギーを消費しながら、鰓から塩分を常に排出する仕組みを獲得していく積極的な理由は考えがたい。これらのことを考えると、我々の祖先は、何世代もかけて海水からおそらく徐々に汽水に適応していったのだろうと想像できる。その後、ある時淡水に閉じ込められてしまったが、その中でも生きていける進化を遂げていたもののみが生き残った。淡水環境では、周りから体内に常に水が入ってきてしまうため、まず、水を排出する腎臓の仕組みを得た。そして淡水環境は、海と異なり、水は循環しておらず、酸素分圧が低い(溶存酸素量が少ない)。そこで肺を獲得した。」
……なるほど、すごく説得力を感じます。
ところで上の文章で「我々硬骨魚綱」と言っていますが、実は私たち四肢動物は「硬骨魚綱」に含まれるのだとか! 系統分類的には「我々も魚」なのだそうです……そんな自覚はなかった……。
「硬骨魚類は、水中適応への多様性を示しながら進化してきた条鰭類と、水中から陸上への上陸適応を目指して進化してきた肉鰭類に分類することができ、例えば我々ヒトを含めた四肢(手足)をもつ四肢動物は肉鰭類に含まれる」
……魚は、私たち人類に、かなり近い生き物なんですね……。
この本は、「海水と淡水をいったりきたり 浸透圧調節のしくみ」とか、「電気を感じ、電気を出す魚たち」とか、「卵生と卵胎生魚類の多様な繁殖戦略」とか、「卵生と卵胎生魚類の多様な繁殖戦略」とか、不思議な魚の世界を、詳しく教えてくれます。
「第15章 性を変える魚の世界 魚はいかにして性を変えるのか」では、メスだった魚がオスになる仕組みまで紹介してくれます(笑)。ディズニーのアニメ映画『ファインディング・ニモ』で人気者になったクマノミは、なんと性転換する魚なのだとか! 仲がよさそうに見えるクマノミたちには、実は厳しいヒエラルキー社会が存在しているそうで、体長の一番大きな個体がメスに、二番目がオスになり、これらが一夫一妻となって繁殖を行い、それより小さな個体は未成熟のままなのだそうです。ところが何かの原因でメスが死亡してしまうと、オスがメスに性転換し、未成熟の中で一番大きな個体がオスへと成熟するのだとか……あの可愛いクマノミちゃんたちは、すごく不思議な生態をしていたんですね。
この本を読んで、魚の遺伝子研究がどんどん進んでいることを知りました。魚と私たちは同じ「硬骨魚綱」なので、魚の遺伝子研究は、魚の不思議を解き明かすだけでなく、私たちの遺伝子研究にもとても役に立つでしょう。今後も研究の進展を期待したいと思います。
専門的な知識がたくさん詰め込まれていて、全部が理解できたわけではありませんでしたが(汗)、とても読み応えのある本でした。生物学に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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